ホスピス型住宅のReHOPE | ReHOPEマガジン | ホスピスの基礎知識 | 看取り介護とは。ケア内容、受けられる場所、自宅でも対応可能かどうかを解説
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この記事の監修者
羽田 有美(はだ ゆみ)
株式会社シーユーシー・ホスピス 運営企画部 運営企画T
プロフィール
1999年日本福祉大学社会福祉学部社会福祉学科卒業後、障害者支援施設を経て訪問介護事業所等で管理職として従事。2018年8月よりシーユーシー・ホスピスの前身エムスリーナースサポートにて新入職者向けの養成講座の外部講師として主に介護保険制度・障害者総合支援法に関する講義を担当。現在は運営企画部にて施設運営に関する事業課題や運営課題の設定、業務標準化や業務効率化を推進し、施設運営のサポートを行っている。
人生の最期をどのような場所でどのような形で過ごしていくかは、本人にとってもご家族にとっても重要なことです。この記事では、人生の最期を安心して穏やかに迎えられるよう寄り添う「看取り介護」についての内容や、実際にどのような施設で看取り介護が受けられるのか解説します。
看取りとは、死が避けられない状況にある方に対して、最期の時まで身体的・精神的な支援を行い、その人らしい生活を尊重しながら寄り添うことを指します。単に生命の終焉を見守るだけではなく、苦痛を緩和し、安心感を提供すること、そして尊厳ある最期を迎えられるよう支えるのが看取りの本質です。
最期を迎えるまでの苦痛や痛みを緩和しながら、「死」を迎えるまでのサポートを行うことを看取り介護といいます。
厚生労働省は「人生の最終段階における医療の決定プロセスに関するガイドライン」を策定しています。このガイドラインの核となる考え方は、本人の意思を最大限に尊重することです。
具体的には、『人生の最終段階における医療およびケアについては、医師等の医療従事者から適切な情報の提供と説明がなされ、それに基づいて患者が医療従事者と話し合いを行い、患者本人による決定を基本として進めることが最も重要な原則』とされています。
また、2018年の厚生労働省による診療報酬改定では、在宅医療や介護の現場における看取りの支援が拡充され、内容が大幅に見直されました。その後も診療報酬の改定が進み、看取り介護は病院だけでなく、自宅や介護施設、ホスピス型住宅といった多様な場所での終末期ケアに対応できる体制が強化されています。これにより、利用者の希望に沿った柔軟な看取りが可能となっています。
※引用:厚生労働省「看取り 参考資料」11ページ
https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12404000-Hokenkyoku-Iryouka/0000156003.pdf
看取り介護と関連して出てくる「緩和ケア」や「ターミナルケア」との違いについて解説していきます。
緩和ケアは、病気による痛みや苦痛を和らげるための医療的なケアです。がんをはじめとした病気の痛みの管理や症状の緩和に重点が置かれ、専門的な医療チームにより病気の進行度に関係なく提供されます。
看取り介護では延命治療や医療行為を行わないのに対し、緩和ケアは治療と並行して行われる場合もあります。
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ターミナルケアは、治療による回復の見込みがない場合に行うケアを指します。「終末期医療」「終末期看護」とも呼ばれ、残された時間をできるだけ快適に過ごせるよう、医療・看護的なアプローチを中心に支援が行われます。
一方、看取り介護は、より日常生活に密着したケアを重視します。食事や排せつの介助、褥瘡(床ずれ)の予防など、日々の生活を支える介護的なケアが中心となります。医療的な処置よりも、その人らしい生活の継続を大切にしています。
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看取り介護では、ご本人の尊厳を守り、気持ちに寄り添うことを大切にします。具体的なケアは、身体的なケア、精神的なケア、そしてご家族に対するケアの3つを組み合わせて行います。
基本となる身体的なケアは健康状態の確認と身体を清潔に保つことが中心です。定期的な検温や症状の観察を行い、入浴や清拭などを体調に合わせて実施します。
食事では嚥下状態に応じた形態(きざみ食やミキサー食)を工夫し、可能な限り楽しめるよう配慮します。適切な姿勢やペースでの介助、水分補給も重要です。また、口腔内を清潔に保つ口腔ケアも感染予防や快適な生活に欠かせません。
また、褥瘡(床ずれ)予防のため、体位変換や皮膚の状態をチェックします。
精神的なケアでは、不安や孤独を和らげ、これまでの習慣や楽しみをできる限り続けられるよう配慮します。
環境づくりとして好みの音楽を流したり、快適な室温や湿度を保ったり、適切な明るさに調整したりすることで、心地よい空間を作ることができます。思い出の品や写真を近くに置くことで、安心感を得られることも多くあります。
また、日々の会話を通じた寄り添いも重要です。ご本人の話にはじっくりと耳を傾けましょう。言葉が出にくい場合は、指差しで会話できるコミュニケーション支援ボード(※)や背中をさする・手を握るなどのスキンシップで思いを伝えます。
※参考:公益財団法人 明治安田こころの健康財団「コミュニケーション支援ボード」
ご家族へのサポートも看取り介護を行ううえで大切です。身近な方の病状の進行を目の当たりにすることは精神的な負担が大きいので、ご本人の現在の状態や今後の変化をわかりやすくご家族に伝え、状況を理解できるよう支援します。
また、ご家族にもできるケア内容を説明し、安心して介護できるようにします。場合によっては、ご家族自身が休息できるよう、他の介護サービス利用を提案することもあります。
さらに、看取りの過程から死別後に至るまでご家族を支える「グリーフケア」も重要なケアのひとつです。看取りの過程からその後まで、ご家族の気持ちに寄り添い、必要に応じて専門家への相談も促しながら、継続的なサポートを提供します。
ここでは看取りまでの流れについて解説していきます。看取り介護の流れは、大きく以下の4つの段階に分けられます。
ただし、すべての人がこの流れの通りというわけではなく、本人の病状や環境によって異なる場合もあるため注意が必要です。
回復が難しいと診断され、ケアが開始される時期です。医師や医療者が方針を説明し、ご本人の気持ちを確認しながら医療・ケア方針を決定します。
本人の意思確認が難しい場合は、ご家族の意見や推定意思を尊重し、慎重に判断します。不安や精神的負担が大きい時期のため、丁寧な説明と配慮が求められます。
比較的ご本人の心身の状態が落ち着き、ご本人・介護者ともに残された時間の過ごし方を考えやすい時期です。自己判断の可能な方の場合、余命宣告を医師から受けることが多い時期でもあるかもしれません。
病状が回復しているわけではないので、ご本人の体調の変化には注意が必要です。
病気が進行し、心身が不安になる時期です。食欲の低下や体重の減少が見られることが多くなります。新たな症状が現れることもあり、その都度、適切な対応が必要となります。医療者との連携を密にし、必要に応じて緩和ケアを取り入れます。
看取り期は、患者さまの人生の最終段階に向けたケアが必要となる期間を指します。以下の表は、看取り直前の状態変化とその際に行うケアについて記載されたものです。
時期 | 症状 | 状態の説明 | ケアのアドバイス |
死亡一週間前頃 | 意識の混濁・せん妄 | だんだんと眠っている時間が長くなり、辻褄の合わないことを言うことがある | 伝えたいことがあれば今のうちに伝え、穏やかに優しく話しかけましょう。 |
嚥下困難 | 飲み込みにくく、むせたり、食べる量や飲む量が減少してくる | 身体がエネルギーや水分をそれほど必要としなくなっています。 | |
1〜2日前頃 | 昏睡 | 声をかけても返事をしないことが増える | 苦痛は少なくなっていることが多いです。 |
死前喘鳴 | 呼吸時に喉や胸の奥から「ゴロゴロ」「ゼーゼー」といった音が聞こえる | 眠っていることが多く、本人は苦しみを感じていないことがほとんどです。 | |
チェーンストークス呼吸 | 脳の指令や循環が乱れることで、呼吸が速くなったり遅くなったりを繰り返す | これは自然な現象であり、心配しすぎる必要はありません。穏やかに見守ってください。 | |
数時間前〜直前 | 死前喘鳴 | 呼吸時に喉や胸の奥から「ゴロゴロ」「ゼーゼー」といった音が聞こえる | 不快感や苦しみを表しているわけではありませんので、そっと寄り添いましょう。 |
四肢冷感、チアノーゼ、動脈触知不可 | 血圧が低下し、全身の循環が悪化する | 聴覚は最期まで残るとされています。お別れの言葉を伝えてあげましょう。 |
引用:東京都福祉局「施設での日常から看取りを支えるパンフレット p.7~8」
看取り期には、食事や水分がほとんど摂れなくなり、眠っている時間が増えてくるようになります。この時期には、苦痛の緩和を最優先としたケアが行われます。
看取り介護が必要となった際に利用できる場所とそれぞれの特徴について解説していきます。
病院での看取りは日本で最も多く、6〜7割を占めます。24時間体制で医療スタッフが対応し、急変時にも迅速に対応できます。専門的な医療が必要な場合、特に適した場所です。最近では全国的に緩和ケア病棟が増えていますが、地域によって整備状況にはばらつきがあります。また、入院には条件があり、希望通りに入院できないこともあります。最期を穏やかに迎えるために、事前に希望を医療者と話し合うことが大切です。
参考:厚生労働省「厚生統計要覧(令和5年度) 第1編 人口・世帯 第2章 人口動態 第1-25表」
介護施設では、24時間体制で看護師や介護職がケアを提供し、一定の医療行為も行われます。施設内で他の入居者との交流を持ちながら、その人らしい生活を続けることができます。当社が運営するホスピス型住宅 ReHOPEも介護施設に分類されます。
自宅での看取りは、多くの方が望む選択肢です。慣れ親しんだ環境で最期を迎えることは、安心感をもたらします。
また、大切な人と自由に過ごせる点も利点です。しかし、在宅での看取りには、訪問診療や訪問看護、ケアマネジャーとの連携が必要で、介護保険サービスを活用して負担を軽減することが重要です。医療機器や介護用品の手配、緊急時の連絡体制を事前に確認しておくことが大切です。
看取り介護とは、人生の最期のステージにある方に対して、その人らしい最期が迎えられるよう支援するケアです。医療的な処置よりも、その人の尊厳を守り、快適な日常生活を支えることに重点を置いています。また、ご家族のサポートも重要な要素となります。
看取り介護では、身体的なケア、精神的なケア、そしてご家族へのケアを総合的に提供します。具体的には、清潔保持や食事介助といった基本的なケアに加え、本人の不安や孤独感に寄り添う心理的なサポート、そしてご家族への介護指導や精神的支援を行います。これらのケアは、常に本人の状態や希望に合わせて調整されます。
自宅での看取り介護は可能です。ただし、医療機関や介護サービスとの密接な連携が必要です。在宅医、訪問看護師、ケアマネジャーなどと相談しながら、必要なサービスを組み合わせることで、自宅での看取り介護を実現することができます。24時間の介護体制や緊急時の対応など、ご家族の状況に応じた支援体制を整えることが重要です。
ReHOPEは、終末期の方々に対して専門的なケアを提供するホスピス型住宅です。24時間体制での看護・介護体制を整え、ご入居者さまとご家族に寄り添った看取りケアを実践しています。
当施設では以下のようなサービスを提供しています
当施設では年間1,134名(2023年4月〜2024年3月)のお看取りの実績があります。入居に関するご相談は随時承っております。お気軽にお問い合わせください。
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