ホスピス型住宅のReHOPE | ReHOPEマガジン | ホスピスの基礎知識 | ホスピスの利用に介護保険や医療保険は使える?利用条件や注意点について解説
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この記事の監修者
清水 皓平(しみず・こうへい)
株式会社シーユーシー・ホスピス 運営部 運営支援室 医事チーム
プロフィール
2013年順天堂大学スポーツ健康科学部卒業後、大学病院で10年間勤務。大学病院では診療録管理室、医事課、病院機能管理室で入院請求業務、カルテ管理、Quality indicator (QI)の指標作成等を経験。2023年シーユーシー・ホスピスに中途入社後、訪問看護や訪問介護の診療報酬請求やオンライン資格確認・オンライン請求の導入を行う。
本記事では、ホスピスケアの利用を考えている方へ、公的保険制度の適用方法について詳しく解説します。
介護保険や医療保険をどのように利用できるのか、ホスピス型住宅や在宅ホスピスでのケアを受ける際の注意点など、安心してホスピスサービスを利用するためのポイントをお伝えします。
2024年現在、ホスピス型住宅に入居する際に利用できる公的保険制度は、大きく分けて「介護保険」と「医療保険」の2種類です。ここでは、それぞれの公的保険制度について詳しく解説していきます。
介護保険は、高齢化社会に対応するため社会全体で介護を支えることを目的に創設された公的保険制度です。40歳以上の国民が加入し、被保険者は65歳以上の第1号被保険者と40〜64歳の第2号被保険者に分けられます。
65歳以上の方は、介護が必要だと認定されれば、原因にかかわらずサービスを利用できます。一方、40〜64歳の方は、特定の病気で介護が必要になった場合のみ利用可能です。利用者は要介護度別に支給される利用限度額の限度額内であれば利用したサービスの費用の1割〜3割負担で利用することが可能です。
介護保険制度により、ホスピスケアを受ける高齢者や特定の病気の方々が必要な介護サービスを受けられる仕組みが整えられています。介護が必要となった際、介護認定を受けることで、自己負担額を抑えつつ適切なサービスを利用できるのが大きな特徴です。
参考:厚生労働省「介護保険制度の概要」
医療保険(健康保険)は、病気や怪我の治療時に医療費負担を軽減するための制度です。公的医療保険と民間の医療保険の2種類があり、日本では主に公的医療保険が広く利用されています。
この保険は、通常の病院での治療だけでなく、ホスピスケアなどの終末期医療にも適用されます。医療費の一部を自己負担として支払いますが、その割合は年齢によって異なります。69歳以下は3割、70歳以上は1割〜3割の負担となります。医療保険とあわせて公費(指定難病受給者証等)を利用することで自己負担額を抑えられる場合があります。
また、がん末期や国が定める難病、人工呼吸器を使用している方で在宅で療養されている方には、医療保険を適用した1日3回、週4日以上の訪問看護サービスも提供されています。医療保険制度により、必要な医療を経済的な不安なく受けられる環境が整っています。
参考:厚生労働省「我が国の医療保険について」
ホスピスケアで介護保険を適用する方法について解説していきます。ホスピスケアのサービスを受けるためには、まず「要介護認定」を受ける必要があります。要介護認定の申請手順は以下のとおりです。
ホスピスケアを受ける際、介護保険を適用させるためには、介護保険が適用されるホスピス型住宅や自宅にいながらホスピスケアを受けられるサービスである「在宅ホスピス」などのサービスを選ぶ必要があります。以下でそれぞれのサービスについて詳しく解説します。
ホスピス型住宅は、ホスピスケアを提供する介護施設の一種です。サービス付き高齢者向け住宅や有料老人ホームなどがあり、看護師や介護職が24時間常駐しています。(介護保険で住宅サービスを受けれるのは特別養護老人ホームや介護老人保健施設、介護医療院)ホスピス型住宅は、医療と介護の両面から終末期のケアを提供し、患者とその家族の生活の質を支える重要な役割を果たしています。
ホスピスケアを提供する介護施設であるホスピス型住宅には類似のサービスがいくつかありますが、それぞれ特徴が異なります。ホスピス型住宅の種類は以下のとおりです。
種類 | 特徴 | メリット | 注意点 |
サービス付き高齢者向け住宅(サ高住 | 24時間の見守りサービス、生活相談員の常駐 | 自由度の高い生活が可能、介護サービスを必要に応じて利用可能 | 介護・医療サービスは別途契約が必要な場合がある |
介護付有料老人ホーム | 介護スタッフが常駐、食事や入浴などの生活支援サービスを提供 | 介護度が高くなっても継続して入居可能 | 入居一時金が他サービスよりも高額になる場合がある |
住宅型有料老人ホーム | 生活支援サービスを提供、介護サービスは外部の事業者と契約 | 比較的自由度が高く、自分に合ったサービスを選択可能 | 介護度が高くなった場合、十分なケアが受けられない可能性がある |
ホスピス型住宅は、いずれも病院と比べて家庭的な環境で、急な病状変化にも柔軟に対応しやすい医療体制を整えていることが特徴です。また、入居期間に制限がなく、家族の面会や趣味・レクリエーションなど生活の自由度が高いこともポイントのひとつです。
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在宅ホスピスは、自宅にいながらホスピスケアを受けられるサービスです。在宅ホスピスの最大の魅力は、患者が住み慣れた環境で過ごせることで、家族やヘルパーのサポートを受けながら、自宅で安心して療養生活を送ることができます。
在宅ホスピスでは以下のようなサービスが提供されます。
在宅ホスピスで受けられるサービス・ケア | サービス・ケアの内容詳細 |
訪問診療 | 医師が定期的に自宅を訪問し、症状管理や処方を行う |
訪問看護 | 看護師が日常的なケアや医療処置を行い、患者と家族をサポート |
訪問介護・訪問入浴介護 | ホームヘルパーが食事、排泄、入浴などの日常生活援助を行う |
訪問リハビリテーション | 理学療法士、作業療法士、言語聴覚士などのリハビリの専門職が自宅を訪問し、医師の指示のもとにリハビリテーションを行う |
福祉用具の貸与 | 必要に応じて日常生活をサポートしたり、介護者の負担を軽減する福祉用具が介護保険が適用された価格でレンタルや購入が可能 |
訪問診療や訪問看護などは24時間対応の緊急訪問体制も整えられており、急変時にも対応が可能となっています。
ただし、在宅ホスピスは、家族の負担が増加する可能性や、地域によって提供される医療サービスの質や種類に差があるため注意が必要です。利用を検討する際は、家族の状況や地域の医療体制を事前に確認するようにしましょう。患者と家族の希望を尊重しながら、安心して最期を迎えられる環境を整えることが大切です。
日本では、ホスピスケア(緩和ケア)は公的医療保険の対象となっています。病院内ホスピスや承認された緩和ケア病棟では医療保険が適用され、基本的な費用が賄われます。緩和ケア病棟では定額制が採用されており、入院30日以内の場合、1日あたり48,700円〜51,070円’(10割負担の場合)(10割負担の場合と注釈があると親切かも)の医療費が設定されています。
ホスピス型住宅でも、集中的なケアが必要な場合は訪問看護などで医療保険が利用可能です。患者の自己負担額は年齢や所得に応じて変わりますが、公的医療保険によって大部分がカバーされます。
ホスピスケアを受けるには主治医の診断書が必要で、診断書には患者の状態や疾患の診断、ホスピスケアの必要性などが記載されている必要があります。
高額療養費制度は、1カ月の医療費自己負担額が一定額を超えた場合、超過分を払い戻す制度です。対象は保険適用の医療費のみで、払い戻しには約3カ月かかります。
同一月内に複数の医療機関での支払いがある場合は、合算して申請が可能で、申請は診療月の翌月1日から2年以内に行う必要があります。
70歳未満の方は『限度額適用認定証』を事前に取得することで、病院での支払いを上限額までに抑えられます。(*1)70歳以上の方は所得区分に応じて必要な証明書(健康保険証、高齢受給者証、場合により限度額適用認定証)を提示することで、自己負担限度額までの支払いとなります。
この制度は入院治療費も対象となり、一定額を超えた費用は返金されます。ただし、保険外治療、食事療養費、室料差額、文書料などは含まれません。制度を利用するには、加入している医療保険(保険者)に申請する必要があります。申請先は加入している保険によって異なるため、注意が必要です。
現在、マイナ保険証で保険証確認を開始している医療機関などでは、窓口や受付でマイナ保険証を提示することで高額療養費制度の適用ができます。
(*1)ホスピス型住宅の場合には、高額医療・高額介護合算療養費制度によって自己負担額を抑えられます。
参考:厚生労働省「高額療養費制度を利用される皆さまへ」
介護保険と医療保険の併用は、通常認められていませんが、がん末期や感染症の急性増悪期、または退院直後で週4日以上の頻回の訪問看護の必要があり、在宅緩和ケアを受ける場合には特例として併用が可能なケースがあります。これは、介護サービス(訪問介護など)と医療サービス(痛みの緩和など)の両方のケアが必要な患者に対応することが理由です。
ただし、緩和ケア病棟での入院治療は、医療機関でのサービスとみなされるため、原則として医療保険のみの適用となるため注意が必要です。
このように、患者の状況や受ける場所によって、保険の適用方法が異なりますので、適切なケアを受けるためには、各ケースに応じた保険の利用方法を事前に確認しましょう。
ホスピス型住宅の入居費用は、大きく固定費(家賃・管理費)、各種保険・サービスの自己負担分、その他生活費に分けられます。
家賃と管理費が含まれます。一部の施設では入居金や敷金が必要な場合があります。
介護保険や医療保険が適用されるサービス(訪問介護、訪問看護など)、訪問診療を利用する場合の医療機関への支払いや、障害福祉サービスを利用する場合の自己負担(原則1割、所得に応じて上限あり)が含まれます。
食費(摂取した分のみ1食単位で請求)や寝具のレンタル代、洗濯代行サービス費用など上記に該当しない生活費が含まれます。
これらの費用は年齢や所得、個人の状況により変動します。多くの場合、合計で月15万円〜25万円程度になります。
具体的な費用や提供サービスは施設ごとに異なるため、詳細は各施設に直接問い合わせてみましょう。また、保険の適用条件や自己負担額は個人の状況により変わるため、総合的に考慮して総費用を見積もる必要があります。
入居を検討する際は、これらの費用構成を理解した上で、個人の状況や必要なサービスを考慮し、適切な施設を選択することが大切です。
ホスピスケアでは、医療保険と介護保険が利用可能です。医療機関のホスピスは主に医療保険が適用され、ホスピス型住宅では両保険を状況に応じて使用できます。在宅ホスピスも選択肢のひとつです。費用は保険の種類や個人の状況により異なりますが、高額療養費制度などで負担軽減が可能です。利用にあたっては、各施設の条件や保険の適用範囲を事前に確認し、自身のニーズに合ったケアを選択することが大切です。
また、ホスピスケアの提供状況や制度は都市部と地方によって差があり、地方では選択肢が限られる傾向にあります。最近では、在宅ホスピスの推進や、ICTを活用した遠隔ケアの導入など、地域格差解消に向けた取り組みが進められています。
ReHOPEでの自己負担額イメージ、ホスピス利用の流れを下記からご覧いただけますので、ぜひこちらもあわせてご確認ください。
ホスピスでの緩和ケアは介護保険で受けられるの?
ホスピスケアのサービスを受ける際、介護保険を適用することは可能です。介護保険の適用には、お住まいの市区町村に申請し、要介護認定を受けている状態で、ホスピス型住宅や在宅ホスピスを利用する必要があります。詳しくは記事内「ホスピスで介護保険を適用する方法と条件」をご覧ください。
状況に応じて、医療保険と介護保険を併用することができますが、併用が可能な場合でもどちらが主たる保険になるかを決める必要があるため、担当医やケアマネージャーと相談して決定しましょう。詳しくは記事内「介護保険と医療保険を併用する方法」をご覧ください。
ReHOPEは、がん末期や難病の方に特化したホスピス型住宅です。医療・介護職が専門的なケアを提供し、24時間365日の体制で安心して自分らしい生活を送れるよう支援いたします。
常駐スタッフが日常生活のサポートから医療ケアまで、一人ひとりに寄り添ったケアを行います。地域の医療機関や多職種と連携し、心身のケアを総合的に提供しています。ご入居をお考えの方には見学案内も行っておりますので、お気軽にお問い合わせください。