ホスピス型住宅のReHOPE | ReHOPEマガジン | ホスピスの基礎知識 | ターミナルケア(終末期医療)とは?人生の最期を穏やかに過ごすためのケア
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この記事の監修者
須貝 淑子
株式会社シーユーシー・ホスピス 緩和ケア認定看護師
プロフィール
病院勤務を経て2016年に緩和ケア認定看護師の資格を取得。2022年CUCホスピスに入社。緩和ケア病棟での臨床経験を活かし、ホスピス型住宅 ReHOPEにおいても、ご入居者さま・ご家族へのケア実践とケアの質を高めるためのスタッフ教育に取り組む。
ターミナルケアとは、治療による病気の回復が難しいと複数の医師が判断した場合に行われる医療やケアのことを指します。終末期医療と呼ばれることもあります。
がんに限らず、さまざまな病気が対象となります。ターミナルケアの目的は、尊厳を守りながら残された時間を質の高い生活で過ごせるよう支援することです。
具体的には、身体的苦痛を和らげるだけでなく、精神的、社会的、スピリチュアルな苦痛への支えを提供することが重視されます。日々の生活状況を観察し、できる限り苦痛を取り除きながら、趣味の活動や大切な人との交流など、その人らしい生活を支え、希望に添った最期を迎えられるよう行われるケアを指します。
ターミナルケアと似た言葉で、「緩和ケア」、「ホスピスケア」があります。それぞれの特徴をご紹介します。
ターミナルケア | 緩和ケア | ホスピスケア | |
目的 | 残された日々を穏やかに過ごす | 痛みなどの苦痛を取り除く、QOL向上 | 全人的なケア(総合医療) |
治療 | 行わない | 行う場合もある | 延命治療は行わない |
対象疾患 | さまざまな病気 | がん、エイズなど | がん、エイズなど |
従来、こうしたケアは治療が出来なくなってから始められるものでしたが、近年は病気の診断と同時に徐々に行われるべきだと考えられるようになり、緩和ケアとホスピスケア、ターミナルケアの区別が難しくなってきました。
日本医師会は、ターミナルケア、ホスピスケアは緩和ケアの一環として位置づけ、「患者が遠くない時期に死に至ることを前提に治療方針を決める時期」にターミナルケアが行われると定義しています。
◼️近年の緩和ケア・ターミナルケア・ホスピスケアの認識
出典)WHO 「Expect Committee on Cancer PainRelief and Active Supportive Care & WHO,1990」2016
参考 公益社団法人 全日本病院協会_終末期医療に関するガイドライン 厚生労働省_人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン |
終末期にある方の病状や生活状況を観察し、苦痛や不安を取り除くことが大切です。その方が自分らしく最期を迎えられるようサポート・ケアをすることで、具体的なケアには以下の3種類があります。
ターミナル期にはさまざまな身体的・精神的症状が現れます。主な症状として以下がみられます。
<以下は死期が近づいてくるとみられる症状>
これらの症状に対して、医療従事者は主に痛みなどの身体的苦痛の緩和と栄養補給を中心に身体的・精神的ケアを行います。苦痛緩和では、鎮痛剤や鎮静薬の投与、マッサージやリラクゼーション法の実施などが行われます。適切な薬剤調整により、可能な限り苦痛を和らげることが重要です。栄養補給では、食形態の工夫(細かく刻むなど)や経管栄養などにより、水分補給や栄養状態の維持をはかります。死期が近づいてくると栄養や点滴投与はかえって体の負担になるため、全身状態を見ながら検討します。
また、症状に合わせて適切な体位ドレナージ(痰を出しやすくする排痰援助)や皮膚ケア、口腔ケアなども行われます。身体的ケアでは、残された時間をできる限り苦痛なく過ごせるよう、患者様の状態に合わせた最適な支援を行うことが重要とされています。
精神的苦痛に対しては症状に合わせた薬物・非薬物療法を行うとともに、患者様の状況をみながら専門的な治療も検討されます。
終末期におけるスピリチュアルケアでは、寄り添い、傾聴することが大切です。死への不安や残されるご家族への心配など、ご本人のネガティブな感情に耳を傾け、共有し受け止めることが求められます。
ご本人と同じくご家族も精神的につらい状況にあるため、ときにはソーシャルワーカーや心理カウンセラーなどの専門職に相談することもひとつの方法です。また、ご本人がリラックスできる環境を提供することも重要です。好みの音楽や思い出の品を用意したり、自宅と同様の雰囲気づくりをしたりすることで、心地よい空間を用意できます。
終末期には、治療費を含めた経済的不安や遺産相続、遺品整理などの社会的課題が生じます。患者様は「家族に負担をかけてしまう」と精神的にも参ってしまいがちです。こうした問題を予防・解決するため、医療ソーシャルワーカーとご家族が協力し、心理的・社会的援助を行うことが重要になります。具体的には、ソーシャルワーカーが中心となり、医療費軽減策や支援制度の情報提供、遺産相続・遺品整理のサポート、ご家族の悩み相談対応などを行います。経済的・精神的負担を軽減し、良好な環境で最期を過ごせるよう配慮するのが、社会的ケアの大切なポイントです。
ターミナルケアを受けられる場所は、病院や自宅、施設などがあります。それぞれの特徴は以下のようになっています。
病院でのターミナルケアは、急変時に迅速な対応が可能で、医療スタッフによる専門的なケアを受けられる、相談しやすい環境があります。また、ご家族の負担も軽減されます。一方で、費用負担が大きくなる可能性や、面会時間の制限、ご家族との交流が減ることによる孤独感など、デメリットもあります。
患者様とそのご家族にとって、最適なターミナルケアの場所は一概に決められません。医療環境、経済的負担、患者様・ご家族の精神的負担など、さまざまな要素を総合的に勘案し、患者様本人とご家族で十分に検討する必要があります。
自宅でのターミナルケアは、馴染みのある環境でご家族と過ごせるメリットがあります。費用面での負担も病院や施設に比べると少なく、患者様の孤独感や不安を和らげることができます。一方で、痰の吸引や入浴介助など、日常のケアをご家族が担う必要があり、精神的・身体的負担がご家族にかかり、容体急変時の対応が遅れるリスクがあります。
自宅でのターミナルケアはご家族と過ごせますが、介護負担や急変時のリスクを考慮する必要があります。ご家族がどの程度の時間と負担を確保できるかを勘案しましょう。
介護施設でのターミナルケアでは、24時間体制の専門スタッフによる生活援助や医療的ケアを受けられるメリットがあります。利用者同士の交流があるため孤独感も和らぎ、ご家族の負担も軽減されます。一方で、ご家族から離れること、費用負担が大きくなることがデメリットです。
また、容態が悪化すると場合によってはその場で対処できず、病院へ搬送される場合もあります。施設選びの際は、医療連携体制や介護レベルなどが施設によって異なるため、事前に確認することが重要です。患者様本人の状態やご家族の事情を踏まえ、施設の特徴を考慮して、最適な場所を検討する必要があります。
ReHOPEは医療依存度の高い方のニーズに応えた看護・介護を提供するホスピス型住宅です。がん末期や神経難病などの重度の病状にあるご入居者さまに対して、緩和ケア、人工呼吸器管理、経管栄養など、病状に合わせた医療的ケアを提供します。
全国で30カ所以上のホスピス型住宅を展開しているReHOPEでは、ご入居者さま全員を対象に緩和ケアを行っており、その中で終末期に入った方に「ターミナルケア」も行っています。ご入居者さまとご家族の希望を伺いながら、心身の苦痛を和らげ、自分らしく生活を送れるようサポートします。
また、ReHOPEには緩和ケア認定看護師がいる施設もあり、専門的な緩和ケアを提供しています。病気の進行で苦しみが生じても、緩和ケアによりその苦しみを和らげ、ご入居者さま一人ひとりが最期までその人らしく過ごせるよう、ターミナルケアに努めています。
ReHOPEでは、重い疾患や障害があっても誰もが自分らしく、前を向いて生きられるように心をこめてご入居者さまの毎日を支えます。全国の施設でご入居を受け付けておりますので、見学のお申し込みやお問い合わせなど、お気軽にご相談ください。
より詳しい情報を知りたい方は、ReHOPEのサイトをぜひご覧ください。
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