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終末期とは?症状の特徴やケア内容、家族ができることについて解説

投稿日: 更新日:

終末期とは?症状の特徴やケア内容、家族ができることについて解説

この記事の監修者

松村 広子(まつむら ひろこ)

株式会社シーユーシー・ホスピス 看護クラーク多治見 看護管理者

プロフィール

総合病院にて手術室看護師を10年。その後外科外来、外科病棟に勤務し、がん患者様と多く関わる。手術をしても良くならず、苦しい思いをして過ごしている方の多いことにショックを受け、もっと専門的に学びたいと思い認定看護師教育課程へ進む。 その後緩和ケアチーム、緩和ケア看護外来、緩和ケア病棟、地域連携支援センターを経てそれぞれの緩和ケアを学び、在宅でその人らしく最期まで寄り添う看護を提供したいと考え、2023年 シーユーシー・ホスピスに入社。


終末期とは、治療による病気の回復が難しいと複数の医師が判断し、人生の最期に向かう時期のことを指します。

本記事では、終末期を迎えると心や身体はどのように変化するのか、また寄り添う家族はどのように対応すれば、限られた時間の中で後悔のない看取りとなるのかなどについて解説します。

できる限り苦痛を取り除きながら、その人らしい生活を支え、ご本人の希望に添った最期の時間を過ごせるヒントとなれば幸いです。

終末期(ターミナル期)とは

終末期とは、病状が進行し、これ以上の治療による病気の回復は難しいと複数の医師が判断した段階を指します。また、患者に意識がない・判断力を持っていない場合を除き、本人を含めた家族・医師・看護師など、関係者全員がその判断に納得していることが求められます。

終末期の判断は、医療効果や余命に関する見通しをもとに、複数の医師が慎重に判断します。ご本人が抱える身体的・精神的な苦痛をできる限り軽減し、ご本人とご家族が残された時間をどのように過ごせるかが焦点となります。

終末期の方にみられる身体と心の変化

ここでは、終末期の方にみられる傾向を、身体と心の観点から解説します。

脈拍や呼吸などにみられる身体的な特徴

終末期になると、さまざまな身体的特徴が表れます。個人差はありますが、主に以下の症状がみられます。

呼吸 一時的に増加するが徐々に不規則・浅くなる
脈拍 一時的に増加するが徐々に遅くなる
体温 体温は下がり、手足が冷たく青白くなる
血圧 一時的に上昇することもあるがおおよそ急激に低くなる
意識レベル 傾眠傾向・呼びかけても反応が少ない
排泄機能 尿量の減少や失禁、便秘や便失禁
その他 浮腫・チアノーゼ・体重減少など

バイタルサイン(呼吸・脈拍・体温・血圧)の変化として挙げられるのは、初期は脈拍や呼吸数の一時的な増加です。時間が経つにつれ脈拍は徐々に遅くなり、呼吸は浅く不規則になる傾向があります。

体温が下がり、手足が冷たくなったり青白くなったりすることもあります。心機能の低下に伴い、血圧の低下も見られます。

また、徐々に周囲の呼びかけにも反応することが減っていきます。特にがん患者さまの終末期では「傾眠傾向」と呼ばれる意識障害が現れることがあります。傾眠傾向について詳しく知りたい方は、別記事「傾眠傾向とは?原因や自宅での対応法について解説」をご覧ください。

さらに、食欲不振や水分摂取量の減少により体重が減少し、筋力の低下や栄養不足による免疫力の低下など、身体機能の維持が難しくなります。

死の受容という心理的な変化

終末期の方は、病気の進行とともに「死の受容」という心理的な変化を経験します。一般的に以下の5段階をたどります。

  1. 否認:死期が迫っていることにショックを受け、その事実を認められない
  2. 怒り:事実を受け入れたが、「なぜ」という思いが強く怒りがこみ上げる
  3. 取り引き:どうにか死を回避・先延ばしにしたく神仏にすがる、善行を行うなど
  4. 抑うつ:死を避けられず落ち込み、虚しさや絶望を感じ抑うつ症状となる
  5. 受容:死を受け入れることができ、心穏やかに最期までの時間を過ごす

これはキューブラー・ロス博士が提唱した「死の受容の5段階モデル」というもので、重要な理論的枠組みですが注意点もあります。このプロセスは個人によって大きく異なり、必ずしも順序通りに進行するわけではありません。各段階を複数回経験する方もいれば、特定の段階を全く経験しない方もいます。また、各段階にかかる時間も人によってさまざまです。特に「受容」の段階については、すべての方がこの段階に達するわけではなく、また「受容」は、必ずしも完全な平穏や安らぎの状態を意味するものではありません。

この「死の受容」はひとつの例として、ご本人の周囲に対する態度や表出する心情の変化を理解する参考としてください。

また、死を受容するにあたってスピリチュアルな支援(人生の意味や死生観に関する悩みに寄り添うケア)が求められる場合もあります。まずはご本人の話に耳を傾け、共感することが大切です。

終末期を対象としたケアの内容・方法

終末期の方に行われるケアの内容・方法には、以下のようなものがあります。なお、こちらで紹介するのはあくまでも一例です。

ケアの種類 ケアの内容・方法 主体者
身体的ケア・精神的ケア 身体的な苦痛の緩和
鎮痛剤や鎮静剤の投与、マッサージ、リラクゼーション法などを行い、痛みを和らげる栄養管理
食事形態の工夫や経管栄養などにより、水分補給や栄養状態の維持をはかる精神的な苦痛の緩和
症状に合わせた薬物療法や非薬物療法を行う。必要に応じて専門的な治療も検討する
医師・看護師(緩和ケア専門の医療従事者がいる場合も)
スピリチュアルケア 傾聴と寄り添い
死への不安や家族への心配など、患者のネガティブな感情に耳を傾け、共感し受け止めるリラックスできる環境の提供
好みの音楽や思い出の品を用意する
医師・看護師・家族・臨床心理士(病院によっては病院付牧師など)
社会的ケア 経済的不安の解消
医療費軽減策や支援制度の情報提供を行う遺産相続・遺品整理のサポート
司法書士や行政書士など専門家が中心となり、遺産相続や遺品整理のサポートを行う家族の悩み相談対応
家族の精神的な負担を軽減するため、相談に対応する
ソーシャルワーカー・ケアマネジャー・司法書士などの専門家

終末期におけるケアの内容について詳しく知りたい方は、別記事「ターミナルケア(終末期医療)とは?人生の最期を穏やかに過ごすためのケア」をご覧ください。

終末期の方に対して家族ができること

終末期医療は、人生の最終段階を穏やかで充実したものにするための大切なケアです。家族として何ができるか考える一方で、大切な人の死期が近づいているという現実は、精神的に大きなショックと悲しみを引き起こします。まずは、ご本人の現状を受け入れ、自身の感情を整理することが重要です。

次に、大切なご家族が穏やかに最期を迎えられるよう、心身の両面から支える方法について考えてみましょう。ここでは、終末期の方に対して家族が実践できる具体的なケアについて、以下の6つのポイントを紹介します。

  1. そばに寄り添いともに過ごす時間を大切にする
  2. 気持ちに寄り添い変化を理解する
  3. 快適な環境を整えリラックスできる空間をつくる
  4. 意思を尊重し最期まで支える
  5. 終活をサポートし不安を軽減する
  6. 家族自身のケアも忘れない

1.そばに寄り添いともに過ごす時間を大切にする

終末期の方にとって、精神的な安定はとても重要です。家族が側にいるだけでも安心感をもたらします。できるだけ一緒に過ごし、普段の生活をともにすることを意識しましょう。

これまでの人生を振り返りながら、楽しかった出来事や大切な記憶、共有している思い出を語り合うことで、気持ちを整理する手助けになります。手を握る、背中をさするなどのスキンシップは、言葉にできない想いを伝え、安心感を与えます。一緒に食事をしたり、テレビを見たりと、普段どおりの生活を送ることで、穏やかな時間を作ることができます。

2.気持ちに寄り添い変化を理解する

「死の受容モデル」の章でご説明したように、終末期を迎える方の気持ちは時間の経過とともに変化することがあります。不安や怒り、抑うつなどさまざまな感情が表れるかもしれません。その気持ちに寄り添い、理解することが大切です。ご本人が不安になったり怒ったりしたときは否定せず受け止め、言葉に耳を傾けましょう。

「辛いんだね」と共感することもケアのひとつです。気分が落ち込んでいる場合は、無理に励まさず、側にいるだけでも安心につながることを意識しましょう。

3.快適な環境を整えリラックスできる空間をつくる

身体的な負担が大きくなる終末期では、快適な環境を整えることが重要です。必要に応じて訪問看護や介護サービスを活用し、安全で清潔な生活空間を保ちましょう。

ご本人の好きな音楽を流したり、思い入れのある写真やお気に入りのものを周囲に置くことで、心地よい時間を過ごせるようにします。

4.意思を尊重し最期まで支える

治療方針や終末期医療の進め方については、ご本人の意思を最大限尊重しながら、ご家族そして医療従事者で協議することが重要です。

ご本人がどのように最期を迎えたいのか、どのような医療を望んでいるのかを確認し、医療チームと共有します。身体的に辛い状態で意思表示が難しい場合、家族が代わりに医療従事者へ意向を伝える役割を果たします。

5.終活をサポートし不安を軽減する

終末期の方は、死後のことに不安を抱くことが少なくありません。そのため、終活を支えることで安心感を与えられます。

エンディングノートでこれまでの人生を振り返り、ご自身の気持ちを整理する機会になります。葬儀の準備や財産整理を手伝うことで、ご本人の不安を和らげ、落ち着いた気持ちで最期を迎えられるよう支えることができます。

6.家族自身のケアも忘れない

大切な人が段々と弱っていく姿を見守ることは、家族にとっても精神的・肉体的に大きな負担がかかります。けして無理をせず、よく休み、時には気分転換もして自分自身のケアも大切にしましょう。

また家族だけですべてを抱え込まず、心配や悩み事があれば主治医や看護師、ソーシャルワーカー、カウンセラー、地域包括支援センターなどのチームに相談することも有効です。

終末期をともに過ごされたご家族のエピソード

当社が運営するReHOPEは、主に終末期の方を対象に看護・介護を提供するホスピス型住宅です。最後に、ReHOPEにて終末期を過ごされた方と、そのご家族のエピソードをいくつか紹介します。

怒りや悲しみを乗り越え家族と夢を叶えたSさま

(71歳:ALS)

71歳でALSを患ったSさまはご入居後、徐々に呼吸困難感が強くなり、ナースコールも頻回になりました。自身の気持ちをうまく伝えられず、もどかしさを抱えながらスタッフや配偶者さまに当たることも多くありました。

ある日、車いすに乗ることをスタッフが提案すると「乗りたい」と希望され、大変喜ばれました。すると「車いすに乗ることができた」というひとつの達成感から、あきらめかけていたご本人の想いが表出されるようになりました。

「妻の作った焼きそばが食べたい」、「外の景色が見たいからベッドの向きを変えてほしい」など、一つひとつにご家族とスタッフで向き合い、そのシーンを写真に収めることで笑顔が増えていきました。そのうち「自分のカメラで遺影写真を撮るのが夢なんだ」と語られました。

最終的には息子さまの手で遺影写真を撮影。その2週間後、ご家族が見守るなか、静かに旅立たれました。

最期のときを受け入れ自分らしく過ごしたKさま

(70代:脳腫瘍)

Kさまは社交ダンスが好きでオシャレにこだわりのある方でした。抗がん剤の副作用が強く出たため投与を停止。日に日に動けなくなり、会話も難しくなりました。「話す言葉が出ない、辛い、分かってもらえない」「手も自分で洗えない」「トイレも自分でできなくなるのが辛い」など、涙を流されることが増えました。

これらを看護師やケアマネジャーなど多職種のスタッフ、ご家族で共有し、あるスタッフは、声にならないほど泣かれるKさまを抱きしめました。また、時には大好きなビールを飲んでいただき笑顔になるのを待ちました。元気がないときはお気に入りの口紅を塗ったり、車椅子もぴったりのものが見つかるまで探したりと、Kさまが自分らしく過ごせる環境を整え、気持ちに寄り添いました。

エンゼルケア(亡くなった方に最後に施すケア)はご本人の意向で、娘さま、息子さまのご協力のもと社交ダンスのお気に入りのドレスを着てメイクを施すことができました。スタッフ一同が、Kさまの気持ちを考えてケアをしたこと、ケアマネジャーをはじめ、多職種によるアプローチ、何よりご家族の協力のもと、最期までKさまらしく生きる時間に寄り添うことができました。

人生の締めくくりを家族と決断したAさま

(78歳:胃がん末期)

Aさまは、ご入居された時点であまり時間の猶予はない状態でしたが、ご家族は愛情深く配偶者さまは「一日でも長く生きていてほしい」と切望されていました。入居直後から状態の変化が著しく、ご家族は戸惑われながらも、Aさまの変化をよく理解するよう努力されていました。

しかし、点滴についてAさまとご家族の間で意見の相違がありました。Aさまは以前、点滴によって状態が改善したことがありました。ご家族は「今回も回復するのではないか」という望みを抱いており、点滴を希望されました。しかしAさまは、強い意思で点滴を拒否されたのです。スタッフはその旨をご家族にお伝えし、ご家族は皆で話し合われていたようです。

深く悩まれた娘さまから「どうしたらいいのか」と相談された看護師は、「誰の人生で、誰が自分の人生の締めくくりに対して意思表示をされているのかを考えていただきたいです。また『点滴をしていたらもう少し生きていてもらえたかも』『点滴をしたから苦しませてしまったのかも』といったように、本人の意思に沿ってもご家族の意見を通しても、どちらにしても後悔することはあり得るでしょう。どちらの後悔を取るにせよ、ご家族でよく話し合っていただきたいです」とお伝えしました。

翌日、娘さまから「家族会議をし、母の希望に沿うことになりました」と報告を受けました。点滴をしないという選択は、ご家族にとってかなり厳しい決断であったと思います。Aさまは数日後、ご家族に看取られながらご逝去しました。エンゼルケアは配偶者さま、娘さま、お孫さまと一緒に行い、Aさまがご自身が作られた洋服を身にまといお帰りになられました。

まとめ

終末期を迎えると、身体機能の衰えや精神的な不安定さだけでなく、家族や周囲との関係にも変化が生じます。大切なのは、できる限りご本人の意思を尊重し、医療スタッフや介護チームと連携しながら適切なケアを選択していくことです。

本記事では、終末期に起こりうる症状や心の葛藤、そして家族ができるサポートを具体的に解説しました。誰にでも訪れる終末期、少しでも心を惑わせすぎることなく過ごすための手がかりを得ていただければ幸いです。

よくある質問

終末期とはどういう状態?

終末期とは、病状が進行し、治療による病気の回復が難しいと複数の医師が判断した状態を指します。延命そのものよりも、ご本人が感じる身体的・精神的な負担を可能な限り軽減し、生活の質を維持することが重視される時期です。

詳しくは記事内「終末期(ターミナル期)とは」をご覧ください。

終末期の方に見られる傾向は?

脈拍や呼吸数の増加、食欲不振などの身体的な特徴が挙げられます。また、怒りや抑うつといった心理的な変化が現れることもあります。

詳しくは記事内「終末期の方にみられる身体と心の変化」をご覧ください。

終末期の方に対して家族ができることは?

ご家族は、ご本人が最期まで自分らしくいられるよう、さまざまな面でサポートができます。気持ちに寄り添いながら不安を軽減することや、エンディングノートを活用した心と身辺の整理を手伝うことができます。

詳しくは記事内「終末期の方に対して家族ができること」をご覧ください。

ホスピス型住宅「ReHOPE」では終末期のケアを提供しています

当社が運営するReHOPEは、終末期の患者さまを対象に医療依存度の高い方のニーズに応えた看護・介護を提供するホスピス型住宅です。がん末期や神経難病などの重度の病状にあるご入居者さまに対して、緩和ケア、人工呼吸器管理、経管栄養など、病状に合わせた医療的ケアを提供します。

ReHOPEは、看護師や介護職が常駐しているため、質の高いサービスが受けられることはもちろん、病院型のホスピス(緩和ケア病棟)と比べて自由度の高い生活環境が特徴的です。そのため、患者さまの希望や思いに柔軟に対応できます。

常駐スタッフが日常生活のサポートから医療ケアまで、一人ひとりに寄り添ったケアを行うことはもちろん、地域の医療機関や多職種と連携して行う心身のケアなど、総合的なサービスを提供しています。

ご入居をお考えの方には見学案内も行っておりますので、お気軽にお問い合わせください。

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