ホスピス型住宅のReHOPE | ReHOPEマガジン | ご家族の声 | 自分らしく生きる、ReHOPEで生まれたご入居者さまのエピソード
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ホスピス型住宅のReHOPEを運営する株式会社シーユーシー・ホスピスは、1年を通して「『前を向いて生きる』を支える。」を体現した取り組みを共有し合うイベント「エピソードキャンバス」を開催しています。
今回は、このエピソードキャンバスで共有された事例の中から3つのご入居者さまのエピソードをお届けします。
※本記事は、 CUCホスピスアニュアルレポート2023年より抜粋した内容です。
2023年度の準グランプリに輝いたReHOPE 橋本のエピソードをご紹介します。
Yさまは数年にわたりご自宅で療養されていましたが、「弱っていく姿を子どもたちに見せたくない」と考え、ReHOPEに入居。
進行性の神経難病に罹患しながらも、小学4年生の娘さんの中学校への入学を見届けることを目標にしていました。入居された当初は歩行訓練をしたり、車いすからトイレに移乗したりと身の回りのことができていましたが、徐々に病気が進行。娘さんの小学校卒業が目前に迫ったころには呼吸状態が悪化し、気管切開の必要に迫られました。当初は気管切開を希望していませんでしたが、娘さんの晴れ姿を見られなくなる危機感から、迷いが生じます。
「娘は私にどんな姿でも生きていてもらいたいのかな。どうしたらいいのだろう」と不安な気持ちを口にすることが増えました。その姿を見て「決して急かしてはいけない。Yさまが納得しないまま先へ進めば、混乱してしまう」と考えたのです。後悔のない選択をしていただくために、医師や看護師からメリットとデメリットを繰り返し説明し、配偶者さまも交え、幾度となく話し合いを重ねていきました。
最終的にYさまが出した答えは「気管切開を行わない」。「残された時間を、自分らしく過ごしていきたい」と考えての決断でした。現在、Yさまは呼吸状態が不安定ながらも、文字盤を使って会話をしたり、介助を受けながらご家族とのテレビ電話を楽しんだりしています。窒息のリスクがあり、その時期まで生きることが難しいとされていた、娘さんの中学校入学も見届けられました。難病の方は、病気の進行にともない、さまざまな意思決定をする必要があります。ご本人が納得のいく選択をできるようにともに向き合い、悩み、選択を受け止めていきたいです。
2023年度のグランプリに輝いたReHOPE 多治見のエピソードをご紹介します。
末梢神経に炎症が起こり、筋力の低下や感覚障がいが起きる慢性炎症性脱髄性多発神経炎。
30年近くこの病気と闘ってきたSさまですが、入院先の病院からReHOPEに受け入れの打診をいただいたときは、すでにお身体に力が入らず、寝たきりの状態。栄養は鼻に挿入したチューブから。入退院を繰り返す可能性もあることを主治医から告げられました。「それでも大丈夫です」とお迎えした私たち。受け入れの方針を定めるためにSさまにご希望を尋ねると、朦朧としながらも「家に帰りたい」とお答えになりました。
そこで、まずは鼻のチューブを外し、車いすに座れる状態を目指すことに。よだれが垂れ、意思に反して震える手足。それでも、リハビリを継続しました。最初はスタッフに動きを誘導されることが多かったSさまでしたが、少しずつ自分の意思で体に力を入れられるように。すると「できた!」「うれしい!」という感覚が湧いてきたそうです。
そこから一つずつ目標を達成し、ついに自分の足で立ち、歩くことができるようになりました。自宅に戻れる可能性はほぼないと診断されていたにもかかわらず、Sさまは自宅に戻ることができました。歩行器を使い、自分の足で。あれから1年が経ちいまでは自分の足で紅葉を観に旅行することを目標にされています。
2023年度のReHOPE 秦野のエピソードをご紹介します。
病状が進行し、徐々にお身体の自由がきかなくなってしまったMさま。
ご自身の状態を受け入れることができず、もどかしさがこみあげ、スタッフに大声で怒鳴ります。ときには、ケアを完全に拒否されることも。快くケアを受けていただくために私たちは何ができるのでしょうか。ケアを拒否される理由を、チームで何度も話し合いました。私たちが気づいたのは、スタッフの間で介助の方法に差があること。たとえばおむつ交換ひとつをとっても、当て方が少し違うだけで漏れてしまい、Mさまの不快感につながっていると気づいたのです。
情報共有を徹底してケアの方法を統一したところ、ご本人が怒鳴ることも減っていきました。そして、少しずつ距離を縮めることができ、Mさまから徐々に本音を言っていただけるようになったのです。特にお好きなものが食べられなくなる不安をお話しいただき、「死ぬ前にアイスクリームが食べたい」と打ち明けてくださいました。そこでアイスクリームを少しでもおいしく、長く味わっていただけるように、スプーンで小さくすくって凍らせて、一つひとつをお召し上がりいただけるよう工夫しました。アイスクリームを口にしたMさまが、目に涙を浮かべながら喜ばれたことが忘れられません。
「ありがとう、うれしいよ。」何度もチームで本気で話しあい、Mさまとの関係性を構築できたこと、喜んでいただいたことが、私たちの自信になりました。どんなに対応が難しい方だとしても、相手の想いを理解し真摯に向き合いつづけることで、いずれは受けとめてくださるということが分かったのです。今後もスタッフ一丸となって、ご入居者さまの希望に応えていきます。
私たちは、ステークホルダーのみなさまに経営方針や事業活動の成果・今後の方向性をお伝えするため、『アニュアルレポート2023』を発行しました。
がん末期や難病のご入居者さまへのケアを進化させる取り組みや、施設のスタッフを支える仕組みを紹介し、「ホスピス=死を静かに待つ場所」という一面だけではないことをご理解いただきたく、「前を向いて生きる」ご入居者さまやご家族、明るく寄り添うスタッフの日常を描いています。
※ より詳細なレポート内容はこちらからご覧ください。