INTERVIEW

看護師インタビュー

「もう一度、終末期の看護をやりたい」 施設での訪問看護という新しい働き方に惹かれました

看護クラーク横浜瀬谷

看護師 前田 梨沙

看護学校卒業後、急性期の総合病院に看護師として就職。消化器内科にて内視鏡治療・化学療法・がん末期患者の看護を経て、総合内科に異動し、認知症患者の看護を担当。2020年より同病棟がコロナ病棟となり、新型コロナウイルス感染症患者の看護師として勤務。
その後、2022年4月にCUCホスピスに転職。現在は神奈川県のホスピス型住宅で看護師として働く。

看護師としてどうありたいか考えさせられた、コロナ禍のお看取り

____ これまでのご経験を教えてください。

学生時代から、患者さまと深く関わり、人間関係を築きながら看護をするという意味で、終末期医療に興味がありました。看護実習をしていた病院で、看取りを経験した時のことです。私が何気なく言った「明日また来ますね」のひと言で、ご家族の方が「明日も生きてくれるのかもしれない」と希望を持った、と実習の指導者に教えてもらいました。

今となっては軽々しくかけられない言葉ですが、その時に「学生の私でも役に立てるんだ」と感動したんです。ご家族にもご本人にも「いてくれて良かった」と思われる看護師になりたいと強く感じました。

その後、病院の看護師になったのですが、2020年から勤務先の総合内科がコロナ病棟になり、私の仕事も新型コロナウイルス感染症の方の看護が中心になりました。感染拡大を防ぐために院内は厳戒態勢が敷かれており、ご家族の面会はビニールカーテン越し、患者さまが亡くなるとご遺体は納体袋へ。その最期は、看護師の私も心が苦しくなることばかりでした。そうした環境で約2年間働きながら、自分はこれからどうしたいのか、改めて考えました。

____ その後、なぜCUCホスピスに転職されたのですか?

目の前の患者さまの人生により深く関われる環境で、もう一度終末期の看護と向き合いたいと考えたからです。

転職を考えはじめた当時、インターネットで「終末期」や「ターミナルケア」といったワードで色々と検索していた時に偶然ヒットしたのがCUCホスピスでした。その時はじめて「ホスピス型住宅」というものを知り、興味を持ちました。

以前から訪問看護には興味があったのですが、自分ひとりで個人宅を訪問するのは敷居が高いと感じていて。介護施設でありながら訪問看護が行えるホスピス型住宅の存在を知った時は「こういう施設形態もあるのか」と驚きました。

自分にとってはじめての在宅ケアになるので、スタッフと相談できる環境で訪問看護ができるのは安心だと感じ、CUCホスピスに転職を決めました。

前田さんインタビューカット

病院で働いていた頃よりも、 時間をかけてお一人おひとりと向き合えている

____ 現在の仕事内容を教えてください。

神奈川県のホスピス型住宅で看護師として働いています。1日に10件程度、ご入居者さまのお部屋を訪問し、看護をしています。 訪問は1件あたり30分間で、人工呼吸器の管理や、褥瘡の処置、点滴や経管栄養の管理などを行います。

ご入居者さまのその日の体調によって提供するケアは異なっていて、「気分転換に散歩がしたい」とご要望があれば、車いすでお出かけに付き添いますし、理学療法士が作ったリハビリメニューに沿ってリハビリマッサージをしながらじっくりとお話を聴くこともあります。

ご入居者さまに接する際は、顔色や声のトーン、立ち位置などに気を遣いながら、なるべく話しかけやすい雰囲気をつくり、小さな変化も逃さないように心がけています。

____ 病院で勤務されていた時と比べて、変わったと感じる点があれば教えてください。

私が勤務していた病院は、患者さまの入院期間が長くても数カ月と短く、ひとりの患者さまと長期間接する機会がなかなかありませんでした。

その点、今のホスピス型住宅では、入居期間が長い方が比較的多いと感じます。人によって異なりますが、なかには1年〜2年と長期で滞在される方もいらっしゃいます。長期間の関わりを通して、信頼関係を築いていけるのは嬉しいことです。

また、ホスピス型住宅は生活の場なので、ご入居者さまの想いに寄り添える実感が持ちやすいのもやりがいのひとつです。一緒に音楽を聴いたり、趣味の編み物を見せていただいたり、ご入居者さまが大切にしている暮らしに寄り添えるのはホスピス型住宅ならではだと思います。

ALSのご入居者さまとお話しする前田さん

____ 逆に、大変だと感じることはありますか?

ご家族への情報共有にはとても気を遣います。

ご入居者さまの病気の進行具合によっては、症状が週単位、早い場合は毎日変わることもあるので、なかには面会された時にご家族がご入居者さまの現状についていけないケースがあります。そうしたギャップをできる限りやわらげられるように、ご入居者さまの体調変化があった時には、面会や電話などでこまめに情報をお伝えするようにしています。

また、ご本人とご家族の間で、終末期の過ごし方について考えが違うことも出てきます。一度きりではなく繰り返し話し合い、連携先の医師とも相談しながら、ご本人だけでなくご家族にとっても「これで良かった」と思える最期となるようにご支援するのですが、これがなかなか難しくて。

看護師として大切なのは、ご本人やご家族の気持ちや想いを引き出すためにコミュニケーションする力だと思います。意思決定を促す力や心のゆらぎを受け止める力もそれぞれ必要なので、もっと磨いていきたいです。

呼吸器を調整する前田さん

ご入居者さまの希望を全力で尊重する「チーム」でありたい

____ 今後、特に注力したいテーマを教えてください。

まず、終末期医療についての専門性をもっと身につけないといけないと思っています。

一緒に働いているスタッフは、さまざまな医療の現場で豊富な看護経験を積んでいて、終末期医療への造詣が深い人が多いんです。他のスタッフに比べると、私は看護師としての経験も知識もまだ浅く、人一倍勉強が必要だと感じています。

疾患の知識やターミナルケア、お看取りなど、終末期医療について知識を深められるように、外部の研修にも参加しながら学んでいるところです。 早く終末期医療のプロフェッショナルである先輩方に近づけたら、と思って頑張っています。

____ 一緒に働きたいスタッフ像はどんな人ですか?

ご入居者さまの想いを尊重し、「どうしたらできるか?」を前向きに考えられる方が向いている気がします。

ご入居者さまは、病状の都合でどうしても何かをあきらめたり、我慢したりすることが出てくることが多いんです。たとえば「好きなものを食べたい」「誕生日は自宅で過ごしたい」というご本人の気持ちを可能な限り受け止め、連携先の医師を含む他のスタッフと力を合わせて実現への道を探る。そういった姿勢の方と一緒に働けるといいなと思います。

自分の担当のご入居者さまのことを「プライマリー」といいますが、ここのスタッフは皆、プライマリーを含むすべてのご入居者さまのことを気にかけていて、申し送りの時間はもちろん、空いている時間があれば情報共有をしています。

施設みんなが「チーム」として、ご入居者さまを看ている感覚です。こうした働き方に共感していただける方に、来ていただけたら嬉しいですね。