ホスピス型住宅のReHOPE | ReHOPEマガジン | ReHOPEについて | テクノロジーが進化しても、最善のケアは、人にしかつくれない【SUPPORTERS INTERVIEW】
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「病や障がいを抱える方との向き合い方に正解はありません。しかし想像力を働かせながら、その方のために最善を尽くそうと努力しつづけることで、正解に近づくことはできる。」そう語るのは、ReHOPE 堺北を訪問診療医としてサポートしてくださっている山口一行先生。協業において印象的だったことを、お話しいただきました。
※本記事は、 CUCホスピスアニュアルレポート2023年より抜粋した内容です。
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山口一行 さん
一般社団法人鳳雛会 代表理事
あらたホームクリニック三国ヶ丘 医師
大阪・堺市出身。徳島大学で学んだ後に堺市の総合病院に勤務。
がん患者をはじめとする、通院が難しくなった方を最期まで診たいという想いから訪問診療医として独立。ご入居者さまの気持ちを大切にするReHOPEの思想に共感し、1年ほど前から連携している。
私は総合病院で、医師としてのキャリアをスタートさせました。多くを学び、やりがいも大きかったのですが、患者さんを最期まで診ることができないというもどかしさも感じていました。病状が進むと通院が難しくなるので、訪問診療クリニックを紹介する形となるからです。
もともとそうした想いがあったなかで、地域で訪問診療クリニックが足りないと声をかけていただき、自分で開業しようと踏み切りました。働き始めた頃と現在を比較して感じるのは、どこで、どのように最期を迎えたいかという患者さんの想いに変化が見られることです。
かつては病院で亡くなることが一般的だと思われていましたが、いまは自分らしく過ごせる環境で最期を迎えることに重きを置く方が増えたように思います。コロナ禍でご家族やご友人との面会が制限されたことも影響しているのでしょう。
これは堺市に限ったことではなく、日本全国でみられる変化だと思います。だからこそ、お一人お一人の気持ちを大切にしながら前向きな最期を迎えることのできるReHOPEの必要性を、強く感じています。
ReHOPE堺北を初めて訪問したのは、1年ほど前。人工呼吸器に加えて、胃ろうやバルーンもつけている方の治療を依頼されてのことでした。こうした状況にある方を24時間体制の看護・介護サービスで支えることができるスタッフの能力に驚かされたのを覚えています。
それを実現するために、多職種の方々がしっかり連携しているのも印象的でした。多くの施設では、看護と介護の専門性が異なるため、チームワークが難しい状況を見受けます。ReHOPEの強みは、医療の知見をもとに受け入れ方針を定め、その意思決定をもとに全職員が緻密に連携していることだと感じます。
たとえば薬を投与した後の微細な数値の変化。医療の知見がないと見過ごしてしまいそうですが、ReHOPEの方々は的確に報告してくれます。このように、ご入居者さまお一人お一人をしっかり観察することは、情熱がないとできません。診察する私にとっても、ご本人やご家族にとっても大きな安心です。
ReHOPEに入居した方のなかには、数日で亡くなる方もいらっしゃいます。一見、なにもできなかったように映りますが、そうではないことがご本人やご家族の表情を見ていると伝わってきます。
病院ではなく、自分が望む場所で過ごしながら最期を迎えられたことから、みなさん本当に穏やかな表情をされているのです。ReHOPEに数ヶ月や数年にわたり滞在される方も、入居したばかりの頃は不安そうにしていたものの、いまでは安心してくつろいでいて、まるで自宅にいるようにお好きなことを楽しみながら過ごされています。
生き方や最期の迎え方に関するご要望は、人によって、状況によって異なります。そこに正解はありません。それに対しReHOPEでは、どのような希望をお持ちか、治療の方針も含めて日頃からしっかりと会話し、その想いに応えようとしている。それは技術と心の両方を持った人間にしかできないことで、どれだけテクノロジーが発達しても、AIを活用できるようになっても、代替できるものではないと感じます。ReHOPEのみなさんと接するたびに、この地域を一緒に支える身として、私も最善をつくしたいと感じるのです。
私たちは、ステークホルダーのみなさまに経営方針や事業活動の成果・今後の方向性をお伝えするため、『アニュアルレポート2023』を発行しました。
がん末期や難病のご入居者さまへのケアを進化させる取り組みや、施設のスタッフを支える仕組みを紹介し、「ホスピス=死を静かに待つ場所」という一面だけではないことをご理解いただきたく、「前を向いて生きる」ご入居者さまやご家族、明るく寄り添うスタッフの日常を描いています。
※ より詳細なレポート内容はこちらからご覧ください。