ホスピス型住宅のReHOPE | ホスピス・介護の基礎知識 | 病気を知る | COPD(慢性閉塞性肺疾患)とは?症状や治療法から利用できる各種制度・施設についても解説
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この記事の監修者

河合 章子(かわい しょうこ)
株式会社シーユーシー・ホスピス 運営本部 運営支援室 ケア技術向上推進チーム
プロフィール
1997年から東海大学医学部付属病院で22年間勤務。2005年に集中ケア(現:クリティカルケア)認定看護師資格取得。大学病院では集中治療室(ICU)や救命救急センターに勤務。その間、臨床業務と並行し、RST(呼吸ケア回診)チーム立ち上げや認定看護師指導にも携わる。2019年、株式会社シーユーシー・ホスピスに入社後、ReHOPE 鷺沼勤務を経て、現在は緩和ケアや人工呼吸器ケア、言語聴覚士などがエキスパートとして施設支援を行うケア技術向上推進チームのリーダーとして勤務。
「COPD(シーオーピーディー)って何だろう?」「咳や息切れが続いているけれど、関係あるのかな?」そんな不安から、このページにたどり着いた方も多いと思います。
COPD(慢性閉塞性肺疾患)は、たばこの煙などの有害物質を長い間吸い込み続けることで、肺にじわじわとダメージが蓄積していく「肺の生活習慣病」です。日本には推定約530万人の患者さんがいると考えられているほど、身近な病気として広がっています。
この記事では、COPDの原因や症状、治療方法について、初めて「COPD」という言葉を聞いた方にもわかりやすく解説します。また、介護保険や高額療養費制度などの公的支援、利用しやすい介護施設の種類についてもご紹介します。
COPDとは、たばこの煙などに含まれる有害物質を吸い続けることで、気道・気管支や肺胞(酸素と二酸化炭素を交換する袋)に慢性的な炎症や損傷が起こり、呼吸がしにくくなる病気です。
COPDは「Chronic Obstructive Pulmonary Disease」の略で、日本語では「慢性閉塞性肺疾患」と訳されます。COPDを患うと、階段や坂道で息切れしやすくなったり、風邪でもないのに咳や痰が長く続いたりするなどの症状が現れます。
日本では「肺の生活習慣病」とも呼ばれ、40歳以上・喫煙歴のある方はとくに注意が必要です。厚生労働省によると、2024年にCOPDで死亡した人数は16,629人にまで上り、とくに男性の死亡の原因において11位と高い順位を記録しました。
なお、COPDを患っている40歳以上の日本人は推定530万人とされており、そのうちの多くが未診断・未治療と言われています。
出典:人口動態調査|厚生労働省
COPDの原因で最も大きいのは、「たばこ(喫煙)」です。
喫煙歴が長い場合は特にリスクが高いとされますが、短期間であっても喫煙歴があれば注意が必要です。
また、COPDの原因の約90%がたばこといわれていますが、その他の要因として以下のものが挙げられます。
たばこの煙を含むこうした有害物質を長年吸い込み続けることで、気道の炎症や肺胞壁の破壊が起き、COPDを発症してしまいます。
COPDが疑われるときは、かかりつけ医や呼吸器内科を受診します。主な診断の流れとその内容は、以下のとおりです。
また、COPDかどうかの診断を受ける基準として、以下のような自覚症状があれば早めの受診を検討してみてください。
一見よくある症状のため「年のせい」「体力が落ちただけ」と見過ごされがちですが、早期に見つけて治療を始めることが大切です。
COPDと肺気腫は、よく混同されやすい用語です。肺気腫は、肺胞の壁が壊れ、肺がスカスカに膨らんでしまう状態のことを指します。
2つの位置付けや症状や原因などについては、以下のとおりです。
| 名称 | COPD | 肺気腫 |
| 位置づけ | 肺気腫・慢性気管支炎・細気管支炎など肺の炎症性疾患の総称(診断名) | COPDの中に含まれる病型の一つ |
| 主な変化 | 気道が狭くなる、肺胞が壊れる | 肺胞の壁が壊れてスカスカに |
| 主な症状 | 息切れ、咳・痰、風邪が長引く など | 息切れが目立つ、胸が膨らんだようになる など |
| 原因 | 主に喫煙と大気汚染など | 主に喫煙(まれに遺伝要因) |
このように、肺気腫はCOPDのうちの一つだと覚えておくと分かりやすいでしょう。
COPDは「肺の病気」から始まりますが、進行すると全身にもさまざまな影響が出てきます。症状は少しずつ進むため、初期の変化を見逃さないことが重要です。
ここからは、COPDの初期症状から進行時の症状、合併症状まで詳しく解説します。
COPDの初期に見られやすい症状としてあげられるのは、主に以下のとおりです。
咳・痰は風邪でもよく見られますが、風邪が治っても長く続く場合や、息切れが生活の中で目立ち始めた場合は、COPDのサインかもしれません。また、喫煙習慣がある(あった)方や40歳以上の方はとくに見逃さないようにしましょう。
急性増悪(きゅうせいぞうあく)とは、安定していた病状が数日〜数週間で急に悪くなる状態のことを指します。COPDの急性増悪で見られる主な変化は、以下のとおりです。
COPDの急性増悪の多くは、風邪や肺炎などの気道感染や大気汚染によって起こります。急性増悪を繰り返すと、肺の機能が元の状態まで戻りにくくなり、階段を上がれないなど生活の質(QOL)が段階的に低下していくため、早めの対処が必要です。
とくに、「息切れが急にひどくなった」「いつもと違う苦しさがある」などの変化を感じたら、自己判断せず早めに医療機関を受診しましょう。
COPDがさらに進行すると、以下のような症状が出てきます。
重症になると、呼吸不全や心不全を起こし、在宅酸素療法や入院治療が必要になることもあります。そのため、些細なことでも、違和感を感じたら軽く考えずに早めに医療機関に相談してみてください。
COPDは肺の病気ですが、「肺だけの病気」ではありません。炎症が全身に広がることで、さまざまな合併症や併存症が起こりやすくなることがわかっています。
【肺合併症の例】
【全身併存症の例】
このほかにも、COPDの進行に伴い活動量や食事量が落ちると、筋力低下や骨粗しょう症、気分の落ち込みなども起こりやすくなります。そのため、COPDと診断された場合は、呼吸の治療だけでなく、これらの合併症も含めて総合的に管理することが重要です。
前提として、現在の医学では、COPDを完全に元通りに治す方法はありません。治療は、症状(息切れ・咳・痰)を軽くしたり、肺機能の低下スピードを遅らせたりする目的で行います。
COPDの主な治療方法としてあげられるのは、以下のとおりです。
出典:環境再生保全機構「COPDの基礎知識とセルフマネジメント」
以下ではそれぞれの治療方法について、詳しく解説していきます。
COPDの治療において最も重要で、すべての土台になるのが「禁煙」です。喫煙を続けると、確実に病気は進行します。COPDと診断された時点で禁煙することで、その後の肺機能の低下スピードを大きく抑えられることがわかっています。
ただし、喫煙習慣が長年ある方の中には、一人で禁煙するのが難しいケースもあるでしょう。その場合は、以下の専門的なサポートを受けることをおすすめします。
COPDの症状や重症度に応じて、さまざまな薬を用いた治療も行われます。主な薬物治療の例とその目的や特徴は、以下のとおりです。
| 薬物名 | 目的・特徴 |
| 気管支拡張薬
・LAMA(ラマ) ・LABA(ラバ) |
気管を広げて空気の通りを良くする |
| 吸入ステロイド薬 | 喘息を合併している場合や増悪を繰り返す場合など、気管支拡張薬に追加して使用する |
| 去痰薬(きょたんやく) | たんの症状を緩和させる目的で使用する |
| インフルエンザワクチン、肺炎球菌ワクチン | 感染症予防のために使用する |
これらの薬物を組み合わせて治療することで、COPD患者の日々の生活を支えていきます。
COPDを患うと、「息苦しいから動かない→筋力が落ちてさらに息切れしやすくなる」という悪循環に陥りやすくなります。その悪循環を断ち、運動機能や呼吸機能を維持するために行うのが、リハビリです。
リハビリで行う主な内容には、以下のような運動療法や栄養療法があげられます。
このような適切なリハビリにより、息切れがあっても「動ける体」を維持しやすくなり、生活の質の向上につながります。
COPDの症状によっては、以下のような治療が検討されることもあります。
| 治療名 | 目的 | 治療内容 |
| 酸素療法・人工呼吸器 | 普通の呼吸だけでは酸素が不足したり、呼吸不全になったりする場合に用いられる | 鼻カニューレやマスク型の装置で治療する |
| 外科手術 | 肺が膨張した場合、肺の容量を減らすために行われる | ダメージが強い部分を切除、または肺移植によって治療する |
なお、在宅で使える人工呼吸器について、別記事「在宅人工呼吸器の種類と費用、使い方は?使用時のポイントなどもあわせて解説」で解説しているので、あわせてご覧ください。
COPDは、一度患ってしまうと長く付き合っていかなければならない病気です。医療費や介護の負担を軽くするために、利用できる公的支援制度を知っておきましょう。
ここでは、代表的な公的支援制度として、以下の3つをご紹介します。
※制度の詳細や条件は、年齢・所得・自治体などによって異なります。必ず最新情報を自治体や医療機関でご確認ください
COPDは、介護保険サービスの対象となる特定疾病のひとつに含まれています。そのため、40〜64歳の方でも、条件を満たせば介護保険サービスを利用できる場合があります。介護保険で利用できる主なサービスには、以下があげられます。
なお、上記のサービスを受けるには、要介護度の認定を受ける必要があります。申請はお住まいの市区町村の介護保険窓口で行い、訪問調査や主治医意見書をもとに要介護度が決まる仕組みです。
要介護度認定については、別記事「要介護認定の受け方は?申請方法や必要書類、注意点について解説」と「要支援・要介護とは?どうやって認定される?7つの区分や使えるサービスを解説」で詳しく解説しているので、ぜひ参考にしてみてください。
高額療養費制度とは、1ヶ月(1日〜末日)にかかった医療費の自己負担額が所得などに応じた上限額を超えた場合、超えた分があとから払い戻される制度のことです。ここでいう「医療費の自己負担額」には、外来受診や入院、薬局での支払いが対象となります。
高額療養費制度を活用するには、原則として加入している健康保険(協会けんぽ・健康保険組合・国民健康保険など)へ申請が必要です。また、上限額は年齢・所得によって異なるため、事前に自治体に相談して確認してみてください。
COPDが進行し呼吸機能が一定の基準を下回った場合は、呼吸器機能障害として身体障害者手帳の交付対象になることがあります。身体障害者手帳が交付されることで受けられる主な支援は、以下のとおりです。
なお、受けられるサービスは障害の等級(1級・3級・4級など)によって決められます。等級の決定には、呼吸機能検査(肺活量や1秒率)や動脈血ガス分析などの結果が用いられます。
なお、詳しい条件や手続きは自治体ごとに異なるため、お住まいの市区町村の窓口や医療機関の医療相談室に確認してみてください。
COPDが進行してくると、自宅での生活を継続していくことが難しくなるケースがあります。そこで、医療や介護の面でサポートを受けられる施設への入居を検討する可能性があるでしょう。
ここでは、COPDの方が利用しやすい代表的な施設として以下の5種類をご紹介します。
それぞれサービス内容や利用料、入居できる条件などが異なるため、以下で詳しく確認してみてください。
介護医療院とは、日常的な医療と長期的な介護を一体的に受けられる公的な施設です。医師・看護師・介護職員が常駐していることが特徴で、医療ニーズの高い方にも十分に対応できます。
介護保険施設のため、施設の利用料は所得に応じた負担額となります。COPDが進み自宅での生活が難しく、継続的な医療管理が必要な方に適した選択肢のひとつです。
ホスピス型住宅とは、末期がんや神経難病など医療依存度が高い方が、生活の場として入居できる住宅型の施設です。施設によって異なりますが、在宅酸素療法・非侵襲的人工呼吸器などにも対応できるケースがあります。
費用も施設によって異なり、入居金が必要なホスピス型住宅や月額利用料のみのところなどさまざまです。COPDがかなり進行し、「できるだけ穏やかに、自分らしい暮らしを続けたい」という希望が強い方に選ばれています。
なお、ホスピス型住宅について詳しく知りたい方は、別記事「ホスピスとは?施設の特徴や病院との違い・対象者や費用について解説」をあわせてご覧ください。
介護付き有料老人ホームとは、民間の事業者が運営する施設で、24時間介護サービスを受けられます。介護職員が24時間常駐し、主に食事・入浴・排泄などの日常生活の介護サポートを行うのが特徴です。
あくまでも介護施設ではありますが、施設によっては医療機関と連携して、定期的な往診や緊急時の対応を行うところもあります。費用は公的施設より高めですが、サービスや設備の選択肢が多いことが特徴です。
在宅酸素療法を行いながら入居できるホームもあるため、COPDの方にとってひとつの選択肢になり得ます。
なお、老人ホームにもさまざまな種類があり、どこを選べばよいか悩んでしまう方もいることでしょう。老人ホームについてさらに詳しく知りたい方は、別記事「老人ホームの種類と特徴を比較!費用・介護度別の選び方」をあわせてご覧ください。
特別養護老人ホームとは、要介護3以上の重い介護が必要な高齢者が、長期に入所できる公的施設です。公的な介護保険施設であるため、費用負担が比較的抑えられます。
介護職員が24時間体制で介護を提供し、中には看護師が配置されている施設もあります。一方で、医療処置の内容によっては受け入れてもらえない可能性があるため、事前に相談しておきましょう。
特別養護老人ホームは、COPDが進行して常時介護が必要な状態になった場合の選択肢のひとつですが、入所待機者が多い地域もあるため、早めの情報収集が大切です。
なお、特別養護老人ホームについてさらに詳しく知りたい方は、別記事「特別養護老人ホームとは?サービス内容や入居条件、申し込みの流れを解説」をあわせてご覧ください。
サービス付き高齢者向け住宅は、バリアフリー構造の賃貸住宅に、安否確認や生活相談などのサービスが付いた施設です。基本的には自立〜軽度の要介護の方が対象で、自由度高く生活できる特徴があります。
医療依存度が高い場合は、必要に応じて外部の訪問介護・訪問看護・訪問診療などを組み合わせる必要があります。
症状が比較的安定しているCOPDの方で、一人暮らしが不安、見守りがほしいという場合に検討されることが多い施設です。
なお、サービス付き高齢者向け住宅について詳しく知りたい方は、別記事「サービス付き高齢者向け住宅とは?ホスピスや有料老人ホームとの違いについて解説」をあわせてご覧ください。
COPD(慢性閉塞性肺疾患)は、主に長年の喫煙などで起こる「肺の生活習慣病」で、息切れ・咳・痰などの症状が少しずつ進行する病気です。日本には推定約530万人の患者さんがいるとされますが、診断・治療を受けているのは一部にとどまっているとされています。
現時点では完治を目指した治療方法はありませんが、禁煙を含めた治療を行うことで生活の質の維持を目指すことが大切です。特に喫煙歴があり咳や息切れなどの自覚症状がある方は早めに呼吸器内科などに相談しましょう。
COPDは、たばこの煙などの有害物質を長期間吸い込むことで、肺の中の空気の通り道である気管支や肺胞に炎症や壊れが起き、空気の出し入れがしにくくなる病気です。咳・痰・息切れが少しずつ進み、ひどくなると日常生活にも大きな支障が出ます。詳しくは記事内「COPD(慢性閉塞性肺疾患)とは」をご覧ください。
初めは階段や坂道で息切れする程度ですが、進行すると少し動いただけで苦しい・安静時も息苦しいといった状態になり、呼吸不全や心不全を起こすこともあります。また、肺がん・心筋梗塞・骨粗しょう症など、さまざまな合併症につながるケースもあります。詳しくは記事内「COPD(慢性閉塞性肺疾患)の症状と合併症状」をご覧ください。
COPDを完治させる治療方法は現在ありません。その上で、禁煙や薬物治療、リハビリなどで症状を軽くし、病気の進行を遅らせることが必要です。詳しくは記事内「COPD(慢性閉塞性肺疾患)の治療方法」をご覧ください。
ReHOPEは、COPD(慢性閉塞性肺疾患)の患者さまが安心して過ごせる場所としておすすめです。
医療・介護の専門スタッフが 24時間体制で呼吸状態の管理や日常ケアを行うため、日常生活のサポートだけでなく、酸素療法や吸引などの医療処置にも対応できます。
ReHOPEは全国各地に施設を展開しており、ご自宅から近くの施設を選ぶことが可能です。入居見学も随時受け付けているため、ぜひお気軽にお問い合わせください。