「緩和ケアが必要」は「余命わずか」ではありません。平均余命や緩和ケアの目的を解説|ホスピス・介護の基礎知識|ホスピス型住宅 ReHOPE(リホープ)
ホスピスの基礎知識

「緩和ケアが必要」は「余命わずか」ではありません。平均余命や緩和ケアの目的を解説

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この記事の監修者

松村 広子(まつむら ひろこ)

株式会社シーユーシー・ホスピス 看護クラーク多治見 看護管理者

プロフィール

総合病院にて手術室看護師を10年。その後外科外来、外科病棟に勤務し、がん患者様と多く関わる。手術をしても良くならず、苦しい思いをして過ごしている方の多いことにショックを受け、もっと専門的に学びたいと思い認定看護師教育課程へ進む。
その後緩和ケアチーム、緩和ケア看護外来、緩和ケア病棟、地域連携支援センターを経てそれぞれの緩和ケアを学び、在宅でその人らしく最期まで寄り添う看護を提供したいと考え、2023年 シーユーシー・ホスピスに入社。


主治医から緩和ケアをすすめられたら「自分はもう余命が短いのだろうか」と不安になる方も多いかもしれません。しかし、「緩和ケアが必要=余命が短い」のかといえば、必ずしもそうではありません。

緩和ケアとは、がんなど命に関わる重い病気の患者さまと、そのご家族を支える様々なケアを指します。患者さまやご家族が抱える様々な苦痛(体の痛み、心理的・経済的な不安など)に早めに気づき適切な対応をすることで、生活の質をより良くするようサポートします。

この記事では、緩和ケアをすすめられたときの平均余命や、さまざまな方面からアプローチする緩和ケアの内容を詳しく解説します。緩和ケアを受けられる場所についても詳しく紹介しますので、ぜひ参考にしてください。

緩和ケアをすすめられたら、余命わずかなのか

まず前提として、「緩和ケアが必要=余命が短い」のかといえば、必ずしも全てのケースがそうではありません。たとえば、がんを宣告された時点で既に緩和すべき痛みが強く出ている場合もありますし、治療が進むにつれ経済的な不安が生まれることもあります。診断の時点から、緩和ケアが必要であれば受けることが可能です。

近年の緩和ケア・ターミナルケア・ホスピスケアの認識
出典:WHO 「Expect Committee on Cancer PainRelief and Active Supportive Care & WHO,1990」2016

患者さまが遠くない時期に死に至ると医師が判断した場合、緩和ケアの一環としてのターミナルケア・ホスピスケアへと移行する選択肢もあります。ターミナルケアとは、これ以上の治療が困難と医師が判断してから最期を迎えるまで、患者さまの苦痛を取り除き、できるだけ自分らしい生活を送れるようサポートするケアを指します。詳しくは、以下の記事をご覧ください。

参考:ターミナルケア(終末期医療)とは?人生の最期を穏やかに過ごすためのケア

緩和ケアを勧められたときの平均余命

緩和ケアを勧められた段階での余命は、そのときの患者さまの状態によって異なります。主治医の判断によっても異なるため、一概に余命の目安を判断することはできません。

早期から緩和ケアを受けることで余命が伸びるという報告もあります。2010年にアメリカのマサチューセッツ総合病院の研究チームが発表した研究結果によると、早期から緩和ケアを受けた非小細胞肺がん患者ととそうでない患者では、生存期間の中央値が以下のように異なることがわかりました。

緩和ケアによる生存期間の中央値

  • 早期から緩和ケアを受けた患者:11.6ヶ月
  • 一般的な治療を受けた患者:8.9ヶ月

このように、早期から緩和ケアを受けることで、苦痛が和らげられ、生活の質が改善し、結果的に延命につながることもあります。

参考:早期緩和ケア相談所/早期緩和ケアセンター|早期からの緩和ケア外来が目指すもの余命の延長・予後の改善
出典:PubMed|Early palliative care for patients with metastatic non-small-cell lung cancer

緩和ケアを行う目的

緩和ケアの主な目的

緩和ケアを行う主な目的は、以下の3つです。

  • 身体的・精神的な苦痛の緩和
  • 社会的・スピリチュアル的な苦痛の緩和
  • 家族への苦痛の緩和

参考:厚生労働省|緩和ケアとは

重い病気になった時の苦痛は、身体的なものだけでなく、精神的・社会的なものなど非常にさまざまです。そのため緩和ケアは、医師や看護師だけでなく、ソーシャルワーカーや臨床心理士、薬剤師などさまざまな専門家がチームで対応します。

身体的・精神的な苦痛の緩和

病気の患部の痛みだけでなく、たとえばがんの場合、抗がん剤の副作用によるさまざまな苦痛・不快感が発生します。できるだけ生活に悪影響を及ぼさないよう、苦痛の緩和が必要です。

治療中は精神的に辛くなることもあります。不安や抑うつ、悲しい気持ちが強い場合は臨床心理士が対応します。カウンセラーに話を聞いてもらうだけで、心が軽くなることもあるでしょう。

社会的・スピリチュアル的な苦痛(スピリチュアルペイン)の緩和

「社会的な苦痛」とは、病気によって長期療養のため収入が途絶えたり、家事や育児ができないなど、普段どおりの社会生活ができないことへの不安などを指します。

「スピリチュアル的な苦痛」とは、命に関わる病気になってしまったことで、死への強い恐怖を感じたり、思うように身体が動かないため、無力感が強くなってしまうことなどを指します。

経済的な不安や治療中・退院後の社会生活に関してはソーシャルワーカーが、また死生観に関わる不安や悩みなどは心理士やカウンセラーが対応することが多いです。

ご家族の苦痛の緩和

ご家族は、患者さまが重い病気と診断されると少なからずショックを受けるでしょう。「家族は第二の患者」ともいわれ、心のつらさや将来に対する不安などの負担がかかります。緩和ケアでは、ご家族が抱える辛さを和らげるサポートも行います。

緩和ケア病棟やホスピス型住宅には、付き添いをするご家族もリラックスできる個室やラウンジがある場合もあります。「辛いのは患者本人だから」と我慢せず、積極的にケアを利用しましょう。

緩和ケアの具体的な内容

緩和ケアの目的別に詳細をまとめました。

ケア内容 詳細 対応する者
身体的な苦痛の緩和 病気そのものによる苦痛、副作用による苦痛の緩和

外見の変化に対するケアなど

医師

看護師

精神的な苦痛の緩和 病気になってしまったことや、病気の進行に対する不安・ショック、それに伴う不眠や抑うつなどの症状へのケア

 

 

 

臨床心理士
社会的な苦痛の緩和 仕事・休職などに関する経済的な不安、退院後の生活変化への不安、転院・施設入居などのサポート ソーシャルワーカー
スピリチュアル的な苦痛の緩和 人生、生きることそのものへの不安や迷い、将来に対する不安などへのケア 臨床心理士

カウンセラー

家族への苦痛の緩和 患者さま本人への対処方法への迷い、介護の負担、ご家族を亡くした場合のグリーフケア 医師

看護師

その他の医療者

日常生活面でのケア 病気により障害が出た場合や、日常生活に介助が必要な場合のリハビリ提供や介護サポート 看護師

介護士

ケアマネジャー

理学療法士

作業療法士

言語聴覚士

その他の専門ケア 副作用に関する薬の副作用などに関する対応、医師と連携し患者に合った薬の処方 薬剤師
食欲がない場合や、病院食が食べにくい時などのサポート 管理栄養士

緩和ケアを受けるには

緩和ケアは、主に以下のような施設やサービスで受けられます。

  • 病院の緩和ケア病棟に入院する
  • 病院の緩和ケア外来に通院する
  • 自宅で訪問診療・訪問介護を利用する
  • ホスピス型住宅に入居する

病院の緩和ケア病棟に入院する

緩和ケアを受ける一般的な方法として、緩和ケア病棟への入院が挙げられます。緩和ケア病棟では、専門的な緩和ケアチームを配置し、医療や看護だけでなく食事や排泄といった日々の生活の細かなサポートまで行っています。

また、病院の中にキッチンやラウンジなどが併設されており、自宅のような設備をしていることが特徴です。緩和ケア病棟でのケアは、平均して2週間から1ヶ月ほどかけて行われ、身体的・精神的な苦痛を和らげ、退院を目指します。

病院の緩和ケア外来に通院する

通院が可能な方は、病院の緩和ケア専門外来を受診する方法もあります。緩和ケア病棟への入院やホスピス型住宅への入居に比べて費用が抑えられ、かつ自宅で生活できるため、経済的にも精神的にも負担が少ないといえます。

ただし、すべての病院に緩和ケア外来があるわけではないため、近隣の病院を確認してください。

自宅で訪問診療・訪問看護を利用する

自宅の近くに24時間対応の診療所や訪問看護センターがある方は、訪問診療・看護によって緩和ケアが受けられます。場所を移す必要がないため、患者さまに負担がかかりにくいことがメリットです。

ただし、日々の介護は家族が行うため、患者さまのご家族には負担がかかることも考えられます。

ホスピス型住宅に入居する

ホスピス型住宅とは、ホスピスケア(緩和ケア)を受けられる施設のことです。自宅のような環境で看護師や介護職が常駐しており、訪問看護や訪問介護、リハビリを受けることができます。また個室に入居できる施設も多く、自宅に似た環境でリラックスして過ごすことができます。

ホスピス型住宅には、緩和ケア病棟のような利用期間の目安はなく、滞在期間は人それぞれです。緩和ケアを受けながら、ホスピスで最期を迎えることも可能です。

まとめ

「緩和ケアが必要=余命が短い」というわけではありません。緩和ケアは、命に関わる重い病気の患者さまやご家族が抱える様々な苦痛に適切に対応し、生活の質をより良くするようサポートする医療的ケアです。

緩和ケアは医師や看護師だけでなく、ソーシャルワーカー、管理栄養士や臨床心理士、薬剤師などさまざまな専門家がチームで対応します。

緩和ケアを受けられる場所は、緩和ケア病棟やホスピス型住宅、在宅で訪問診療・看護の利用などさまざまです。患者さまに合った方法を選択してください。

よくある質問

緩和ケアが必要と言われたら余命は短いですか?

「緩和ケアが必要=余命が短い」ではありません。緩和ケアが必要となる症状やタイミングは主治医の判断や患者さまの状態によって異なります。詳しくは記事内「緩和ケアをすすめられたら、余命わずかなのか」をご覧ください。

緩和ケアを受けたら余命は延びますか?

2010年にアメリカのPubMedが発表した研究結果によると、早期から緩和ケアを受けた非小細胞肺がん患者は、一般的な治療を受けた患者と比較して、生存期間の中央値が約2.7ヶ月ほど高かったことがわかりました。詳しくは記事内「緩和ケアを勧められたときの平均余命」をご覧ください。

緩和ケア病棟に入院する期間は平均どのくらいですか?

緩和ケア病棟に入院した場合、2週間から1ヶ月程度が平均的な入院期間となっています。ただし、病院の病床の空き状況や患者さまの状態などによって、入院期間は異なります。詳しくは記事内「緩和ケアの具体的な内容」をご覧ください。

ReHOPEでは緩和ケアに関するご相談をいつでも受け付けています

ReHOPEとは、全国各地に展開しているホスピス型住宅です。施設には訪問介護・看護事業所が併設されているため、24時間365日の手厚いケアを受けることができます。緩和ケアの認定看護師による専門知識やスキルを高めるスタッフ教育も実施し、充実のケア体制のもと個室で自由度の高い生活を送ることができます。

緩和ケアに関心があり、ご入居を検討されている方には見学案内も行っていますので、お気軽にお問い合わせください。

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