ホスピス型住宅のReHOPE | ホスピス・介護の基礎知識 | 病気を知る | 慢性炎症性脱髄性多発神経炎(CIDP)の方に必要なケアと利用できる介護サービス、支援制度
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この記事の監修者
吉橋 浩(よしはし ひろ)
株式会社シーユーシー・ホスピス|第2運営部 首都圏第一 ケアディレクター
プロフィール
株式会社シーユーシー・ホスピス ReHOPE 西上尾 看護管理者
独立行政法人 国立病院機構 東埼玉病院で10年間勤務。埼玉県の難病拠点病院として、筋ジストロフィーをはじめ、ALSやパーキンソン病などの筋・神経系難病の患者に関わり、看護業務や院内の実習指導・教育、マネジメントにも従事。その後、株式会社シーユーシー・ホスピスに入社、現在ReHOPE西上尾の看護管理者として勤務。
一般社団法人難病看護学会認定 難病看護師や居宅介護支援専門員などの資格を取得。
慢性炎症性脱髄性多発神経炎(Chronic Inflammatory Demyelinating Polyneuropathy: CIDP)とは、自己免疫の異常によって末梢神経の損傷が起こる慢性疾患のことです。神経からの信号伝達に異常が発生してしまう疾患で、手足のしびれや筋力低下などの症状が現れます。
この記事では、慢性炎症性脱髄性多発神経炎が起こる原因や発生する症状、治療法などのほか、患者さまが受けられる医療・介護サービスや公的支援制度についても紹介していきます。
慢性炎症性脱髄性多発神経炎とは、末梢神経の神経線維を覆っている髄鞘(ミエリン)に対して自分の免疫機構が攻撃をしてしまう慢性疾患で、炎症によって髄鞘が脱落し、筋力低下や痺れ、感覚障害を引き起こします。医療費助成の対象となる指定難病のひとつです。英語では「Chronic Inflammatory Demyelinating Polyneuropathy」と表現されるため、CIDPと呼ばれることもあります。
慢性炎症性脱髄性多発神経炎は「慢性」という言葉の通り、2カ月以上の長期にわたり病状が進んでいくのが特徴で、「脱髄」という神経の情報が筋肉に伝わりにくくなる症状が発生し、筋力低下や感覚障害が引き起こされます。生命を脅かすような影響をもたらす可能性は低く、適切な治療やリハビリを行うことで自立した生活を送ることが可能です。
なお、現在では慢性炎症性脱髄性多発神経炎を発症する原因は明確にはわかっていません。自己の末梢神経、特に髄鞘を標的に攻撃してしまう免疫異常であると推定されていますが、メカニズムの詳細ははっきりしていません。発症する年齢は小児から老人まで幅広く、遺伝性については明らかになっていませんが、やや男性に多い傾向にあるようです。
出典:日本神経学会|慢性炎症性脱髄性多発根ニューロパチー、多巣性運動ニューロパチー診療ガイドライン
慢性炎症性脱髄性多発神経炎の症状について、初期症状と進行後の症状を見ていきましょう。
初期症状として現れるのは、主に以下のとおりです。
慢性炎症性脱髄性多発神経炎の主な初期症状
まずは上肢(肩口から手先)から症状が出ることが多く、次第に下肢(股関節から足先)に至ると言われています。このような症状が発生することで、歩行時にふらつきやすくなったり、日常の動作が不安定になったりするでしょう。
また、進行後に現れる主な症状は、以下のとおりです。
慢性炎症性脱髄性多発神経炎の進行後に現れる主な症状
慢性炎症性脱髄性多発神経炎の症状は左右非対称に進行するのが特徴で、時間経過につれて重症化していきます。しかし、早期に症状を発見して適切なケアやリハビリを行うことで、症状の改善が可能です。
慢性炎症性脱髄性多発神経炎の治療は、主に免疫グロブリン療法やステロイド療法、血漿交換などによって行われるのが一般的です。ほとんどの場合は、これらの治療によって症状は改善されます。なお、各治療法の目的や期待できる効果は以下のとおりです。
また、治療に加えて、筋力維持や動作改善のための継続的なリハビリテーションを行うと効果的です。リハビリテーションでは、筋力維持のための運動療法や、日常生活をスムーズに行うための機能訓練などを行います。
さらに、日常生活を支える環境整備や、適切な栄養管理を継続的に行うことも必要です。
慢性炎症性脱髄性多発神経炎は時間の経過とともに進行する進行性の病気であり、スムーズな生活を送るための介護サービスが受けられます。利用できる介護サービスとしてあげられるのは、主に以下の3つです。
慢性炎症性脱髄性多発神経炎の方が利用できる医療・介護サービス
慢性炎症性脱髄性多発神経炎の方は、自宅で療養生活を送りながら以下の訪問居宅サービスを受けられます。
訪問看護とは、訪問看護師が患者さまのご自宅に伺い、主治医の指示に基づいた健康管理や医療処置、医療機器の管理を行うサービスです。患者さまの病気の悪化を防ぎ、回復のサポートをするのが特徴です。
訪問介護とは、訪問介護員が自宅に来訪し、専門的な介護が受けられるサービスのことです。訪問介護で受けられるサービス内容としては、食事・排泄・入浴などの身体介護、掃除・洗濯などの生活援助、通院時の車の乗降や病院内での移動のサポートなどがあげられます。
さらに、日常生活のほとんどに介助が必要な重度の肢体不自由(障害支援区分4以上)と認められた場合は、重度訪問介護が利用できます。生活全般の介護だけでなく、意思疎通の支援といった、ご本人の意思決定をできる限り尊重するサポートが行われます。
訪問リハビリテーションは理学療法士や作業療法士、言語聴覚士などの専門家が訪問し、身体の機能回復・維持のためにリハビリを行います。
訪問介護と訪問リハビリテーションについては以下の記事でも詳しく解説しています。
訪問介護のサービス内容は?ホスピス型住宅との違いや入居を検討するタイミングについても解説
訪問看護のリハビリはどんな内容?家族ができるサポートとは?
慢性炎症性脱髄性多発神経炎の方は、以下のようなサービスを受けることができます。
通所・短期入所型サービスでは、日帰りで入浴や食事の提供、レクリエーションやリハビリを受けることができます。また、ご本人が日常生活の自立を継続するための訓練を受けられる施設もあります。
自宅での生活が難しくなった場合には、入居施設を検討してもよいでしょう。安全な療養環境が整っており、安心して生活できます。
ここでは、慢性炎症性脱髄性多発神経炎のような難病の方でも入居できるホスピス型住宅について紹介します。
ホスピス型住宅とは、がんの末期や進行性の神経難病の症状に対するケアを提供し、生活の質向上を図る施設を指します。24時間365日の医療、看護体制が整っており、医療依存度の高い方でも安心した生活を送ることが可能です。
ホスピス型住宅で提供されるサービスとしては、痛みのコントロールなどの身体的ケアや日常生活の介護、臨床心理士など専門家によるカウンセリング・家族による面会機会の整備などの精神的ケア、社会生活上必要な手続きの支援や適切な公的制度の紹介・情報提供 などの社会的ケアなどがあげられます。
ホスピス型住宅について詳しく知りたい方は別記事「ホスピスとは?施設の特徴や病院との違い・対象者や費用について解説」をご覧ください。
福祉用具貸与とは、要支援や要介護認定を受けた方が、できる限り自宅で自立した生活を送れるよう、必要な福祉用具を介護保険で支援するサービスです。福祉用具の貸与にかかる1割(一定所得者の場合は2割または3割)を利用者が負担します。
介護保険で貸与可能な福祉用具は以下の13品目で、要介護度に応じて異なります。
出典:厚生労働省介護サービス情報公開システム どんなサービスがあるの? – 福祉用具貸与
慢性炎症性脱髄性多発神経炎を抱える方は、さまざまな公的支援制度の活用が可能です。主な制度として挙げられるのは以下の6つです。
慢性炎症性脱髄性多発神経炎の方が利用できる主な公的支援制度
要介護認定とは、対象者がどの程度の介護を必要とするかを7段階の数値で表したものです。認定を受けた介護度に応じて、受けられるサービスや利用サービスにおける自己負担額などが異なります。
身体障害者手帳は、身体の機能に一定以上の障害があると認められた方に交付されるものです。交付を受けると、障害者総合支援法の対象となり、公共交通機関の割引や障害福祉サービスの利用が可能になります。
医師による診断書等を市区町村に持参することで、身体障害者手帳の交付申請が行えます。
高額療養費制度とは、医療費負担の軽減を図る制度です。この制度を活用することで、月額の医療費が一定の自己負担限度額を超えた場合、超過分の払い戻しが受けられます。
特定疾患に関する医療の確立や普及、患者の医療費の負担軽減を目的とした事業で、認定されると保険診療の対象となる医療処置が公費負担になります。国が指定した難病を抱える方が対象で、慢性炎症性脱髄性多発神経炎も対象です。
生活保護とは、経済的に困難がある方への支援策です。慢性炎症性脱髄性多発神経症により仕事ができなくなり、収入が得られなくなってしまった場合には、市区町村に申請することで生活保護費の給付が受けられます。
自立支援医療制度とは、病気などによる心身の障害を除去・軽減するための医療を受ける際、医療費の一部負担の軽減が受けられる制度です。医療費が原則として1割負担となり、本人または属する世帯の収入等に応じて、自己負担の上限額も設けられます。
寝たきりの状態から、自宅復帰へ。スタッフと共に叶えた念願
慢性炎症性多発神経炎と長年闘っていたこともあり、入居当初は寝たきりで憔悴しきっていたAさま。手足はご自身の意思に反して震えが止まらなく、「どうしてこうなってしまったのか」という葛藤を抱えておられました。日々の関わりのなかで、Aさまの「リハビリをして自宅に帰りたい」という想いを知り、自宅復帰を目標にさまざまな訓練を行うことに。嚥下(ものを飲み込む機能)・発声・排泄・歩行の訓練や練習を、看護師と介護職員が連携して行った結果、歩行器を使用して歩けるようになり、無事に自宅への帰宅を叶えました。
ReHOPEは、医療依存度が高く専門的な医療ケアや看護を必要としている方のためのホスピス型住宅です。慢性炎症性脱髄性多発神経炎を抱える方の受け入れも行っており、ReHOPEで充実した生活を過ごしています。
また、ReHOPEは全国各地に施設を展開していることが特徴で、ご自宅から近くの施設を選ぶことが可能です。いつでも受け入れ体制を整えており、入居見学も受け付けているため、ぜひお気軽にお問い合わせください。
ReHOPEでは、一緒に働きたい方も募集しています。
以上のようにお考えの方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。オンライン説明会も週に2回開催しておりますので、ご参加くださいませ。
症状としては似ていますが、大きな違いはギランバレー症候群は、急性的でほとんどが治療で完治し、再発がないこと、多巣性運動ニューロパチーは感覚の障害が出にくいことです。
慢性炎症性脱髄性多発神経炎の明確な原因は不明ですが、自己免疫の異常が関与していると考えられています。なお、発症しやすい年齢や性別は幅広く、病気が遺伝したという報告は現状ありません。詳しくは記事内「慢性炎症性脱髄性多発神経炎とは」をご覧ください。
慢性炎症性脱髄性多発神経炎は、直接命に関わるケースは少ないです。適切な治療やリハビリテーションを行うことで、長期間にわたって自立した生活を続けられます。ただし、重症化すると日常生活に大きな影響を与え、いずれは寝たきりになる可能性もあります。
慢性炎症性脱髄性多発神経炎には、免疫グロブリン療法やステロイド療法、血漿交換療法などの治療が行われます。また、治療に加えて機能訓練などのリハビリテーションをあわせて行うことで、症状の進行を抑えられます。詳しくは記事内「慢性炎症性脱髄性多発神経炎で必要となるケア、リハビリテーション」をご覧ください。