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胃ろうとは?腸ろうとの違いは?自宅で行うポイントやメリット・デメリットも解説

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胃ろうとは?腸ろうとの違いは?自宅で行うポイントやメリット・デメリットも解説

この記事の監修者

西川彩花

西川 彩花(にしかわ あやか)

プロフィール

2012年から国立系病院や大学病院で9年勤務。主に消化器外科をメインでGHCU等の重症病棟、ストーマ外来も経験。2021年、株式会社シーユーシーホスピスに入社後、ReHOPE西船橋の勤務を経て事業所支援チームに所属し複数拠点で勤務後、看護管理者を経験。現在はケア技術向上推進チームに所属。

年齢を重ねていくにつれて、食べ物をうまく飲み込めなくなったり病気により食事が摂れなくなったりすることがあります。このような場合、食事が進まず栄養不足になり健康状態が悪化、誤嚥のリスクが高まるなどの問題が生じます。

こうした状況では、「胃ろう(胃瘻)」という医療処置が検討されます。しかし、「胃ろうって何?」「胃ろうはどのように使用するの?」と、悩みを抱えている方は多いでしょう。

そこでこの記事では、胃ろうのメリットやデメリット、自宅で胃ろうを管理するときのポイントなどについてわかりやすく解説します。

胃ろう(胃瘻)とは

胃ろう

経鼻経管栄養

胃ろうとは、内視鏡を使用した小手術によって、腹部にろう孔という胃に貫通する小さな穴を開けてカテーテル(管)を通し、直接胃に栄養を注入する経管栄養法のことです。経管栄養法には、ほかにも「経鼻胃管栄養」や「腸ろう」といった種類があります。

胃ろうは、何らかの要因で経口摂取(口からの飲食)が困難となった人や誤嚥性肺炎(ごえんせいはいえん)のリスクがある方が受ける医療処置のひとつです。点滴ではなく消化管を使用し、できるだけ普段の食事に近い形で栄養を摂取できるように胃ろうの手段が選ばれます。

なお、ご本人の状態や医師の判断にもよりますが、一般的に胃ろうの手術は15分〜30分ほどで終了し、1週間〜2週間ほどで退院できます。数日後には、シャワーを浴びることも可能です。

胃ろうが必要な方

胃ろうが必要なのは、主に以下に当てはまり、経口摂取が難しい方です。

  • 認知機能の低下などにより摂食機能に障害のある方
  • 口から食事をするとむせてしまい、誤嚥性肺炎につながる恐れがあるなど嚥下(えんげ)機能に障害のある方
  • 口や喉の手術を行い、口から食事を摂れない方
  • 喉~胃までの消化管に、何らかの通過障害の要因がある方

胃ろう造設ができない方

一方で、以下に当てはまる方は胃ろうの造設(胃ろうをつくること)は行えません。

  • 胃と腹壁(内臓を囲む皮膚や筋肉)の間に大腸や肝臓など他の臓器があり、構造的にろう孔を開けられない方
  • 手術後によって胃がなくなった方
  • 薬剤や疾患などにより元々出血傾向にあり、手術による出血リスクが高い方
  • 内視鏡を飲みこんだり通過させることができない方 など

このような特徴に当てはまる場合は、鼻からの栄養投与や腸ろう、栄養点滴などの選択肢が検討されます。

腸ろう(腸瘻)との違い

腸ろうとは、内視鏡または外科的手術により、小腸から腹壁にろう孔を開け、そこにカテーテルを通して栄養を補給できるようにする方法です。胃ろうと同じ経管栄養法のひとつで、胃に穴を開けるか、腸に穴を開けるかの違いがあります。

腸ろうには、以下の特徴があります。

  • 胃ろうよりも栄養剤が逆流しにくい仕様
  • 定期的な医師によるカテーテル交換が必要
  • 直接腸に栄養剤を流し込むため、下痢や血糖値などの急な変化が起こる可能性がある
  • カテーテルが細いため投与できる栄養剤が限定されており、家族と同じ食事を流動食として摂取できない
  • 細長いカテーテルを使用するのが一般的で詰まる恐れがある

一般的に、胃がんの方、嘔吐してしまう方や栄養剤が漏れてしまう方など、胃ろうに対応できないときに腸ろうを選択するケースが多くなっています。

胃ろうの種類

胃ろうの種類

胃ろうには、体内に挿入するカテーテルによって4つの種類があります。これは、ボタン型とチューブ型、バンパーとバルーンの組み合わせによって種類が決まる仕組みです。

それぞれの特徴やメンテナンス時期などについての詳細は、以下の表を確認してみてください。

種類 特徴 メンテナンス時期(交換頻度)
ボタン型バンパー ・挿入したカテーテルを長く使用できる

・逆流を防止する機能を備えている

・交換時に痛み、ろう孔損傷につながるリスクがある

約4〜6ヶ月
チューブ型バンパー ・挿入したカテーテルを長く使用できる

・スムーズに投与しやすい

・交換時に痛み、ろう孔損傷につながるリスクがある

・チューブ内が汚染しやすい

約4〜6ヶ月
ボタン型バルーン ・カテーテルの交換がしやすい

・逆流を防止する機能を備えている

・バルーンの破裂などを防ぐため、定期的な固定水の入れ替えとカテーテルの交換が必要

・スムーズな投与には栄養管との接続への慣れが求められる

約1ヶ月
チューブ型バルーン ・カテーテルの交換がしやすい

・スムーズに投与しやすい

・バルーンの破裂などを防ぐため、定期的な固定水の入れ替えとカテーテルの交換が必要

・チューブ内が汚染しやすい

約1ヶ月

バンパーは、ストッパーが抜けにくいのが特徴ですが、交換時に痛みや出血を伴う恐れがあります。一方のバルーンは、専用の水を用いてふくらませることで固定できる仕組みです。交換は容易ですが極稀にバルーンが破裂する可能性があります。

また、ボタン型は衣服を着れば目立たず動きやすい点が長所です。一方チューブ型は、チューブが動作の邪魔になり抜去しやすいリスクがありますが、栄養剤などを注入しやすい点が特徴です。

それぞれの特徴を参考に、胃ろうの造設手術を行う際には、ご本人や介護者の状態、意向に沿ったものを選択します。

胃ろうにするメリット・デメリット

胃ろうは、経口摂取が難しい方にとって必要な医療処置のひとつですが、実際に導入するかどうかの決断は非常に悩ましいものでしょう。ここからは、胃ろうを造るメリットとデメリットを詳しく解説します。

胃ろうにするメリット

胃ろうにするメリットには、主に以下のようなものがあげられます。

  • 消化管を使用するため、自然な栄養吸収経路に近い
  • 経鼻経管栄養と違い、喉に管がないため嚥下訓練がしやすい
  • 造設後も入浴など日常生活に関する制限がほとんどない
  • カテーテルが抜けにくい
  • 服を着れば見えにくいため精神的な負担なく外出しやすい
  • 場合によっては経口摂取と併用することもできる など

胃ろうは、チューブを鼻や口から通さないため、ご本人が感じる痛みや違和感などを抑えられることから身体への負担が少ない医療処置方法といえます。また、胃ろうを造設していても、嚥下機能がある程度保たれている方は同時に経口摂取もできる場合があるため、嚥下訓練が可能です。食べ物の味覚や香りを楽しむことで、満足感を得ることもできます。

胃ろうにするデメリット

メリットがある一方で、胃ろうにするデメリットには以下があげられます。

  • 定期的にメンテナンスする必要がある
  • 造設には手術が伴う
  • 経管栄養剤が胃内から逆流するリスクがある
  • 手術で造設するため、一時的に費用がかかる
  • 認知症の方などは自分で抜いてしまうリスクもある など

胃ろうは、ご本人の身体的負担が抑えられる反面、適切に維持し続けるには定期的なメンテナンスが欠かせません。カテーテルを清潔に保ち定期的に交換することが必要です。

また、唾液による誤嚥や口腔内の雑菌の繁殖を防ぐため、あわせて口腔ケアも行います。胃ろうを長く適切に使い続けるには、正しい使い方の理解と周りの方のサポートが求められます。

胃ろうにかかる費用

胃ろうにかかる費用は、造設や交換など段階によって異なります。それぞれの目安となる費用相場は、以下のとおりです。

費用の種類 費用相場(医療保険適用で自己負担は1~3割)
胃ろうの造設 10万円程度
胃ろうの交換 バルーン:1万円程度 ※1〜2ヶ月に1度交換

バンパー:2万円程度 ※4〜6ヶ月に1度交換

胃ろうの栄養剤 2〜3万円程度/月
胃ろうのメンテナンス(主に訪問診療代) 6万円程度/月

なお、手術や入院費用、訪問診療にかかる料金には医療保険が適用され、自己負担額は上記金額の1~3割です。栄養剤は病院では食事として提供されるため保険適用外ですが、自宅の場合は処方されるため保険適用となります。

また、ひと月の医療費が高額になった場合には、高額療養費制度が適用可能です。高額療養費制度とは、ひと月内の医療費の上限額を超えた場合、その過剰分が払い戻される制度を指します。

高額療養費制度について詳しくは別記事「ホスピスの費用はどれくらい?平均相場や入居条件についても徹底解説」で解説しています。あわせてご覧ください。

高額療養費の具体的な上限額は所得などの条件によって異なるため、以下のサイトを参考にご確認ください。

出典:我が国の医療保険について|厚生労働省
出典:高額な医療費を払ったとき(高額医療費)|全国健康保険協会

自宅で胃ろうを管理するときのポイント

福祉施設において胃ろうの管理は医療行為に該当するため、医師や看護師または研修を受けた介護職員しか食事や栄養剤の注入を行えません。ただし、在宅介護の場合であれば、家族でも胃ろうへの注入など処置を行うことができます。

自宅で胃ろう処置を行うときのポイントは、主に以下の4つです。

  • 経口摂取しなくても口腔ケアは継続する
  • 体を清潔に保つ
  • 本人に適している栄養剤を選ぶ
  • 注入するときは体を起こす

口腔ケアを行う

胃ろうにすると、経口摂取の機会が減ることで唾液の分泌が少なくなり、唾液による自浄作用が働かなくなります。

その結果、口腔内で雑菌などが繁殖してしまい、唾液やたんに絡んで気管に入る恐れがあります。気管支炎や誤嚥性肺炎を引き起こすリスクとなるため、経口摂取をしない場合でも、歯磨き等の口腔ケアは欠かさずに行いましょう。

体を清潔に保つ

胃ろうにすると、稀にろう孔から栄養剤が漏れたりすることで、周囲の皮膚が赤くなるなど皮膚トラブルが起こることがあります。そのため、日々の皮膚状態の観察とあわせて、胃ろう周囲の皮膚は清潔に保つように心がけましょう。

本人に適している食事を選ぶ

胃ろうの方の食事は、家族と同じ食事をミキサーにかける流動食や介護用のとろみ食、市販されている栄養剤があります。流動食は家族と同じものを食べることでご本人の食事の楽しみに繋がり、とろみ食は外出先でも使いやすいというメリットがあります。

胃ろうの栄養剤には、「消化態栄養剤」と「半消化態栄養剤」の2種類があります。それぞれの特徴は、以下のとおりです。

  • 消化態栄養剤:タンパク質が既に分解された状態のもので、消化管への負担を最小限にできるもの
  • 半消化態栄養剤:タンパク質がそのままの状態で含まれているため、消化管にかかる負担を軽減しつつより自然に近い栄養摂取が可能なもの

栄養剤の種類は、消化吸収能力に合わせて選択し、一般的に消化機能が低い場合には消化態栄養剤が選ばれます。また、栄養剤にはゼリー状のものや粉末タイプなどの種類があるのも特徴です。

水分制限している方や、消化機能が低い方など、ご本人の状況に合わせて選択しましょう。どの食事や栄養剤を選べばよいかわからないという場合は、迷わずに医師に相談してみてください。

注入するときは体を起こす

胃ろうにした方に栄養剤を注入する際は、栄養剤の逆流を防ぐために体を起こすことを忘れないようにしましょう。目安としては、30〜45度以上起こし、そのなかでもできるだけ無理のない姿勢を保ってあげることが重要です。

また、注入後は、胃内の栄養剤が消化されるまで30分〜1時間程度、上体を起こしたままにしましょう。

胃ろうのケアを行う介護施設の種類

ご家族に介護が必要でも、自宅で胃ろうの管理を続けることが難しい場合もあります。そのような方でも安心して過ごせるよう、以下のような介護施設では胃ろうによる栄養管理や医療的処置が必要な方を受け入れています。

  • 介護医療院
  • 介護老人保健施設
  • 特別養護老人ホーム
  • 住宅型有料老人ホーム
  • サービス付き高齢者向け住宅
  • ホスピス型住宅 など

各施設の特徴については、別記事「老人ホームの種類と特徴を比較!費用・介護度別の選び方」をご覧ください。

なお、胃ろうの方が施設を選ぶ際は、たん吸引に対応しているかどうかも重要なポイントです。胃ろう造設が必要な方は嚥下機能が衰えている場合が多く、たんをうまく吐き出せず誤嚥性肺炎を引き起こすリスクがあることが理由です。

当社で運営するホスピス型住宅ReHOPEでは、胃ろうの処置が必要な方も入居が可能です。気になる方は、以下のリンクから提供しているサービスをチェックしてみてください。

ReHOPEで提供しているサービスはこちら

まとめ

胃ろうとは、病気や加齢などによって口からの食事ができなくなった方が、より自然な消化吸収経路で栄養を摂るために行う医療処置です。胃ろうを造設するには、手術によって腹部にカテーテルを通し、栄養剤を注入できるようにする必要があります。

胃ろうにはバンパーやバルーンなどさまざまな種類があり、それぞれ費用や交換までの期間などが異なるため、メリット・デメリットを見極めて選ぶことが重要です。また、胃ろうは自宅でも療養可能ですが、より安心してサポートを受けるために、特別養護老人ホームやホスピスなどの施設への入居も検討してみてください。

よくある質問

胃ろうの毎月の費用はどれくらいですか?

胃ろう処置に毎月かかる費用は、栄養剤と訪問診療代、交換費用などがあげられます。金額の目安は、栄養剤は2〜3万円、訪問診療代は6万円、交換費用は1〜2万円です。

なお、それぞれ医療保険が適用となり自己負担額は1~3割となりますが、栄養剤は病院で提供された場合保険適用となりません。詳しくは、記事内「胃ろうにかかる費用」をご覧ください。

胃ろうのメリットとデメリットはなんですか?

胃ろうのメリットは、残存している消化吸収機能を維持・使用することで、より自然な栄養摂取ができることです。また、肺炎のリスクを減らしたり、カテーテルが目立ちにくく外出への精神的負担を抑えられるメリットもあります。詳しくは、記事内「胃ろうにするメリット」をご覧ください。

自宅でも胃ろうを行えますか?

胃ろうは、メンテナンスや交換などのために胃ろうの種類によって通院や定期的な訪問診療が必要ですが、増設後は自宅での療養が可能です。しかし、胃ろうからの栄養剤の投与・体調管理の面ではご家族のサポートも必要不可欠です。詳しくは、記事内「自宅で胃ろうを管理するときのポイント」をご覧ください。

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