ホスピス型住宅のReHOPE | ホスピス・介護の基礎知識 | 病気を知る | プリオン病とは?症状から必要なケア・利用可能な介護サービスまで徹底解説
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この記事の監修者
吉橋 浩(よしはし ひろ)
株式会社シーユーシー・ホスピス|第2運営部 首都圏第一 ケアディレクター
プロフィール
株式会社シーユーシー・ホスピス ReHOPE 西上尾 看護管理者
独立行政法人 国立病院機構 東埼玉病院で10年間勤務。埼玉県の難病拠点病院として、筋ジストロフィーをはじめ、ALSやパーキンソン病などの筋・神経系難病の患者に関わり、看護業務や院内の実習指導・教育、マネジメントにも従事。その後、株式会社シーユーシー・ホスピスに入社、現在ReHOPE西上尾の看護管理者として勤務。
一般社団法人難病看護学会認定 難病看護師や居宅介護支援専門員などの資格を取得。
プリオン病は、異常なタンパク質(プリオン)が脳に蓄積し、神経細胞を破壊することで急速に進行する神経変性疾患です。特にクロイツフェルト・ヤコブ病(CJD)はその代表例として知られ、認知症のような症状から運動障害、最終的には寝たきりの状態に至ることが特徴です。
家族がこの病気に直面したとき、どのような症状が現れるのか、どのようなサポートが受けられるのか分からず、不安を抱えることも少なくありません。本記事では、プリオン病の症状や進行の特徴、必要なケアや介護サービスについて詳しく解説します。また、公的支援制度についても紹介し、患者さまとご家族が安心して適切なサポートを受けられるよう情報をお届けします。
プリオン病は、脳の中で起こる特殊なタンパク質の変化によって発症する指定難病です。通常は正常な形で存在するプリオンタンパク質が、何らかの理由で形を変えることで始まります。代表的な病気として、クロイツフェルト・ヤコブ病(CJD)があります。この病気では、記憶力や運動機能に影響が現れることがあります。
プリオン病発症の主な要因は、以下のとおりです。
プリオン病発症の主な要因
それぞれの方で症状の現れ方や進み方が異なりますので、担当医とよく相談しながら、その方に合った対応を考えていくことが大切です。
プリオン病の症状は、初期の段階では比較的軽く、進行とともに深刻化していきます。初期には、記憶力や集中力の低下が見られ、ご本人やご家族も「少し物忘れが増えたかもしれない」と感じる程度のことが多いです。
また、性格の変化が現れることもあり、穏やかだった人が怒りっぽくなったり、逆に無気力になったりするケースも報告されています。
病気が進むにつれて、歩行時のバランスを取ることが難しくなり、ゆっくりと慎重に歩くようになります。また、手足に不随意な動きが現れたり、思い通りに体を動かしにくくなったりすることがあります。言葉でのコミュニケーションにも時間がかかるようになることがあります。
進行した段階では、ご本人の自発的な動きが減少し、多くの時間をベッドで過ごすようになります。ご家族との意思疎通も徐々に難しくなっていきます。一般的に、症状が現れてから数か月から数年の間に、病状が進行していきます。
出典:日本医師会「クロイツフェルト・ヤコブ病」
プリオン病は現時点では根治する治療法が確立されておらず、病状の進行を完全に止めることはできません。しかし、適切なケアやリハビリを行うことで、患者の生活の質(QOL)をできるだけ維持し、ご家族の負担を軽減することが可能です。
実施される具体的なケアやリハビリの内容について、以下で詳しく紹介します。
理学療法・作業療法 | 症状の進行を遅らせ、生活の質を維持するために推奨されるリハビリテーション |
日常生活の介助 | 食事、排泄、体位交換など、日常生活全般にわたる介助 |
心理的ケア | プリオン病の診断は患者や家族にとって大きな精神的負担となるため、非常に重要 |
医療・介護サポート | 総合病院の患者支援センター(ソーシャルワーカーへの相談)や自治体の難病相談支援センターでの情報提供や助言 |
介護休業制度 | 介護する家族が仕事をしている場合、介護休業制度を利用して一定期間休業し、介護サービスの手配などができる |
介護保険サービス | 居宅介護・重度訪問介護・短期入所・療養介護・施設入所支援 |
障害福祉サービス | 障害支援区分に応じて介護給付(居宅介護、重度訪問介護など)を受けられる |
まず、理学療法や作業療法を取り入れることで、筋力低下を防ぎ、患者の身体機能を維持することができます。日常生活の介助では、食事や排泄、体位交換などのサポートが必要となりますが、できるだけ患者さまの意思を尊重しながら、可能な範囲で自立した生活を支えます。
また、患者さまやご家族への心理的ケアも行います。専門のカウンセラーやソーシャルワーカーを通して気持ちの整理を促し、少しでも安心して介護を続けられるように協力します。
プリオン病の方が利用できる介護サービスには、以下のようなものがあります。
プリオン病の方が利用できる介護サービス例
これらについて詳しく解説します。
プリオン病の方は、自宅で療養生活を送りながらが受けられる以下の訪問居宅サービスを受けることができます。
訪問看護では、主治医と連携しながら、健康管理や、吸痰の吸引などの医療処置、呼吸器など医療機器の管理を行います。健康面だけでなく、精神面のケアも訪問看護の役割のひとつです。ご本人と社会との関わりやご家族の生活など、みなさまが安心して過ごせるようサポートします。
訪問介護には入浴や排泄、食事のサポートなど直接的な身体介護と、自宅の掃除や洗濯、調理などの日常生活のサポートがあります。
さらに、日常生活のほとんどに介助が必要な重度の肢体不自由(障害支援区分4以上)と認められた場合は、重度訪問介護が利用できます。生活全般の介護だけでなく、意思疎通の支援といった、ご本人の意思決定をできる限り尊重するサポートが行われます。
訪問リハビリテーションは理学療法士や作業療法士、言語聴覚士などの専門家が訪問し、身体の機能回復・維持のためにリハビリを行います。
訪問看護と訪問介護、訪問リハビリについては、こちらの記事で詳しく解説しています。
訪問看護と訪問介護の違いは?両方を使うことはできる?サービス内容を詳しく解説
訪問看護のリハビリはどんな内容?家族ができるサポートとは?
プリオン病の方は、以下のようなサービスを受けることができます。
通所・短期入所型サービスでは、日帰りで入浴や食事の提供、レクリエーションやリハビリを受けることができます。また、ご本人が日常生活の自立を継続するための訓練を受けられる施設もあります。
自宅での生活が難しくなった場合には、入居施設を検討してもよいでしょう。安全な療養環境が整っており、安心して生活できます。
ここではプリオン病の方でも入所できる施設について以下のものを紹介します。
要介護認定を受けた高齢者が長期にわたり医療的ケアを受けながら生活できる施設です。人工呼吸器の使用や気管切開などをしている方など、継続して高度な医療的ケアを必要とする方に適しています。
介護医療院については別記事「老人ホームの種類と特徴比較!費用・介護度別の選び方」で詳しく解説しています。
がんや難病の進行によって治療が困難になった方に、身体の痛みや精神的な不安をやわらげるホスピスケア(緩和ケア)を提供する入所施設です。看護師・介護士が24時間体制で対応できるため、高度な医療的ケアを必要とする方でも受け入れています。
ホスピスについては別記事「ホスピスとは?施設の特徴や病院との違い・対象者や費用について解説」で詳しく解説しています。
上記のサービスは、介護保険制度や障害福祉サービスを利用して受けられます。
一方、障害福祉サービスでは、障害支援区分認定を受けることで、介護給付や訓練等給付を活用可能です。なお、介護保険と障害福祉サービスには重複する支援もありますが、基本的には介護保険の適用が優先されます。
プリオン病は進行が速く、症状の表れ方もさまざまです。複数のサービスを組み合わせることで、より充実したケアを受けられます。
各介護サービスは、介護保険や障害福祉サービスを活用して利用することができます。申請方法や利用条件については、市区町村の介護保険窓口や相談支援センターに問い合わせてみてください。
プリオン病の方が利用できる公的支援制度は、以下の6つがあります。
プリオン病の方が利用できる公的支援制度
要介護認定とは、対象者がどの程度の介護を必要とするかを7段階の数値で表したものです。65歳以上の方、または40歳から64歳までで特定疾病により介護が必要と認められた場合に介護保険サービスを利用するための認定を受けられます。
プリオン病は国が定める特定疾患の初老期の認知症に含まれるため、40歳から60歳までの2号被保険者でも介護認定を受けることができます。。
認定を受けた介護度に応じて、受けられるサービスや利用サービスにおける自己負担額などが異なります。
出典:厚生労働省「要介護認定」
指定医から、身体の機能に障害があると診断された場合に、申請することで交付される手帳です。身体障害者手帳を取得すると、税金の控除・公共交通機関の割引・障害者雇用枠での就労支援といった支援が受けられます。
プリオン病の方は、症状に応じて手帳の等級を変更することができます。申請やお問い合わせ窓口は、市区町村の障害福祉課です。
障がい者医療費助成は、各自治体が実施する制度です。病院の診察・薬代・入院費などの自己負担分に対し、助成が受けられます。
基本的には身体障害者手帳をお持ちの方が対象で、自治体へ申請する必要があります。
自治体により助成の範囲や対象が異なるため、詳しくはお住まいの市区町村窓口へお問い合わせください。
プリオン病は特定疾患治療研究事業の対象疾患に含まれており、医療費助成の対象となる可能性があります。
特定疾患治療研究事業は、対象の難病に対して病気の研究や新規の治療法の開発研究を推進するために行われている国の事業です。
申請し審査が通ると医療費が公費負担となるため、治療における経済的負担が大きく緩和されるでしょう。
参考:難病情報センター「2015年から始まった新たな難病対策」
参考:厚生労働省「特定疾患治療研究事業実施要綱」
生活保護制度は、経済的に生活が困難な方への支援制度です。プリオン病の方も、生活が困難な経済状況の場合、審査を経て支援が必要と判断されると、生活保護制度の対象となります。
生活保護を受けると生活保護費の受給が可能な上、治療のための病院受診における自己負担額が0円になります。
ただし生活保護制度の利用を申請する際に、他に利用できる支援制度があれば他の制度の利用が推奨される場合があるため、まずは他に利用できる制度はないか該当の自治体へ相談してみると良いでしょう。
出典:厚生労働省「生活保護制度」
1カ月の医療費が自己負担限度額を超えた場合、超過分が後から払い戻される制度です。上限額は年齢や所得により定められています。また、事前に健康保険組合に申請し取得した限度額認定証、または健康保険証の利用登録を行っているマイナンバーカードを窓口で提示することで、支払いを抑えることが可能です。
詳しくはご自身が加入する健康保険組合に確認してください。
自立支援医療制度は、医療費の自己負担額を減額する制度です。
プリオン病は障害者総合支援法の対象の疾患に含まれており、障害者総合支援法に定められた自立支援医療制度を利用できる可能性があります。
自立支援医療制度の対象者は、精神通院医療、更生医療、育成医療の3種類いずれかを利用している方です。この中の更生医療は、身体障害者手帳を交付された方で治療の効果が期待できる18歳以上の方を指しています。重症筋無力症の方は更生医療の枠で、自立支援医療制度を受けられる可能性があるでしょう。
ただし、自立支援医療制度の利用には、身体障害者手帳の交付を受ける必要があります。
身体障害者手帳が交付されると所得控除や割引が受けられるほか、障害年金の受給にも役立つため(手帳と別途申請が必要)症状の程度によって、まずは手帳の申請から検討すると良いでしょう。
出典:厚生労働省「自立支援医療制度」
上記の制度は、プリオン病の患者さまや家族が経済的な不安を抱えず、安心して療養生活を送るための支えとなります。適切な活用で医療費や介護サービスにかかる経済的負担を軽減し、より安定した生活を維持することが可能です。
制度を利用するにはそれぞれ申請が必要となるため、お住まいの自治体の窓口や医療機関に相談し、具体的な手続きを確認するとよいでしょう。
当社が運営するReHOPEは、がん末期や難病を抱える方々を対象にしたホスピス型住宅です。医療・介護の専門スタッフが、24時間365日体制で安心できるケアを提供し、ご入居者さまが自分らしい生活を送れるようサポートしています。
ReHOPEでは、全国でホスピス型住宅を運営しており、プリオン病の方の入居も可能です。常駐スタッフが日常生活のサポートから医療サービス医療ケアまで、一人ひとりに寄り添ったケアを行います。また、地域の医療機関や多職種と連携し、心身のケアを総合的に提供しているのもReHOPEの特徴です。
全国の施設で見学受付中です。見学のお申し込みやお問い合わせなど、お気軽にご相談ください。
ReHOPEでは、一緒に働く仲間を募集しています。
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プリオン病は、異常プリオンタンパク質が原因で脳機能が急激に損なわれる進行性の病気です。初期の記憶障害や性格変化から重度の運動障害、寝たきり状態へ進行する場合が多く、家族を含む包括的なサポートが不可欠となります。
本記事では、リハビリや日常介助を含むケア方法、訪問介護やホスピスといったサービス、公的助成制度まで幅広く紹介したので。ぜひご参考にしていただければ幸いです。
プリオン病の原因は、異常なタンパク質(プリオン)です。正常なプリオンタンパク質が異常な形に変化し、脳内で凝集・沈着して脳機能を阻害します。
詳しくは記事内「プリオン病とは」をご覧ください。
プリオン病の初期症状には、記憶力や集中力の低下、性格の変化が挙げられます。病状が進行すると、運動障害や認知症、筋痙攣を発症します。
詳しくは記事内「プリオン病の症状」をご覧ください。
プリオン病にかかると、発症数ヶ月から数年で死に至るとされています。症状の進行を遅らせ、生活の質を維持するためのケアとリハビリテーションを受けることが大切です。
詳しくは記事内「プリオン病の症状」「プリオン病で必要となるケアとリハビリテーション」をご覧ください。