INTERVIEW

作業療法士インタビュー

信頼関係を大切にしたリハビリテーションで 不安な気持ちを和らげ、笑顔を引き出す

作業療法士 石原 実幸

工業高校の教員補助員、障害者特別支援学校の教員補助員としての勤務を経て、リハビリテーションの専門学校へ。作業療法士の資格を取得。「これからの日本の医療に必要なホスピスで働きたい」という思いで、2019年4月にCUCホスピスに入社神奈川エリアの3施設で神経難病のご入居者さまへのリハビリを担当する。

これからの日本に必要な新しいかたち。ホスピス型住宅で一人ひとりに寄り添うリハビリを

これまでのご経験を教えてください。

高校卒業後、いくつかの職場で派遣社員として働いていました。その中の一つが障害者特別支援学校で教員の補助をする仕事でした。

もともと医療関係の仕事に興味があったのですが、そこで出会った障害のある子どもとふれあったことで、リハビリテーションに関わりたいと思うようになりました。

その子は、小学6年生で筋ジストロフィーという骨格筋の壊死・変性を主病変とする遺伝性筋疾患でした。運動機能障害を主症状として、進行していくと呼吸機能障害なども起こり得る子でしたが、授業を行う中でとくに身体的なケアはされていませんでした。車椅子の乗り降りをサポートしたり、トイレに付き添ったりするうちに、「自分にも何かできないだろうか」と思うようになりました。

それがきっかけで作業療法士の資格を取得できる専門学校に入学し、今に至ります。

なぜCUCホスピスに入社されたのですか?

当時の代表(現 取締役Founder 𠮷田豊美)の話を聞いたことがきっかけです。それまでは、「ホスピス」がどんなところなのかも分からず、漠然と海外のものというイメージを持っていました。 ホスピス型住宅は、病院並の医療ケアが受けられながら、自宅のように自由に過ごせる施設だということ。そして、高齢化が進み、病院のベッドの数も限られる日本にとっては、これからますます必要となる新しい医療・介護のカタチだという話を聞いて、「ここで働いてみたい」と、思ったんです。

笑顔の瞬間を見るのが喜びに。 対話を重ねて信頼関係を築いていく

入社後のお仕事内容を教えてください。

ご入居者さまのなかでも、特に神経難病の方に対するリハビリを行っています。ご入居当初の日常生活自立度によりADL維持を目的とした、筋力維持やバランス能力維持訓練など行い、緩やかな機能低下を目指しています。

また臥床傾向にある難病の方に対するリハビリでは、筋や腱の柔軟性維持や、関節可動域の維持、褥瘡予防などが目的です。

具体的には、動かせなくなってきた筋肉のマッサージをしたり、呼吸筋の柔軟性維持や胸郭の関節拘縮予防として、胸骨や肋骨上部下部を徒手的にアシストして拘縮予防をしたりします。病気の進行とともに呼吸が困難になり気切などされた方に対しても体位ドレナージを行いながら、痰を出すためのスクイージングを行います。

神経難病では徐々に体が動かなくなることが多く、焦燥感や不安を感じる方が少なくありません。時には、そうした不安から身体を動かそうと頑張りすぎてしまう方もいらっしゃいます。

ご入居者さまが感じている不安を少しでも取り除くため、私たちも難病の疾患を理解した上で丁寧な説明を行い、できる限り身体にご負担のかからないようにご入居者さまとご相談しリハビリを行うことで不安感や焦燥感を和らげることを心がけています。

CUCホスピスで働く上でやりがいを感じる時は?

ご入居者さまと信頼関係を築けた時には、やりがいを感じます。疾患が進行して手の力が弱くなり、ナースコールを押せなくなった方がいらっしゃったのですが、クリップなど身の回りの物を使って、なんとか押せるように工夫しました。その時は、自然と笑顔を浮かべられていて、私も嬉しかったです。

はじめの頃は緊張されていた方が、笑顔を見せてくれて、プライベートな話までできるようになった時には、少しは信頼を得られたのではないかと嬉しく思います。

信頼関係を築くために工夫していることは?

やはり対話を通して信頼関係を少しずつ築いていくことが大切だと感じるので、普段から傾聴することを心がけています。筋力の低下で意思疎通が難しくなってきた方に対しても、口の動きから言いたいことを読み取ったり、透明の文字盤を使ってコミュニケーションを取ったりします。

ていねいに声掛けをして「痛くないか」「不安はないか」と、表情の一つひとつから読み取るように努力していると、アイコンタクトで気持ちが伝わることも多いです。

リハビリの時間が、ご入居者さまにとって一息つける時間になっていたらいいなと思っています。

CUCホスピスで働く上で大変な時は?

ベッドから車椅子へ、車椅子からベッドへなど、ご入居者さまが移乗する際の介助を任されることが多いのですが、力も体力も必要なので大変です。

特に身体の大きな膝折れの可能性がある方の場合は、体力的にもハードですし、決して転倒・転落をさせてはならない、というプレッシャーもあります。

また、セラピストは看護師や介護職と比べると人数が少ないので、一人あたりが受け持てるご入居者さまの人数にはどうしても限りがあります。

お一人おひとりに確実に訪問するためには効率的にまわる必要があるのですが、施術以外に事務作業もあるので、時間を上手く使うのが難しく感じる時もあります。

人の役に立つことに喜びを感じる人、 コミュニケーションが好きな人に向いている職場

今後、特に注力したいテーマを教えてください。

限られた時間の中で、疾患も進行も異なるご入居者さま方へそれぞれ合ったリハビリを考え、今まで以上に質の高いリハビリを提供できるような体制を作っていきたいと考えています。

具体的には、福祉用具などの選定をアドバイスできるスペシャリストになり、ご入居者さまの安心やQOL向上のお手伝いや、看護師や介護士の方の身体の負荷を軽くできるような提案を積極的に行えるセラピストになりたいです。そしてそれぞれのセラピストたちの得意分野を作っていけるような環境づくりを行いたいと思っています。

また、スタッフみんなで一緒にスキルを磨く機会も増やしていきたいです。移乗介助の際、身体に負担をかけない重心移動など、私たちセラピストが持っているノウハウや技術を、一緒に働く介護職や看護師と共有するなど、施設全体でサービスレベルを上げていけたらと思います。

どんな人と一緒に働きたいですか?

人への気遣いができる人がいいですね。重い病気を抱えるご入居者さまの気持ちを想像して、どう接すれば不安を和らげていただけるか、心地よい時間を過ごしていただけるか、考えたコミュニケーションは欠かせないと思います。

あとは、人の役に立つことに喜びを感じる人。人に興味があって、対話が好きな人は、きっとこの仕事に向いているんじゃないでしょうか。そんな方とぜひぜひ一緒に働きたいです。

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