「外に出たい」「誰かと会いたい」そんな想いを後押しできる作業療法士になりたい | ホスピス型住宅のCUCホスピス求人採用サイト

INTERVIEW

作業療法士インタビュー

「外に出たい」「誰かと会いたい」そんな想いを後押しできる作業療法士になりたい

作業療法士 千田 美沙妃

高校卒業後、専門学校で作業療法士の資格を取得し、地元の精神病院に入職。作業療法士として8年間勤務。急性期病棟、慢性期病棟、認知症病棟において、心身のリハビリテーションに携わる。その後2023年9月CUCホスピスに転職。現在は仙台エリアのReHOPEにおいて、作業療法士として働く。

お年寄りと接することが好きだった
幼少期の体験がキャリアの原点に

______作業療法士として働くことになったきっかけを教えてください。

小学4年生くらいの頃、友人の誘いで学校近くの介護施設を出入りしていたことがあるんです。当時はまだボランティアという自覚があったかわかりませんが、お年寄りにお茶を出したり、世間話をしたりすることがとても楽しくて。一緒にレクリエーションをしたこともありますね。いま思えば、それが私のキャリアの原点だったのかなと思います。

そんな幼少期を経て思春期を迎える頃、知人が心の病を患ってしまって。そのときに心身のリハビリテーションの大切さを感じたのをきっかけに、高校卒業後は専門学校で作業療法士の資格を取得して、地元の精神病院で働き始めたんです。

______前職の精神病院ではどんな仕事をされていたのですか?

急性期病棟・慢性期病棟・認知症病棟と、一通りの病棟で8年間、作業療法士として従事しました。患者様の層は幅広く、10代の若い方からご高齢の方までいろいろな方を担当しました。精神科なので、歩行訓練などの個別にかかわるリハビリのほかに、集団レクリエーションで体操をしたり、陶芸などの作業活動をしたり、心理士と協力して患者様向けの院内セミナーを開いたりする仕事がメインでした。

心がふさぎ込んだ末に寝たきりになってしまう患者様も多いのですが、何度も病室を訪問しお話を聴きにいくにつれて、少しずつ心を開いてくださるんです。身体面だけでないリハビリテーションを通して、徐々に元気を取り戻される様子を近くで見ることがやりがいでした。

病気ではなく、その人自身に寄り添いたい
病院からホスピス型住宅への転職を決意

______その後、なぜCUCホスピスへ転職されたのですか?

病院よりも生活の自由度が高く、つらさを抱える方の気持ちを第一に考えて働けると思ったからです。

病院に勤務していた頃、認知症病棟でお酒が大好きな患者様を担当したことがありました。その方はご高齢で、いつ亡くなってもおかしくない状況でした。元々お酒好きの方で、お会いするたびに「お酒が飲みたいよ」とこぼされていましたが、誤嚥性肺炎を起こすリスクがあるなかでのお酒の提供は当然難しくて…..。

心苦しい思いを抱えながら看護師に掛け合った結果、お看取りの直前、脱脂綿をお酒で湿らせたものを口に含ませることで、その方の願いを叶えることができたんです。ご本人もご家族もとても喜んでくださって、いまでも忘れられない経験です。

その出来事をきっかけに、もっとご本人の気持ちに寄り添いやすい環境で働きたいと思うようになったのが、CUCホスピスへの転職のきっかけです。

______現在の仕事内容と病院との違いを教えてください。

いまは、1日に8〜10件ほどご入居者さまのお部屋を訪問し、立つ・歩く・車いす移動といった日常動作をサポートするリハビリテーションを行っています。

病院は疾患ありきで提供するケアが決められますが、ホスピス型住宅ではご入居者さまとの会話を通してケアの内容を決めていくスタイルです。そうした意味で、病院勤務をしていた頃と比べると一歩踏み込んだ働き方ができていると感じます。

あるとき、身体が動きにくい難病のご入居者さまから「ひとりでトイレに行きたい」と相談を受けたんです。ご本人の意思を尊重したい一方で、ひとりでの移動は転倒などのリスクがありました。

そこで、ご本人の許可を得た上で、実際にトイレに移動する際の介助の様子を動画で撮影してみたんです。撮影した映像を見ながら、ご本人の尊厳を傷つけない最小限のサポートで安全に見守れる方法を考え、看護師や介護職のスタッフにも共有しました。試行錯誤の末、ようやくご本人の納得のいく介助方法が施設内で決まり、これが私の理想に近いリハビリのかたちだと感じました。

作業療法士としてさらに成長し、
ご入居者さまに安心感を与えていきたい

______印象的なご入居者さまのエピソードはありますか?

作業療法士として、ご入居者さまの暮らしに関わることまでサポートできた時は、嬉しくなりますね。

たとえば、以前あるご入居者さまから「転ぶこともあるけれど、なるべく自分のことは自分でしたい」と相談いただいたことがありました。その際、ご本人の居室内の移動の様子をみて、生活導線を改めて検討したんです。

新たに手すりの導入や絨毯をすべりにくいものに変えるご提案をした結果、「手すりを付けてから転ばなくなったし、居室内で自主訓練も安全にできるようになった」とお言葉をいただきました。暮らしの安全性が高まったことに加え、リハビリにも前向きに取り組めるようになり、ご提案してよかったと思いました。

また、別のご入居者さまのエピソードになりますが、90歳で神経性の麻痺を抱えている男性のご入居者さまを担当していて、その方は毎日歩行訓練を頑張っておられて、「夢は腕立て伏せ」とおっしゃるんです。リハビリテーションが生きる糧というほど意欲的なんですね。

一般的に考えれば、ご高齢で重い疾患もあり、「いまさらリハビリ?」と思われるかもしれません。でもどんな人でも、居室にこもって人生の最期を待つだけなんてつらいですよね。

「外に行ってみたい」「誰かと会いたい」そんな明日への希望があるからこそ、前向きにリハビリテーションを頑張る気持ちが生まれてくるんだと思います。その意欲を少しでもサポートして、願いを叶えるお手伝いがしたい。そのご入居者さまと出会い、改めて襟を正すことができました。

______今後、特に注力したいテーマを教えてください。

今後は作業療法士としての知識を増やして、よりスキルを磨いていきたいと思っています。
今年からCUCホスピスでは認知症のケアサポートチームが発足し(2024年4月時点)、施設や職種の壁を越えて認知症ケアについて知見をブラッシュアップできる機会ができたので、これを機に認知症の方への関わり方について知識や経験を深めていきたいです。

それから、ご入居者さまにもっと頼られる存在になっていきたいという想いもあります。スタッフはどうしても日々忙しく業務に追われがちで、その気配を察知したご入居者さまの多くは話したいことがあっても遠慮してしまいます。

だからできる限り、いつでも話しかけやすい存在でいたい。「今日は作業療法士さんがいてくれるから安心だ」「普段頼めないことも頼んでしまおうかな?」そんなふうに、ご入居者さまの心の拠りどころになれるように頑張りたいです。