球脊髄性筋萎縮症とは?症状と必要なケア・利用できる施設や支援を解説|ホスピス・介護の基礎知識|ホスピス型住宅 ReHOPE(リホープ)
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球脊髄性筋萎縮症とは?症状と必要なケア・利用できる施設や支援を解説

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球脊髄性筋萎縮症とは?症状と必要なケア・利用できる施設や支援を解説

この記事の監修者

吉橋 浩(よしはし ひろ)

株式会社シーユーシー・ホスピス|第2運営部 首都圏第一 ケアディレクター

プロフィール

株式会社シーユーシー・ホスピス ReHOPE 西上尾 看護管理者
独立行政法人 国立病院機構 東埼玉病院で10年間勤務。埼玉県の難病拠点病院として、筋ジストロフィーをはじめ、ALSやパーキンソン病などの筋・神経系難病の患者に関わり、看護業務や院内の実習指導・教育、マネジメントにも従事。その後、株式会社シーユーシー・ホスピスに入社、現在ReHOPE西上尾の看護管理者として勤務。
一般社団法人難病看護学会認定 難病看護師や居宅介護支援専門員などの資格を取得。


球脊髄性筋萎縮症(SBMA)は、「ケネディ病」とも呼ばれる遺伝性の神経筋疾患です。主に成人男性に発症し、徐々に筋力の低下や萎縮が進行します。本記事では、球脊髄性筋萎縮症の症状や進行速度、利用できる支援制度について分かりやすく紹介します。

球脊髄性筋萎縮症とは

球脊髄性筋萎縮症(SBMA)は遺伝子の異常が原因で筋力の低下や筋萎縮が徐々に進行する病気です。

特に、話す・飲み込む際に使う舌の筋肉や、手足の筋力がゆるやかに低下していきます。この病気はX染色体連鎖性遺伝病であり、主に30~60歳の男性に発症します。女性は通常、無症状または生活に大きな支障のない程度の運動機能の低下にとどまります。

現在、根本的な治療法は確立されておらず、対症療法が中心となります。男性ホルモンが関与しているため、主にホルモン製剤などによる治療が行われます。

日常生活動作の工夫やリハビリによる筋力低下の予防や誤嚥性肺炎の予防、ホルモン異常に対しての身体的、精神的なサポートが重要です。

球脊髄性筋萎縮症の症状

球脊髄性筋萎縮症は、発症初期には軽い症状から始まり、次第に進行していく疾患です。特に以下のような症状が現れます。

  1. 話しにくくなる(構音障害)
  2. 飲み込みにくくなる(嚥下障害)
  3. 手足の筋力低下
  4. 顔面の痙攣や筋萎縮
  5. ホルモン異常(女性化乳房)
  6. 呼吸筋の低下

1. 話しにくくなる(構音障害)

舌や喉の筋肉が弱くなることで、発音が不明瞭になったり、話しづらくなったりします。声がかすれたり、大きな声を出すことが困難になることもあります。進行すると、会話そのものが難しくなる場合もあり、筆談やコミュニケーション機器の活用が必要になることもあります。

2. 飲み込みにくくなる(嚥下障害)

食べ物や飲み物をうまく飲み込めず、むせることが増えるため、誤嚥(食べ物が気管に入ること)による肺炎のリスクが高まります。食事の形態を工夫したり、嚥下訓練を取り入れることが誤嚥の予防につながります。

3. 手足の筋力低下

最初はふるえや軽い筋肉の痙攣が見られる程度ですが、徐々に筋肉が萎縮し、手足に力が入りにくくなります。体幹に近い筋肉から症状が出やすいため、特に階段の昇降や立ち上がる動作が困難になることが多く、転倒のリスクが高まります。進行すると歩行器や車椅子が必要になることもあります。

4. 顔面の痙攣や筋萎縮

表情筋が影響を受け、笑顔が作りにくくなる、口を開けづらくなるといった症状が現れることがあります。また、食事中に頬や顎の筋肉が疲れやすくなるため、長時間の食事が難しくなることがあります。

5. ホルモン異常(女性化乳房)

アンドロゲン(男性ホルモン)の代謝異常により、乳房が膨らむ症状(女性化乳房)が見られることがあります。これはホルモンバランスの影響によるもので、見た目の変化が心理的な負担となることもあるため、必要に応じて医療機関に治療方法や副作用を相談しましょう。。

6. 呼吸筋の低下

病気が進行すると、呼吸を助ける筋肉も弱くなり、息切れや呼吸困難が生じることがあります。特に夜間や疲労時に症状が強くなる傾向があります。重症化すると人工呼吸器の使用が必要になるケースもあります。

球脊髄性筋萎縮症の症状は段階的に進行し、日常生活に大きな影響を与えます。早期の段階から適切なケアを取り入れ、日常生活動作の工夫をすることが重要です。

参考:厚生労働省「1 球脊髄性筋萎縮症

球脊髄性筋萎縮症で必要となるケアとリハビリテーション

球脊髄性筋萎縮症には、筋力低下を遅らせるために運動療法や作業療法が重要です。また、嚥下障害がある場合は食事療法や嚥下リハビリなども効果的です。

症状の進行度によっては、日常生活を支えるための環境整備や、呼吸補助機器の導入が必要となることもあります。

ケアやリハビリ内容は主に以下の通りです。

運動療法 足上げ運動や股関節外転運動などの下肢筋力トレーニングを行います。

病気の進行を遅らせたり、筋力や活動性低下に伴う廃用の予防に繋がります。

嚥下リハビリ 嚥下障害が起きると誤嚥性肺炎を引き起こす可能性があります。

食事前に舌の運動や首の運動を行うことで、食べ物が飲み込みやすくなったり、むせにくくなります。

言語療法 舌や喉の筋力が弱くなることで、しゃべりにくさが症状として現れる可能性があります。

呼吸訓練や発音練習などの構音訓練を行うことで声を出しやすくします。

医療用ロボットスーツによるケア

上述のケアのほかにも、歩行が困難な場合のケアとして医療用ロボットスーツが用いられることがあります。医療用ロボットスーツは、皮膚表面に貼り付けた電極を通して体を動かしたい意思を信号として読み取り、立つ座るなどの動作や歩行をアシストします。

医療用ロボットスーツHAL®を使用したケアは、2016年1月に球脊髄性筋萎縮症の方の保険適用ができるようになりました。

球脊髄性筋萎縮症の方が利用できる医療・介護サービス

病気の進行に合わせた医療や介護のサポートを受けることで、安心して生活を続けられるでしょう。どのようなサービスがあるか知っておくと、必要時にスムーズに支援を受けられます。ここでは、球脊髄性筋萎縮症の方が利用できる以下のサービスを紹介します。

居宅サービス(訪問型)

日常生活に不安が出てきたら、訪問介護や訪問リハビリなどの居宅サービスの活用を検討しましょう。このサービスでは、ご自宅での生活を続けながら日常生活のサポートを受けることが可能です。

詳しくは以下の記事で紹介していますので、ぜひ参考にしてみてください。

訪問看護とは?サービスの内容や利用方法について解説
訪問介護のサービス内容は?ホスピス型住宅との違いや入居を検討するタイミングについても解説

施設サービス

病状の進行によっては、自宅での生活を続けることが難しくなる場合があります。その際、下記のような入居型の施設を利用することで、適切な介護や医療ケアを受けながら生活することが可能です。

  • 特別養護老人ホーム
  • 介護付き有料老人ホーム
  • サービス付き高齢者向け住宅
  • 介護医療院
  • ホスピス型住宅

施設ごとに提供される支援の内容や医療体制が異なるため、ご本人の状態や生活環境に応じた施設を選ぶことが重要です。
入居型施設の詳細については、以下の記事でも詳しく解説しています。
サービス付き高齢者向け住宅とは?ホスピスや有料老人ホームとの違いについて解説

ホスピス型住宅とは

ホスピス型住宅とは、がん末期や神経難病の方にホスピスケアを行う入居型介護施設です。ご入居者さまの住まいとして、入浴や排泄、食事などの生活のサポートはもちろん、医療依存度の高い方のための専門的なケアを行います。公的に制度化された施設形態ではないため、運営元によって 「ナーシングホーム」「医療特化型有料老人ホーム」「ホスピス住宅」、「ホスピスホーム」とさまざまな呼称があります。当社では「ホスピス型住宅」と呼んでいます。

看護師や介護士が24時間体制で医療的ケアと生活支援を提供し、近隣の医療機関と緊密に連携しています。

また、ご本人が自分らしい生活を送れるよう、幅広い要望に応え希望を叶えられる自由度の高い点が特徴です。

ホスピス型住宅の詳細については、以下の記事でも詳しく解説しています。
ホスピスとは?施設の特徴や病院との違い・対象者や費用について解説

球脊髄性筋萎縮症の方が利用できる公的支援制度

公的支援制度を活用することで、医療費や介護費などの負担を軽減することができます。ここでは、球脊髄性筋萎縮症の方が利用できる公的支援制度の例を紹介します。

  • 難病医療費助成制度
  • 身体障害者手帳
  • 介護保険
  • 高額療養費制度

難病医療費助成制度

球脊髄性筋萎縮症は、厚生労働省が指定する難病の一つであり、医療費助成の対象となります。

指定医による診断を受けた後、居住地を管轄する保健所で申請し、認定されると「医療受給者証」が発行されます。これにより、指定された医療機関での診察や治療にかかる費用の一部が助成され、自己負担額を軽減することが可能です。

参考:難病情報センター

身体障害者手帳

症状の進行により、歩行や日常生活動作(ADL)に支障をきたす場合、身体障害者手帳を取得することができます。

手帳の申請には、自治体が指定する医師の診断書が必要となり、申請手続きはお住まいの自治体の福祉窓口で行います。

手帳を取得することで、税金の軽減や公共交通機関の割引など、さまざまな支援を受けることが可能です。支援内容は自治体によって異なるため、詳しくは自治体窓口に確認しましょう。

参考:東京都福祉局「身体障害者手帳について」

介護保険

介護保険制度は原則として65歳以上を対象としていますが、球脊髄性筋萎縮症は特定疾病に指定されているため、40歳以上の方も要介護認定を受けることで介護保険サービスを利用することができます。

要介護認定を受けると、訪問介護や訪問看護、福祉用具のレンタルなど、さまざまな介護サービスを活用できるようになります。介護度に応じて利用できるサービスが異なるため、ケアマネジャーや自治体の介護保険担当窓口に相談しながら、適切な支援を受けましょう。

高額療養費制度

医療費が1カ月の自己負担限度額を超えた場合、超過分が払い戻される制度です。負担の上限額は、年齢や所得によって異なります。

また、事前に健康保険組合へ申請し「限度額適用認定証」を取得するか、健康保険証の利用登録を行ったマイナンバーカードを窓口で提示することで、医療機関での支払いを抑えることができます。

詳細については、ご自身が加入している健康保険組合へお問い合わせください。

上記の制度は、球脊髄性筋萎縮症の患者さまや家族が経済的な不安を抱えず、安心して療養生活を送るための支えとなります。適切な活用で医療費や介護サービスにかかる経済的負担を軽減し、より安心した生活を維持することが可能です。

制度を利用するにはそれぞれ申請が必要となるため、お住まいの自治体の窓口や医療機関に相談し、具体的な手続きを確認するとよいでしょう。また、入居を検討する際は、ケアマネジャーやソーシャルワーカーに相談し、自身の状況に適した施設を選ぶことが重要です。

ReHOPEでは全国の施設で球脊髄性筋萎縮症の方を受け入れています

当社が運営するReHOPEは、がん末期や難病を抱える方々を対象にしたホスピス型住宅です。医療・介護の専門スタッフが、24時間365日体制で安心できるケアを提供し、ご入居者さまが自分らしい生活を送れるようサポートしています。

ReHOPEでは、全国でホスピス型住宅を運営しており、球脊髄性筋萎縮症の方の入居も可能です。常駐スタッフが日常生活のサポートから医療サービス医療ケアまで、一人ひとりに寄り添ったケアを行います。また、地域の医療機関や多職種と連携し、心身のケアを総合的に提供しているのもReHOPEの特徴です。

全国の施設で見学受付中です。見学のお申し込みやお問い合わせなど、お気軽にご相談ください。

ReHOPEで一緒に働きたい方も募集中!

ReHOPEでは、一緒に働く仲間を募集しています。「もう一度好きなものを食べたい」「家族に会いたい」ご入居者さまの生きる喜びに最期まで寄り添う。

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ReHOPEの採用Webサイト

よくある質問

球脊髄性筋萎縮症の症状は?

四肢や顔面、咽頭の筋力低下により食事の際にむせやすくなったり、手足に力が入らなくなるなど、動作や発声、嚥下が困難になっていきます。

詳しくは記事内「球脊髄性筋萎縮症の症状」をご覧ください。

球脊髄性筋萎縮症とALSの違いは?

どちらも運動ニューロンの変性を主体とする疾患です。球脊髄性筋萎縮症は下位運動ニューロンに障害が起き、症状もゆっくり進行するのに対し、ALSは下位運動ニューロンと上位運動ニューロンの両方に障害が起き、進行速度の中央値が3~4年程度と進行速度も早いことが特徴です。球脊髄性筋萎縮症は筋力低下、脱力中心ですが、ALSは筋力低下だけでなく病的反射や筋緊張も生じます。

球脊髄性筋萎縮症と脊髄性筋萎縮症の違いはなんですか?

原因となる遺伝子が異なります。同じ下位運動ニューロンの障害による疾患ですが、発症の年齢や進行速度、障害の部位などに違いがあります。

なぜ「ケネディ病」と呼ばれるのですか?

この病気の症例を報告したWilliam R. Kennedyらが由来でKennedy病(Kennedy-Alter-Sun病)と呼ばれるようになったそうです。アメリカのジョン・F・ケネディ元大統領のことではありません。

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