ホスピス型住宅のReHOPE | ReHOPEマガジン | ホスピスの基礎知識 | 在宅医療とは?受けられる治療とサービス内容を解説
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在宅医療とは、自宅や住み慣れた環境で療養する患者さまのもとに医師や看護師など医療スタッフが訪問し、医療やケアを提供するサービスです。在宅医療は医師だけでなく、看護師や薬剤師、介護士などがチームを組み、患者さまが安心して過ごせるようサポートを行います。
本記事では在宅医療のサービス内容や費用、在宅医療と在宅ホスピスの違い、メリットとデメリットについて解説しています。また、在宅医療の手続き方法もお伝えしていますのでぜひ最後までご覧ください。
この記事の監修者
藪 康人(やぶ・やすひと)
株式会社シーユーシー・ホスピス 執行役員 運営本部 本部長
プロフィール
2006年慶應義塾大学看護医療学部卒業後、大学病院で約5年間勤務。働くなかで、医療現場の知見を仕組み化するスキルを身につけたいと考え、大学院でMBAを取得。2018年CUCへ中途入社。病院事業部で事業譲渡や病院の立ち上げ、事務長・看護部長としてのマネジメント、医療マネジメント職の人材育成に取り組む。2024年シーユーシー・ホスピス 執行役員 運営本部 本部長就任。
在宅医療とは、医師や看護師などが患者さまの自宅を訪問し、必要な診察や処置を行うサービスです。「自宅で過ごしたい」「通院が難しくなった」と感じている患者さまが、住み慣れた環境で安心して療養できるのが大きな特徴です。
在宅医療というと、医師の往診をイメージされる方も多いかもしれませんが、実際には看護師や薬剤師、理学療法士・介護士など、スタッフが患者さまのもとに訪問し、寄り添ったケアを行います。
たとえば、看護師は健康状態を見守り、介護士は日常生活のサポートをします。多職種のスタッフが連携して、患者さまやご家族が不安なく過ごせる環境を整えられるのが「在宅医療」の特徴といえるでしょう。
さらに、自宅以外の高齢者施設(グループホーム、有料老人ホーム、サービス付き高齢者住宅など)やホスピス型住宅でも、同じように在宅医療を受けることが可能です。
在宅医療と在宅ホスピス(在宅でホスピスケアを受けられるサービス)は、どちらも患者さまのご自宅など、住み慣れた環境で受けることができるサービスですが、サービスの目的はそれぞれ違いがあります。
具体的には、在宅医療は病気の治療や症状の管理、リハビリテーションを目的とした医療サービスです。慢性疾患や障害、病気の進行を遅らせたり、延命を目的としたケアが含まれます。患者さまが自宅で日常生活を送りながら、医療を受けられることを目的としています。
一方在宅ホスピスは、終末期ケアに焦点を当てています。人生の最終段階を迎えたとき、延命治療を行うのではなく、苦痛を緩和し、尊厳を持って最期を迎えることを目的としています。終末期の患者さまが苦痛を取り除く緩和ケアを行いながら、できる限り安らかに過ごしていただくことを目的としています。
在宅医療は本人やご家族の同意があり、通院が難しい状況と主治医が判断すれば、利用することができます。ここでは在宅医療の対象となる方の一例を紹介します。
在宅医療の対象となる方(例)
これらはあくまでも一例です。個人差がありますので、在宅医療が受けられるかは主治医やソーシャルワーカー、ケアマネジャーなどの相談員に確認してください。
在宅医療は、往診や訪問看護だけでなく、患者さまが自分らしく日常生活が過ごせるよう、さまざまなサービスがあります。以下に主なサービスをまとめましたのでご覧ください。
在宅医療 | 内容 |
訪問看護 | 看護師が主治医の指示のもとに健康状態の確認、医療処置、医療機器の管理などを行います。
療養中はたとえ慣れ親しんだ自宅でも、健康な時のような生活が難しくなります。「医療的ケアが必要な状態で生活できるのか」「なにか問題が起きないか」といった不安を感じることもあるでしょう。看護師は必要に応じて多職種のスタッフと協力し、患者さまが安心して生活できるようにサポートします。 |
往診 | 「熱がある」「様子がおかしい」など患者さまやご家族から依頼があった場合に、医師と看護師が訪問して診察や治療を行います。体調不良の診察のほかに、自宅での看取りにも対応します。
定期的に医師が訪問して診察や処方、治療を行う「訪問診療」とは内容が異なりますので混同しないように注意しましょう。 |
訪問歯科診療 | 歯科医師が自宅へ訪問し、口腔ケアや虫歯治療・入れ歯の作成や修理を行います。
在宅療養される患者さまは、寝たきりや体の機能低下など、さまざまな理由から虫歯や入れ歯のトラブルを抱えています。口腔内の状態が悪くなると食べる意欲がなくなったり、誤嚥性肺炎のリスクが高まったりするため、健康を守るために定期的な口腔ケアは欠かせません。 |
訪問リハビリテーション | 理学療法士、作業療法士、言語聴覚士が自宅でリハビリを行い、体の機能の維持や自立を支援します。
歩行が難しくなった、脳梗塞後で言葉がうまく話せない、食事中にむせやすい、麻痺があるなど日常生活に支障がある患者さまが対象です。実際の生活環境の場でリハビリを行うため、生活に適した訓練ができるメリットがあります。 |
訪問薬剤管理指導 | 薬剤師が処方された医薬品を届けるとともに、服薬指導や薬の管理を行います。
患者さまは認知症や麻痺などの影響から、薬の飲み忘れや飲み過ぎ、飲み残しといった問題が起こりやすくなります。薬剤師は患者さまが薬が正しく飲めているか確認し、必要に応じては1回分ずつ薬を袋にまとめるなどのサポートをしていきます。 |
訪問栄養指導 | 管理栄養士が患者さまの栄養状態のチェックや食事指導、糖尿病や腎臓病による食事制限のためのレシピの提案などを行います。
在宅療養中の患者さまの約7割が低栄養もしくは低栄養のリスクがあると言われています。(平成24年老人保健健康増進等事業) |
在宅医療の費用は診療報酬として医療行為ごとに厚生労働大臣が細かく定めています。
在宅医療にかかる費用を一覧にまとめました。
在宅医療にかかる費用
この他にも、夜間・休日往診加算や包括的支援加算などが、その時の処置やケア内容によって発生することがあります。
費用は診療実績や患者さまの介護度、医療保険の負担割合によって変動しますので、詳細を知りたい方は医療機関の窓口にご相談ください。
費用が高額になる場合、高額療養費制度の利用によって負担を抑えることが可能です。
高額療養費制度とは1ヶ月間の窓口で支払う医療費が上限額を超えた場合、超えた上限分の金額が公的医療保険から支給される制度です。
この制度を適用することができれば、どれだけ高額な医療費になっても一定の金額以上は払う必要がないので、家計の負担を抑えることができるでしょう。上限額は年齢や所得によって変わります。
以下の表は、70歳から74歳までの自己負担限度額の一覧になります。
被保険者の所得区分 | 自己負担限度額(外来・個人ごと) | 自己負担限度額(外来・入院・世帯) |
---|---|---|
① 現役並み所得者 | ||
現役並みⅢ (標準報酬月額83万円以上で高齢受給者証の負担割合が3割の方) |
252,600円+(総医療費-842,000円)×1% [多数該当:140,100円] |
|
現役並みⅡ (標準報酬月額53万~79万円で高齢受給者証の負担割合が3割の方) |
167,400円+(総医療費-558,000円)×1% [多数該当:93,000円] |
|
現役並みⅠ (標準報酬月額28万~50万円で高齢受給者証の負担割合が3割の方) |
80,100円+(総医療費-267,000円)×1% [多数該当:44,400円] |
|
② 一般所得者 (①および③以外の方) |
18,000円 (年間上限14.4万円) |
57,600円 [多数該当:44,400円] |
③ 低所得者 | ||
低所得者Ⅱ | 8,000円 | 24,600円 |
低所得者Ⅰ | 15,000円 | 15,000円 |
出典:全国健康保険協会「高額療養費70歳以上75歳未満の方」をもとに作成
例として、72歳の方が入院して1ヶ月の窓口負担額が80,000円の場合は以下のような計算式になります。
窓口で支払う額ー自己負担限度額=払い戻し額
80,000円-57,600円=22,400円
この場合は、22,400円が公的医療保険から後ほど支給されることになり、患者さまの負担額は57,600円です。
また、事前に限度額適用認定証の手続きをしておけば、窓口での支払いが自己負担限度額(この場合は57,600円)で済みます。
ただし、自費診療や入院時の食事代、ベッド差額代などの自己負担額は対象にならないので注意しましょう。
在宅医療のメリットは主に3つあり、以下のとおりとなっています。
在宅医療の3つのメリット
ひとつずつ詳しく説明します。
通院の負担は患者さまだけでなく、付き添うご家族にも大きな負担となる場合があります。仕事の予定を調整したり、移動手段を確保したりする必要があるためです。
しかし、在宅医療であれば、医師や看護師が直接ご自宅に来てくれるので、こうした負担が大幅に減ります。自宅で普段通りの生活をしながら診察や医療的ケアが受けられるのは大きな魅力でしょう。
在宅医療は、住み慣れた自宅で必要な医療サービスが受けられます。
これまでの生活の場である自宅で過ごせるため、患者さまは穏やかな気持ちで安心して過ごすことができるでしょう。
病院や施設での療養生活では、病院や施設のスケジュールやルールに合わせて生活をしなければならず、自分のペースで生活することが難しくなります。また、プライバシーの確保も難しいのでストレスを感じる場合もあるでしょう。
自分らしく過ごせる環境は、前向きな気持ちを持ち続けるための大きな力になります。
病院や施設では食事や入浴時間など、決められたスケジュールにあわせて行動しなければいけません。起床から就寝まで日常生活に制限がかかるため、自分のペースで過ごすのが難しいと感じる方もいるでしょう。
しかし、在宅医療であれば診療日時は事前に決められていますが、患者さまの都合に合わせて調整も可能です。時間の制限が少ないので、自分の生活リズムを大切にしながら、必要な医療を受けられます。
また、病院のように面会時間の制限がないため、時間を気にせずにご家族と自由に過ごせます。ご家族との時間は患者さまの心の支えになるでしょう。
在宅医療はメリットばかりではありません。デメリットには以下の3点があります。
在宅医療の3つのデメリット
自宅で療養生活を送る場合、医師や看護師は常にそばにはいません。緊急時の対応は病院や施設に比べると遅くなる可能性があります。
病院では体調の変化があれば、すぐに対応できる環境が整っています。ナースコールを起こせばすぐに看護師が対応し、検査や治療を受けることも可能です。
在宅医療にも24時間対応の事業所はありますが、実際には連絡を受けてから看護師が到着するまでには多少の時間がかかるのが現状です。
救急車を呼んだ場合も、搬送先がはじめての病院になる可能性もあり、迅速な処置が遅れるリスクは否定できません。
在宅医療で急な容態の変化に対応するのは限界があり、在宅医療のデメリットの一つと言えるでしょう。
患者さまが住み慣れた自宅で療養できるメリットがある一方、ご家族の負担が大きくなる可能性もあります。
在宅医療では、病院や施設のように看護師や介護スタッフが常駐していません。食事の準備や排泄、入浴・薬の管理など、日常生活のサポートはご家族の役割になりやすい傾向があります。
こうした状況が長く続くと、ご家族は疲れを感じることが増えるでしょう。疲労とストレスが積み重なると、ご家族自身の健康に悪影響を及ぼします。
在宅医療には、短期間施設に宿泊できるショートステイや、夜間対応の訪問介護などのサービスもあります。ご家族だけで抱え込まずに、ケアマネジャーや医師、看護師に相談しましょう。
在宅医療をうまく利用しながら、ご家族の負担を減らしていくことも大切です。
病院とは異なり、在宅医療では精密検査や高度な治療を受けることはできません。たとえば、点滴や血圧測定、血液・尿検査など簡単な検査や処置は在宅医療でも可能です。
しかし、CTやMRIのような精密検査は病院を受診する必要があります。在宅医療の目的は、病気を治すことではありません。痛みの緩和や状態を維持しながら、患者さまが自宅でできるだけ快適に過ごせるサポートを重視しています。
精密検査や高度な治療が必要な場合には、病院への通院や入院が必要になりますので、患者さまやご家族の理解が求められます。
在宅医療を始めるためには、いくつかの準備とステップが必要です。以下の手順を参考にしてください。
現在のかかりつけ医に相談し、在宅医療に対応できる医師を紹介してもらうと良いでしょう。入院中の場合は、病院内の地域医療連携室にいるソーシャルワーカーに相談することも可能です。
ソーシャルワーカーは、入院や退院後の生活に関する悩みの支援や援助を行う「相談員」です。退院後の生活環境を整えるため手続きやアドバイスをしてくれるので、ひとりで抱え込まずに利用しましょう。
市区町村の役所で要介護認定を受ける準備を始めましょう。要介護認定とは、患者さまがどのくらい介護が必要かを7段階の数値にしたものです。
要支援から要介護5までの要介護度にわかれており、認定がおりると、福祉用具の貸与や住宅回収費用などの補助が受けられます。
また、要介護度に応じた介護サービスが利用でき、在宅医療の経済的な負担を軽減できます。
介護サービスを利用するには、ケアプランが必要になります。ケアプランとは、訪問看護の回数や訪問リハビリテーションの利用の有無など、患者さまが必要とするサービスの計画書です。
ケアマネジャーが、患者さまのニーズに合わせたケアプランを作成します。作成したケアプランをもとに、ケアマネジャーが在宅医療の事業者と調整を行います。
ケアマネジャーを探すには、地域包括支援センターや居宅介護支援事業所に連絡をとり、契約する必要があります。ケアマネジャーは在宅医療の窓口となり長い付き合いになるため、患者さまやご家族が信頼できるケアマネジャーを選びましょう。
在宅医療を始めるには、かかりつけの病院に依頼し、在宅主治医宛に診療情報提供書を作成してもらいます。
この書類には、これまでの診療経過や病歴、現在の健康状態などが記載されており、在宅主治医が適切なケアを行うために必要な情報が含まれています。
在宅医療に関わる医師や看護師、ケアマネジャーなどが診療情報提供書をもとに、医療方針や訪問日時などを話し合います。患者さまが安心して在宅で療養できる体制が整った段階で、在宅医療が始まります。
在宅医療は、自宅で生活する患者さまのもとへ医師や看護師などが訪問し、必要な診察やケアを提供するサービスです。
慣れ親しんだ環境での生活は患者さまや家族にとって心の安らぎをもたらすでしょう。
一方で自宅での生活を望んでいても、状態によっては難しい場合もあります。とくに終末期の患者さまの場合、病気に伴う苦痛を和らげるために24時間のきめ細かいサポートが必要なケースもあるでしょう。
ReHOPEが提供するホスピス型住宅は、医療体制が整った「自宅のような環境」で過ごせる介護施設です。完全個室で、患者さまの希望に寄り添いながら自由な生活が続けられるように支援しています。
また、ホスピス型住宅でも訪問診療を通じて在宅医療を提供しています。実際の様子を写真付きの記事で紹介していますのでぜひご覧ください。
ホスピス型住宅について詳しく知りたい方は「ホスピスとは。病院とホスピス型住宅の違い、ケア内容、費用を徹底解説」の記事からご確認いただけます。
在宅医療を受けるためには、在宅医療に対応できる医師を紹介してもらい、要介護認定の申請とケアマネジャーに依頼してケアプランを作成する必要があります。
詳しくは記事内の「在宅医療の利用手順」をご参照ください。
在宅医療のメリットとデメリットはそれぞれ3点あります。
詳しい内容は記事内の「在宅医療のメリット」「在宅医療のデメリット」をご覧ください。
患者さまの受けた診療内容や介護によって費用は変動します。
医療保険や介護保険、高額療養費制度の利用によって負担を抑えることが可能です。
記事内「在宅医療にかかる費用」で説明していますのでご確認ください。