ホスピス型住宅のReHOPE | ホスピス・介護の基礎知識 | ホスピスの基礎知識 | 在宅人工呼吸器の種類と費用、使い方は?使用時のポイントなどもあわせて解説
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在宅人工呼吸器とは、呼吸器疾患や神経筋疾患の方がご自宅で生活を送れるように呼吸をサポートする医療機器です。在宅人工呼吸器の導入を考える際に、生活が大きく変わるのではと不安を感じる方もいるかもしれません。
しかし、導入後は医療機関や訪問看護、介護サービスなどの支援によって、ご本人やご家族の負担を減らし、安心して日常生活を過ごすことが可能です。
本記事では、在宅人工呼吸器の種類や費用、使い方、利用できる支援制度についてわかりやすく解説しています。ぜひ最後までご覧ください。
在宅人工呼吸器とは、自力で十分な呼吸が難しい方、換気補助が必要な方に対し、人工呼吸器による補助換気を行う医療機器です。
酸素の取り込みと二酸化炭素の排出を助け、患者さんの呼吸を支援する機能を持っています。自宅で人工呼吸器を使用して呼吸管理を行う医療処置を「在宅人工呼吸療法(Home Mechanical Ventilation:HMV)」と言います。
近年、人工呼吸器の小型化や性能の向上、在宅医療体制の整備により、長期の人工呼吸管理が必要な患者さんでも、入院せずに自宅で療養することが可能になってきました。普段どおりの生活を営みながら、自宅で呼吸器を使った医療措置を受けられるようになったのです。
この治療を受けるには以下の条件を満たす必要があります。
「自宅で人工呼吸器を使うのは大変では?」と不安に感じるかもしれません。しかし、医師や看護師など、さまざまな専門家がご本人やご家族を支えていきますので、ご安心ください。
人工呼吸器は、呼吸器自体や呼吸する筋肉・それをつかさどる神経に問題がある方の呼吸運動自体を補助する役割があり、主に次のような問題をかかえる方に適用されます。
具体的には以下のような病気の方が利用しています。
人工呼吸器には、マスクを使用するNPPV(Noninvasive Positive Pressure Ventilation:非侵襲的陽圧換気療法)と、気管切開を行い呼吸の補助をするTPPV(Tracheostomy Positive Pressure Ventilation:侵襲的陽圧換気療法)の2つのタイプがあります。
それぞれの特徴やメリット・デメリットを詳しく解説します。
NPPVは鼻と口、または鼻のみを覆うマスクを装着し、人工呼吸器の補助を受ける方法です。意識がはっきりしており自発呼吸・排痰ができる状態の方が使用できます。
内容 | |
特徴 | 鼻や口を覆うマスクを装着して人工呼吸器を使用する |
対象になる主な病気 | 神経筋疾患、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、肺結核後遺症、肥満低換気症候群、後側弯症 |
メリット | ・気管切開をしないため、体の負担が少ない
・食事や会話が可能 |
デメリット | ・マスクの装着部位に皮膚トラブルが起きやすい
・口呼吸やマスクの隙間によって、呼吸のサポートが不十分になることがある |
TPPVは、気管に孔をあける気管切開をおこない、気管カニューレという管を挿入して人工呼吸器とつなぐ方法です。これにより、安定した呼吸の管理が可能になります。
TPPVの導入は、NPPVを導入している方が自力で排痰できないなど、呼吸障害が進行した場合に検討されます。
内容 | |
特徴 | 気管切開をおこない、気管カニューレと人工呼吸器をつないで呼吸を管理 |
対象になる主な病気 | 神経筋疾患、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、肺線維症・間質性肺炎、肺結核後遺症、後側弯症 |
メリット | ・24時間安定した呼吸管理が可能
・呼吸の状態にあわせた細かい調整が可能 |
デメリット | ・痰の吸引が必要
・皮膚トラブル ・感染のリスクがある ・発声や飲食に制限が生じる可能性がある ・1〜2カ月おきに気管カニューレの交換が必要 |
在宅人工呼吸器は医療保険が適用されるため、ご本人の負担額は1割〜3割程度です。月々にかかる費用は「在宅人工呼吸指導管理料」+「人工呼吸器加算」の合計額となります。
以下に、在宅人工呼吸器にかかる負担額をまとめました。
点数 | 1割 | 2割 | 3割 | ||
在宅人工呼吸指導管理料 | 2,800点 | 2,800円 | 5,600円 | 8,400円 | |
人工呼吸器加算 | NPPVを利用している方 | 6,480点 | 6,480円 | 12,960円 | 19,440円 |
TPPVを利用している方 | 7,480点 | 7,480円 | 14,960円 | 22,440円 |
出典:厚生労働省「診療報酬の算定方法の一部を改正する告示(令和6年厚生労働省告示第57号)別表第一」
たとえば、TPPVを利用している場合、1カ月の負担額は次のとおりです。
【自己負担例(月額)】 | |||
自己負担割合 | 1割 | 2割 | 3割 |
在宅人工呼吸指導管理料+ 人工呼吸器加算(TPPVを利用している方) |
10,280円 | 20,560円 | 30,840円 |
なお、医療保険についての詳細は「訪問看護とは?サービス内容や利用方法について解説」の記事で詳しく解説していますので、ぜひご覧ください。
上記で説明した、在宅人工呼吸器の費用はあくまでも最低限の医療費です。実際には以下の費用が発生する可能性があります。
これらを含めると、月々の支払いが高額になってしまうかもしれません。費用負担を軽減するために、公的な助成制度を積極的に活用しましょう。
たとえば、吸引器やパルスオキシメーターなどは、在宅療養等支援用具として自治体から一部補助が出るケースもあります。自治体により補助金額は異なるため、お住まいの自治体の窓口にお問い合わせください。
在宅人工呼吸器を使用する方は、レンタルや購入が必要な機器や消耗品が多く、経済的な負担が大きくなりがちです。助成が受けられる制度を知り、うまく活用して費用の負担を軽減しましょう。
以下に、費用負担を減らすために利用できる制度をまとめました。
「指定難病」とは、国が定める「治療が難しく、長期間の医療が必要な希少な病気」です。難病情報センターによると、令和6年4月時点で341の病気が指定難病に認定されています。この制度により指定難病に認定された方が、医療を継続できるように医療費が助成されます。
特に、指定難病で在宅人工呼吸器を装着した場合は、所得に関係なく医療費の自己負担の上限額が月額1,000円になるため、対象の方は必ず申請をしましょう。申請方法などは、下記の「難病情報センター」に掲載されています。
出典:難病情報センター
「高額療養費制度」とは、1カ月の医療費の自己負担額が一定額を超えた場合、超えた金額が後から払い戻される制度です。
ただし、マイナンバーカード(健康保険証の利用登録を行っているもの)もしくは限度額認定証(事前に健康保険組合に申請するもの)を医療機関の窓口で提示することで、最初から支払う額を自己負担の限度額に抑えることができます。
なお、70歳以上の方は、限度額認定証がなくても健康保険証と高齢者受給者証を窓口で提示することで、支払が自己負担の限度額に抑えられます。
「高額介護合算療養費制度」とは1年間(毎年8月1日から翌年の7月31日)の医療費と介護費の自己負担額の合計が、一定を超えた場合に支給される制度です。
いずれも健康保険組合・国民健康保険・後期高齢者医療制度の保険者が利用できます。該当される方は、申請を忘れずに行いましょう。
高額医療費制度については「ホスピスの費用はどれくらい?平均相場や入居条件についても徹底解説」の記事で詳しく解説していますので、ぜひご覧ください。
出典:厚生労働省「高額療養費制度」
出典:内閣府「高額介護合算療養費制度」
在宅人工呼吸器を使用する方を支援するため、各自治体が訪問看護の費用を負担する制度があります。在宅人工呼吸器を使用している方は、訪問看護について週4回以上可能など、必要であれば通常の訪問介護より多く利用することが可能です。
以下に当てはまる方が対象となります。
各自治体が負担する金額は4,800円〜8,000円と異なります。たとえば、東京都では訪問看護1回につき8,450円が支給されます。自治体ごとに支給内容が変わるため、お住まいの自治体の窓口で確認してください。
出典:東京都保険医療局「在宅人工呼吸器使用難病患者訪問看護事業」
人工呼吸器を使用する場合、状態によっては障害者総合支援法の対象となり、身体障害者手帳の取得が可能です。身体障害者手帳は等級で分かれており、障害の程度を示しています。呼吸器機能障害の場合1級〜4級があり、それぞれ予測肺活量や血中ガス量、医師の所見を基準に認定されます。
申請する際は以下の書類を自治体の福祉課に提出します。
※住民票や印鑑が必要な場合があります。
申請後、交付までは1~2カ月かかります。詳しくはお住まいの地域の福祉担当窓口にお問い合わせください。認定されると以下のような支援を受けられます。
また、自治体によっては独自の支援制度を設けている場合があります。詳細はお住まいの自治体の窓口で確認しましょう。
医師が在宅人工呼吸器の使用を提案しても、すぐに在宅療養が始まるわけではありません。医療機関や医療機器メーカーによるトレーニング期間があり、ご本人やご家族が安心して在宅で過ごせるよう準備を整えます。
在宅療養が始まったあとも、医師や看護師、医療機器メーカーによるサポートは継続されます。不安や疑問を感じたら、遠慮せずに相談していきましょう。
在宅人工呼吸器を使用すると日常生活に変化がありますが、必ずしも寝たきりになるわけではありません。状態が安定していれば車椅子乗車や外出もできるでしょう。
変化の程度は、使用する人工呼吸器の種類によって異なります。マスクを利用するNPPVは比較的自由度が高く、食事や会話が可能です。
一方、気管切開をおこなうTPPVは、会話や食事に制限が出る場合があります。吸引や切開部のケアも必要なため、介護度が高く感じるかもしれません。
抱え込みすぎないように、訪問入浴や訪問介護などのサービスをうまく活用するとよいでしょう。
訪問看護と訪問介護について詳しく知りたい方は別記事「訪問看護と訪問介護の違いは?両方を使うことはできる?サービス内容を詳しく解説」をご覧ください。
日常生活を過ごすうえで、気を付けるべき点をまとめました。以下でひとつずつ説明していきます。
人工呼吸器の周辺は、安全で使いやすい環境を整えることが大切です。設置の際は、医師から指示を受けた医療機器メーカーがご自宅を訪問し、人工呼吸器を適切な場所に配置します。
人工呼吸器は安定した平らな場所で、電源に近い場所に置くのが基本です。不安定な場所では落下や誤作動の原因になりますので、注意してください。
また、やむを得ず延長コードを使用する場合は、コードが絡まったり抜けたりしないよう固定し、他の電化製品との併用は最低限にしましょう。人工呼吸器は電源が切れると機能しないため、コンセントが抜けていないか、電力が供給されているか定期的な確認が必要です。
気管切開を行うTPPVの場合は、定期的な吸引が必要になります。看護師や介護士の不在時はご家族が対応する場合もあるでしょう。
また、排痰を促すために加湿の調整や体位の調整などの工夫を行い、呼吸状態を管理する必要があります。
いずれも導入前のトレーニングで指導がありますが、不安な点があれば訪問看護師に相談しながら少しずつ慣れていくと良いでしょう。
人工呼吸器は精密機器のため、日常的な点検と専門家の定期的な点検が欠かせません。日々の点検を習慣づけることで、異常に早く気づき、適切な対処ができるでしょう。医療機関からチェックリストが渡されるので、日々の点検に活用しましょう。
主なチェックポイントは次のとおりです。
ご本人の容態が急変したり、人工呼吸器に不具合が生じた場合、専門家の到着までご家族が対応しなければいけない可能性があります。あらかじめ看護師と対応手順を確認し、練習しておくことが大切です。
日頃から備えておくことで、いざという時も落ち着いて行動ができるでしょう。定期的に練習をしておくと安心です。
停電時には、人工呼吸器以外にも加温加湿器や吸引器などの電力が必要になります。非常用電源については、人工呼吸器自体のバッテリーだけでは足りなくなる場合もあるため、可能な限り準備しておきましょう。
通常の災害対策に加え、人工呼吸器のための準備が必要になります。
災害時の対応については、医療スタッフと定期的に確認し、必要な備えを点検してもらいましょう。また、人工呼吸器の非常時の扱いについては、医療機器メーカーから指導を受けておくと安心です。万が一に備え、日頃から準備を意識しておくことが大切です。
訪問診療医や訪問看護師、医療機器メーカーも一緒に管理や点検を行うため、ご本人やご家族だけですべてを抱え込む必要はありません。専門職と連携しながら、少しずつ理解を深めていくことが大切です。
また、トラブルや不明点があれば、訪問診療医や訪問看護師などに相談しましょう。
人工呼吸器を使用する場合、自宅だけでなく医療体制が整った施設に入居する選択肢もあります。ご本人の状態によっては、食事や排泄、入浴など24時間のケアが必要になるケースもあり、ご家族のサポートが欠かせません。
特に気管切開をおこなうTPPVの場合、夜間も呼吸状態の確認や吸引が必要になる可能性があります。人工呼吸器を受け入れている施設では、24時間看護師や介護士が常駐し、適切な医療サポートを受けながら生活できます。
たとえば、当社の運営するホスピス型住宅ReHOPEでは、人工呼吸器を使用している方の受け入れを行っています。ホスピス型住宅の他にも、介護付き有料老人ホームや特別養護老人ホーム、介護医療院などがあります。それぞれの施設の詳細は別記事「老人ホームの種類と特徴を比較!費用・介護度別の選び方」をご覧ください。
すぐに入居を考えなくても将来的な選択肢のひとつとして、施設の情報を知っておくと安心でしょう。気になる場合は、看護師やケアマネジャーに相談してみてください。
在宅人工呼吸器は、自力での呼吸が難しい場合に使用する医療機器です。適切に利用することで、住み慣れた環境で必要な医療処置を受けながら、安心して過ごすことができるでしょう。
一方で、医療依存度が高くなり、24時間のケアが必要となるケースもあります。医療制度を活用しながらご本人やご家族にとって、最適な環境を考えていくことが大切です。
在宅人工呼吸器とは、以下の状態の方に適用されます。
詳しくは記事内「在宅人工呼吸器とは」をご覧ください。
在宅人工呼吸器は主に2つの種類があります。
詳しくは記事内の「在宅人工呼吸器の種類」をご参照ください。
月々にかかる費用は「在宅人工呼吸指導管理料」+「人工呼吸器加算」の合計額となります。また、医療保険が適用されるため、実際のご本人の負担額は1割〜3割程度です。
詳しくは記事内の「在宅人工呼吸器にかかる費用」で解説しています。
ReHOPEは、がん末期や難病を抱える方々のためのホスピス型住宅です。医療・介護の専門スタッフが24時間365日体制で常駐し、「自宅のような環境」でご入居者さまが自分らしい生活を送れるようサポートしています。
2024年11月末時点で、130名の人工呼吸器使用者がReHOPEでの生活を送っています。2023年9月からは「人工呼吸器」をテーマとした専門研修を実施し、移動や食事などの日常動作の支援について、スタッフの専門性を高めています。
ReHOPEの特徴は、常駐スタッフによる日常生活支援から医療的ケアまで、ご入居者さまのニーズに合わせたきめ細やかなサポートを提供することです。また、地域の医療機関や多職種との連携により、心と身体の両面に対する総合的なケアを実現しています。
「ホスピス型住宅の生活は?入居後の暮らしを写真で紹介」のページでは、実際の施設での過ごし方を紹介しています。施設の見学も随時受け付けていますので、お気軽にお問い合わせください。
ReHOPEでは、一緒に働く仲間を募集しています。
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