ホスピス型住宅のReHOPE | ホスピス・介護の基礎知識 | 医療・介護制度を知る | 老人福祉法と介護保険法の違いとは?2024年の改正内容もわかりやすく解説
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この記事の監修者
藪 康人(やぶ・やすひと)
株式会社シーユーシー・ホスピス 執行役員 運営本部 本部長
プロフィール
2006年慶應義塾大学看護医療学部卒業後、大学病院で約5年間勤務。働くなかで、医療現場の知見を仕組み化するスキルを身につけたいと考え、大学院でMBAを取得。2018年CUCへ中途入社。病院事業部で事業譲渡や病院の立ち上げ、事務長・看護部長としてのマネジメント、医療マネジメント職の人材育成に取り組む。2024年シーユーシー・ホスピス 執行役員 運営本部 本部長就任。
老人福祉法や介護保険法は、介護福祉士やケアマネジャーなどの職種を目指すうえで理解しておかなければならない法律です。しかし、それぞれの法律には似た部分も多く、正しく理解するのに苦労している方もいるのではないでしょうか。
この記事では、老人福祉法と介護保険法の違いについて、詳しく解説していきます。また、各法律の詳しい内容や2024年に行われた介護保険法改正についても解説しますので、ぜひ参考にしてください。
老人福祉法は、1963年に施行された高齢者福祉に関する基本法です。この法律は、高齢者向けの福祉施設、機関、各種事業のルールを定めています。また、都道府県や市区町村に対して老人福祉計画の作成を義務付け、老人居宅生活支援事業や老人福祉施設についての規定も設けています。
老人福祉法が施行される以前、戦後の人口増加に伴う高齢者層の増加や高度経済成長などの要因から、家族のみで介護を担うのが難しくなっていました。また高齢者の貧困も社会問題となっており、生活を支える仕組みが求められていました。
そこで、高齢者における「健全で安らかな生活を保持することや健康を維持すること、社会的な活動への参加を促すこと」を基本理念とした、老人福祉法が制定されたのです。
老人福祉法に基づいた社会福祉制度によって、福祉サービスを受けやすくなったり、老人ホームなどの施設が建てられたりと、高齢者が暮らしやすい社会づくりが始まりました。
参考:厚生労働省|老人福祉法
介護保険法とは、老人福祉法から約35年後の2000年に施行された法律です。老人福祉法によって、高齢者へのサービスは手厚くなっていきました。しかし、その後急速に高齢化が進みます。老人福祉法は、「措置制度」という方式をとっていました。
措置制度とは、行政が必要と判断した高齢者に対して、行政の責任と費用で福祉サービスを提供する仕組みです。高齢化の急速な進行により対象者が大幅に増加し、行政が負担する施設整備やサービス提供のコストが膨大になったため、国や自治体の財政を逼迫することとなりました。
一方で少子化や核家族化も進み、介護離職が相次ぐなどの社会問題も発生し、介護を社会全体で支えていく仕組みが求められるようになりました。従来の措置制度だけでは対応しきれなくなった介護問題を解決するため、介護保険法のもとで介護保険制度が誕生しました。
この法律は高齢者の自立支援と、家族の介護負担軽減を目的とし、サービス利用者と提供者が対等な関係で契約を結ぶ利用者本位の制度(契約制度)として規定されています。
参考:厚生労働省|介護保険法
老人福祉法の「措置制度」では、介護サービスはすべて税金で賄われ、利用者側には選択権がありませんでした。一方で介護保険制度は「契約制度」を採用しており、利用者が自らサービス事業者と契約を結び、自分に合ったサービスを選択できる仕組みとなっています。
介護保険制度は、40歳以上の方が支払う「保険料(介護保険料)」と「税金(公費)」で運営されています。財源は、保険料と税金(公費)がそれぞれ50%ずつとなっています。
また、運営者であり税金を活用する市区町村を「保険者」といい、介護サービスを利用できる人のことを「被保険者」といいます。介護保険の被保険者は、介護サービス利用時の費用自己負担を1〜3割に抑えられます。
被保険者の種類は、以下のとおりです。
介護保険法に基づくサービスは、介護を必要とする人の日常生活をサポートしたり、要介護状態になるのを予防したりする目的で設計されています。介護保険法に基づくサービス内容にはどのようなものがあるか、詳しく見ていきましょう。
サービス | 具体的な内容 |
自宅にて利用できる介護サービス |
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施設等に訪れて利用できる介護サービス |
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物品の購入や自宅の改修に伴うサービス |
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予防のために利用できる介護サービス |
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ケアプランの作成など計画に関するサービス |
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2024年(令和6年)には、介護保険法の改正が施行されました。高齢化や人口減少が継続する中で、介護サービスの改善と、持続のための対策が求められています。高齢者が増え続ける一方で介護を担う現役世代が減少していることから、働き手を増やす・効率を上げる・予防支援によってなるべく要介護者を減らす、などが目的となっています。
主な改正内容は以下です。
ここまで老人福祉法と介護保険法についてそれぞれ解説しましたが、あらためて表の形で違いをおさらいしましょう。
老人福祉法 | 介護保険法 | |
法律の目的 | 高齢者の健全で安らかな生活を保障し、健康維持や社会参加を促す | 財政の逼迫を改善し、介護を社会全体で支える仕組みを実現する |
施行された時期 | 1963年7月 | 2000年4月 |
施行の背景 | 戦後の人口増加や高度経済成長に伴い家族のみでの介護が困難になり、高齢者の貧困も社会問題化したため | 急速な高齢化により対象者が増加し財政が逼迫、また少子化や核家族化により行政のみで介護を支えきれなくなったため |
制度の違い | 措置制度 | 契約制度 |
参考:厚生労働省|日本の介護保険制度について
参考:厚生労働省|老人福祉法の施行について
老人福祉法と介護保険法は、法律が制定された目的や時期、背景が異なります。老人福祉法は、介護保険法よりも前から高齢者の福祉や介護を支えてきました。介護保険法の導入により、それまでの措置制度から利用者による選択と契約の仕組みへと大きく転換しました。
現在では、介護保険法が高齢者介護サービスの中心的な法的枠組みとなり、老人福祉法は介護保険では対応できない部分を補完する役割を担っています。両法に基づくサービスが並存することで、高齢者や介護を必要としている方へのサポート体制が総合的に充実しています。
老人福祉法と介護保険法の違いには、法律が施行された年や背景、目的があげられます。法律が施行された年・時期については、老人福祉法が1963年7月で、介護保険法は2000年4月です。詳しくは記事内「老人福祉法と介護保険法の違い」をご覧ください。
老人福祉法とは、高齢者の心身の健康保持や生活の安定を目的として、1963年に制定された法律です。老人福祉法によって、老人ホームなどを市区町村が整備しました。詳しくは記事内「老人福祉法とは」をご覧ください。
介護保険法とは、介護を必要としている高齢者やその家族の方を支える介護保険制度についてのルールを定めた法律です。介護保険は、40歳以上の方が支払う介護保険料と税金の両方によって運営されている特徴があります。詳しくは記事内「介護保険法とは」をご覧ください。