ホスピス型住宅のReHOPE | ホスピス・介護の基礎知識 | 病気を知る | せん妄とは?必要なケアや入居可能な介護施設についてわかりやすく解説
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この記事の監修者
成瀨 寿子(なるせ ひさこ)
プロフィール
1993年 恩賜財団大阪府済生会中津看護専門学校卒業後、恩賜財団大阪府済生会吹田病 院にて病棟、外来等複数の診療科を経験し、2008年化学療法センター開設に携わる 。2013年がん化学療法看護認定看護師取得し、がん治療期の患者支援を中心にがん患者 の診断から治療、終末までに関り支援を行う。2022年病院退職を機に以前より在宅支援 を活動拠点とした看護を行いたいとシーユーシー・ホスピスに途中入社。その後は、訪問 看護師として在宅で看取るということ、最期のその日まで入居者・ご家族をサポートする ことに日夜奮闘しながら現在管理者として入居者、ご家族を支えるスタッフ支援を行っている。
ご家族の感情の起伏が激しくなっている、日時や場所がわからなくなっている、昼夜逆転の生活を送っているなど、認知症に似ている症状に悩んでいる方もいらっしゃるでしょう。
せん妄は認知症の症状と似ているため、認知症と混合して認識している方も少なくありません。しかし、せん妄は認知症とは異なり、加齢が原因とは限りません。心身への負荷や薬による影響で起こると考えられており、症状が急に現れる場合もあります。
せん妄が起きている当事者の方も症状に悩まされていますが、ご家族の方もせん妄の症状への対応は難しいと感じる方が多いのではないでしょうか。
本記事ではせん妄とは何か、原因や症状、認知症との違いに加えて対応方法も紹介します。また、ホスピスに入居する判断の目安や、入居のメリット・デメリットも解説します。ご家庭で対応に悩んでいるご家族の方や周囲の方は、ぜひ参考にしてください。
※なお本記事では「ホスピス」を緩和ケア病棟(病院)やホスピス型住宅(介護施設)など、ホスピスケアを提供する施設の総称としています。
せん妄とは、一時的に意識の混濁や幻覚、錯乱などが起こる精神症状です。高齢者や終末期の方に多くみられ、環境の変化や身体への負荷、薬剤の影響が関係していると考えられています。
せん妄の症状は個人差が大きく、特にご家族や周囲の方が対応に悩みやすい症状としては、不眠により昼夜逆転の生活を送ったり、怒りっぽくなったり無気力になったりといった変化が挙げられるでしょう。
また、せん妄の症状である意識障害には、状態の程度に応じて4つの段階があり、せん妄は「傾眠」と呼ばれる段階で起こる傾向があります。
傾眠とは加齢や病気、薬の内服によって起こるとされており、ウトウトして眠りがちになる状態を指します。傾眠について知りたい方は、以下の記事もあわせてご覧ください。
傾眠傾向とは?原因や自宅での対応法について解説
せん妄は神経系に異常が及び発症すると考えられていますが、一時的なものであるケースも多く、適切なケアによって改善する場合もあります。改善のためには、ご家族や周囲の方による早期発見が重要です。
参考:厚生労働省「B.医療関係者の皆様へ|1.早期発見と早期対応のポイント」
参考:国立がん研究センター「せん妄とは」
せん妄は下記のような症状がみられる場合があり、認知症と類似している症状も多くみられます。
上記の症状がみられた際に、「認知症の症状が現れたのでは?」と感じる方も少なくありません。
しかし冒頭で解説した通り、せん妄は急激に発症するケースが多い精神症状です。急激な症状の出現に驚くご家族の方も多いかもしれませんが、せん妄は、早期発見し原因を取り除けば回復する可能性があります。
また、せん妄は症状の日内変動が大きく、時間帯によって改善したり悪化したりするのも特徴です。特に夕方以降に症状が悪化する傾向にあり、就寝できなくなり昼夜逆転した生活を送る、夜間に外出して徘徊するなどの症状がみられる方もいるでしょう。
一方、認知症はせん妄とは異なり、進行性の病気で根本的な治療が難しいとされています。日内変動は少なく、症状が慢性的に続くのが特徴です。加齢が主な原因となる点も、せん妄との違いといえるでしょう。せん妄はさまざまな要因で引き起こされるため、次の章で詳しく解説します。
なお、せん妄と認知症のどちらか一方ではなく、両方が同時に発症しているケースも少なくありません。
症状を疑ったら自己判断せずに、医師に相談するのが大切です。
参考:厚生労働省「B.医療関係者の皆様へ|1.早期発見と早期対応のポイント」
参考:国立長寿医療研究センター「認知症・せん妄サポートチームマニュアルp.23」
せん妄の主な原因は、下記の3つと考えられています。
まず、身体的要因には、脱水や感染症、低酸素状態が挙げられます。さらに、低血糖や栄養失調も関係していると考えられており、高齢者のせん妄の原因としてみられやすいのが特徴です。
次に精神的要因として、不安や強いストレスがせん妄の発生に影響を与える場合があります。特に家族との離別や入退院、引っ越しなどの環境変化は精神的な負担が大きく、せん妄を引き起こす要因となりやすいでしょう。また環境が大きく変わると、すでに発症しているせん妄の症状が悪化する場合もあります。
そして、薬剤の影響もせん妄の主な原因のひとつです。睡眠薬や抗うつ薬のほか、抗がん薬や鎮痛薬(非ステロイド性抗炎症薬)、抗ウイルス薬、免疫抑制薬などもせん妄の発症のリスクを高めると考えられています。
他にも薬剤とは異なりますが、アルコールを日常的に摂取していた方が急に断酒すると「アルコール離脱せん妄」を発症する場合があります。
特に長期間の飲酒習慣がある方の場合、せん妄のリスクが高まると考えられているため、飲酒歴もせん妄の原因のひとつといえるでしょう。
参考:厚生労働省「B.医療関係者の皆様へ|1.早期発見と早期対応のポイント」
参考:厚生労働省「重篤副作用疾患別対応マニュアル」
せん妄の治療は、症状を引き起こしている原因を特定して取り除くのが重要と考えられています。しかしせん妄の発症には多くの原因が重なっているケースもあるため、自己判断での原因の特定は難しいでしょう。
原因を判別するためには病院を受診し、医師へご相談ください。症状の緩和や問題の解決に向けて一緒に検討していくことが必要です。
主な治療としては、ストレスの原因になる事柄を取り除くようにして、心身の状態や服薬の状況、生活習慣などを医師と見直し、症状を緩和していくことになります。
ご家庭での静かな環境の確保や、昼夜のリズムを整える工夫もご家族の支援としては大切です。
参考:厚生労働省「B.医療関係者の皆様へ|1.早期発見と早期対応のポイント」
参考:厚生労働省「重篤副作用疾患別対応マニュアル」
参考:国立長寿医療研究センター「認知症・せん妄サポートチームマニュアルp.23」
せん妄の症状がみられている方を自宅でケアする方法に悩む方は多いかもしれません。しかし、せん妄の症状がみられているご本人も、症状によって混乱や不安を抱えている可能性が高いです。
不安が強い状態の当事者の方に対して、強い口調で接したり、過度に気を遣いすぎたりすると、精神的な負担が増して症状が悪化する恐れがあります。せん妄になった当事者の方は、せん妄になっている期間の出来事を記憶しているケースも少なくないとされています。そのため、せん妄の症状が落ち着いた後も、精神的な苦痛が残ってしまう可能性も考えられるでしょう。
ご本人の気持ちに寄り添いながら話を聞きつつ、落ち着いて普段通りに接するのが望ましいです。また、自宅で過ごす際は、ストレスがかからないように静かな部屋を用意したり、時計やカレンダーなどを用意して日時がわかるようにしたりと、過ごしやすい環境を整えましょう。
ただし幻覚や幻聴が出現していたり、暴言や暴力がみられたり、深夜に徘徊したりと自宅での対応が難しいと感じるケースもあるかもしれません。もし自宅でのケアに悩んだ際には、早めに主治医に相談するようにしましょう。
自宅でケアをするご家族が心身ともに辛くならないよう、悩みを抱え込まずに医療機関へ相談するのが大切です。
参考:厚生労働省「B.医療関係者の皆様へ|1.早期発見と早期対応のポイント」
参考:日本老年医学会「4.高齢者せん妄のケア」
せん妄は特にがんの末期で起こる症状で、がんと併発している場合はホスピスに入院や入居の相談をすることができます。せん妄の症状があるからといって、必ずしもホスピスに入院・入居しなければならないわけではありません。
そもそもせん妄は、準備因子・直接因子・促進因子の3つが影響し合い発症します。
高齢、認知症などの発症しやすい要素(準備因子)がある方に、精神的不安などの促進因子が加わってせん妄が誘発されやすい状態を作り、服薬や脱水、低血糖などの直接因子が引き金になってせん妄が発症します。
ホスピスに入院・入居するのが環境の変化によるストレスと感じる方もいるでしょう。環境の変化はせん妄の促進因子となり得るため、せん妄が悪化するケースも考えられます。
しかし、ご家族によるケアが難しい場合や重症度などによっては、ホスピスが適した選択肢になることがあります。
まずはホスピスに入院・入居するか悩んでいるご家族の方は、現在の症状とあわせて主治医や入居・入院先と消して検討しているホスピスへ相談してみましょう。また、次の章で解説するホスピスへの入院・入居のメリットとデメリットも合わせてご検討ください。
ホスピスの詳しい説明は、「ホスピスとは?病院とホスピス型住宅の違い、ケア内容、費用を徹底解説」で説明しているため、あわせてご参考にしてください。
せん妄の方がホスピスを利用するメリットとデメリットを紹介します。ご家族にせん妄の症状が出現しており、ホスピスへの入院や入居に悩んでいる方は、ここで紹介するメリットとデメリットを比較し、入院・入居をご検討ください。
※「ホスピス」はもともと、終末期の方の苦痛を和らげるケアの考え方を指す言葉ですが、現在ではそのケアを行う施設を「ホスピス」と呼ぶことが一般的になっています。本記事では、「ホスピス」について、ホスピスケアを行う施設(ホスピス型住宅や緩和ケア病棟)としてご紹介しております。
せん妄の症状は体調や精神状態、環境の変化によって悪化しやすいため、医療スタッフが適切な関わりをするのが大切です。ホスピスでは、せん妄の症状や対処法を熟知している医療スタッフが在籍しているため、専門的なケアが受けられます。
せん妄の方が落ち着いて過ごせるような生活環境の工夫も行われるため、安心して療養できるでしょう。
ホスピスでは、医師や看護師、介護スタッフが常に連携して患者さまの体調を見守っています。
特にせん妄の方は、夕方以降に症状が悪化する傾向があり、夜間に眠れず昼夜逆転している方も多いです。しかしご自宅では、夕方や夜間の対応が難しい方も多いでしょう。
特にホスピス型住宅なら医療・介護の専門スタッフが24時間常駐しているため、夕方や夜間など症状が悪化する際にも、すぐにスタッフが駆けつけられ、安全に過ごせます。
せん妄の症状がある方は、症状を抑えるためにも精神的に安心できる環境で過ごすのが大切です。ホスピスでは、刺激を最小限に抑えた静かな空間が用意されています。
ホスピス型住宅では、ご本人の症状や嗜好に合わせて、過ごしやすい生活環境に整えられるのもメリットです。
たとえば、自宅に飾っていた家族写真を飾ったり、カレンダーや時計を設置したりと工夫することで、自宅のように安心でき落ち着いて過ごせるでしょう。
ホスピスの利用には費用がかかります。医療保険や介護保険の適用を受けられるケースもありますが、施設によって自己負担額が大きくなる場合もあるでしょう。個室を希望する場合や、特別な医療行為が必要な場合などは、費用がさらに高額になる可能性があります。
ホスピスに入院・入居すると、面会時間や付き添いの時間に制限がある場合があります。
特にせん妄の方は、家族の存在が安心につながる場合が多く、頻繁に会えない環境だと不安を感じたり寂しさを感じたりするかもしれません。
ホスピスによって面会のルールが異なるため、入院・入居前に確認しておくと良いでしょう。
ホスピスへの入院・入居は、慣れ親しんだ自宅から新しい環境に移ることを意味します。環境の変化によるストレスは、せん妄の促進因子となり得るため症状が悪化するケースも考えられます。
特に、ホスピスのスタッフや施設の環境に慣れるまでの間は、不安や混乱が強くなる可能性があるでしょう。
ただし、ホスピスの中には、ホスピス型住宅であるReHOPE(リホープ)のような自宅に近い環境で過ごせる施設もあります。自宅に近い環境であれば、環境の変化による症状の悪化を抑えられる可能性もあるでしょう。
実際のホスピス型住宅の暮らしが気になる方は、下記の記事もあわせてご覧ください。
ホスピス型住宅の生活は?入居後の暮らしを写真でご紹介
ホスピスに入るタイミングは、ご本人とご家族の希望が優先されるため、特に公的な条件や決まりはありません。
ただし、せん妄の方は、環境の変化によるストレスが症状の悪化につながる場合もあります。入院や入居を希望する際は、医師ともタイミングを相談する必要があるでしょう。
また、病院や施設によって、入院・入居できる病気や症状などの条件が定められているところもあります。
ホスピスの入院、入居条件について下記の記事でも解説しています。入居を検討されている方は、あわせてご覧ください。
ReHOPEは、がん末期や難病の方々を対象にしたホスピス型住宅です。医療・介護の専門スタッフが、24時間365日体制で安心できるケアを提供し、ご入居者さまが自分らしい生活を送れるようサポートしています。
施設内はご入居者さまのご自宅。プライバシーが守られた空間で、日常生活の支援から医療的なケアまで、きめ細やかなサポートを受けられるのがReHOPEの特徴です。
「焼き魚を食べたい」「桜を見たい」といった日々の願いから、あきらめていた挑戦まで、一人ひとりの「やりたい」によりそいます。そして、知恵を振り絞り、安全を守りながら、ご本人やご家族とともに実現していきます。
入居をお考えの方には施設の見学も随時受け付けていますので、お気軽にお問い合わせください。
せん妄は、意識の混濁や幻覚、見当識障害や注意力の低下などがみられる精神症状です。認知症と似ている症状が多く、ケアをするご家族の方も、戸惑う場面や対応に悩む場面も多いでしょう。
病院を受診して原因を特定し対処したり、自宅の環境を整えたりすると症状が改善する場合もあります。しかし暴言や暴力、幻覚や幻聴、夜間の徘徊など、自宅でケアをするのが難しい症状がみられる場合もあるかもしれません。
自宅でのケアが難しいケースでは、ホスピスへの入院や入居も一つの選択肢です。
せん妄の症状を疑ったら、早めに医師や専門家へ相談しましょう。
せん妄は、さまざまな要因が重なって発症しますが、特に高齢や認知症といった準備因子を持つ方に起こりやすいと考えられています。
こうした準備因子に加え、精神的不安や環境の変化といった促進因子が影響すると、せん妄を引き起こしやすい状態になります。さらに、服薬や脱水といった直接因子が引き金となり発症につながるケースが多いです。
詳しくは記事内「せん妄の主な原因」をご覧ください。
高齢者のせん妄では、見当識障害や不眠、幻聴などが現れます。特に症状の日内変動が大きく、日中は落ち着いていても、夕方から夜間にかけて悪化しやすい傾向があります。
不眠から昼夜逆転の生活となり、夜間に落ち着かずに徘徊して転倒してしまう方もいるでしょう。
また、幻覚や被害妄想が現れ、周囲の家族や支援者への警戒心が強まるケースも少なくありません。
詳しくは記事内「せん妄と認知症の違い」をご覧ください。