傾眠傾向とは?原因や対策から施設への入居を検討する際のタイミングについても解説|ホスピス・介護の基礎知識|ホスピス型住宅 ReHOPE(リホープ)
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傾眠傾向とは?原因や対策から施設への入居を検討する際のタイミングについても解説

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傾眠傾向とは?原因や対策から施設への入居を検討する際のタイミングについても解説

この記事の監修者

松村 広子(まつむら ひろこ)

株式会社シーユーシー・ホスピス 看護クラーク多治見 看護管理者

プロフィール

総合病院にて手術室看護師を10年。その後外科外来、外科病棟に勤務し、がん患者様と多く関わる。手術をしても良くならず、苦しい思いをして過ごしている方の多いことにショックを受け、もっと専門的に学びたいと思い認定看護師教育課程へ進む。
その後緩和ケアチーム、緩和ケア看護外来、緩和ケア病棟、地域連携支援センターを経てそれぞれの緩和ケアを学び、在宅でその人らしく最期まで寄り添う看護を提供したいと考え、2023年 シーユーシー・ホスピスに入社。


ご家族がぼんやりして反応が鈍かったり、ウトウトと眠りがちだったりする様子に、「これって普通なのか」「どう対応すべきか」と悩まれることがあるかもしれません。この状態は、傾眠傾向と呼ばれる高齢者や病気の方にみられる意識障害の可能性があります。

傾眠傾向は、加齢や病気、薬の影響が原因となることが多いですが、思わぬ病気が隠れているケースもあるため、異変に気づいたらすぐに対策を行いましょう。この記事では、傾眠傾向の原因や自宅でできる対応法、ホスピスを検討する時について、わかりやすく解説します。

※なお、ここでのホスピスとは、緩和ケア病棟(病院)やホスピス型住宅(介護施設)を指します。

傾眠傾向とは?

傾眠傾向とは、高齢者や病気、がん末期の方にみられる意識障害のひとつです。

声をかければ一度は目を開くものの、刺激が途切れるとすぐにまた眠ってしまう状態を指し、高齢の方や病気の方、がんの進行期によくみられ、軽度の意識障害に分類されます。

一見すると居眠りのように見られますが、居眠りと傾眠では「起こした後」に違いがあります。居眠りは十分に休息を取るなどし、目覚めればそのまま活動できます。一方、傾眠傾向は、起こしても短時間で再び眠ってしまい、会話や飲食への反応が乏しくなりやすいのが特徴です。

傾眠傾向は、脱水・感染・脳の病気・薬の影響など病気や加齢に伴う習慣の変化など様々な要因が考えられます。傾眠傾向が見られたあとにそのままにしてしまうと、脱水・栄養不足・筋力の低下・転倒・寝たきりなどの危険性が高まってしまいます。

また、傾眠傾向はがんや神経難病をはじめとした様々な病気の終末期といわれる段階でも見られます。

傾眠傾向が見られた時には、「また寝ている」で終わらせず、眠り方の変化を観察しましょう。少しでも違和感を覚えたときは、迷わずに早めに医師や専門家へ相談してください。

終末期については別記事「終末期とは?症状の特徴やケア内容、家族ができることについて解説」で解説しています。

意識障害のレベルとその見分け方

意識障害には、傾眠・混迷・半昏睡・昏睡の4段階があります。それぞれの違いは以下のとおりです。

意識レベル 状態
意識清明(いしきせいめい) 正常な状態。

意識がはっきりしている

傾眠(けいみん) うとうととしている。

軽い刺激によって起きられるが、刺激がない場合しばらくすると眠ってしまう

混迷(こんめい) 大声で呼びかけるなどの強い刺激には反応できるが、刺激がなければ眠ってしまう
半昏睡(はんこんすい) 体を強くつねるなどの強い刺激に、顔をしかめるなどの反応がある
昏睡(こんすい) 外からの刺激に全く反応がない

傾眠傾向の原因

傾眠傾向の原因には、大きく分けて以下の3つがあるとされています。

  • 年齢と健康状態の影響
  • 認知症や病気の影響
  • 薬の副作用の影響

年齢と健康状態の影響

年齢と健康状態の影響による傾眠傾向の原因には、体力の低下や脱水・睡眠の質の低下・低血圧・栄養不足などがあげられます。

これらの要因によって身体や脳の機能が低下すると、傾眠傾向を引き起こしやすくなります。また、高齢者は睡眠の質が悪くなりやすく、寝つきが悪い・途中で目が覚める・眠りが浅いといった問題が現れてくるでしょう。

その結果、夜間に十分に休むことができず、昼間に強い眠気を感じやすくなります。なお、高齢者の場合、8時間以上の長時間睡眠が認知症などのリスクを高めると指摘されており、昼間の活動量を増やして、夜間にしっかり休めるようなサポートが必要です。

そのほか、高齢者は脱水症状にも注意しなければなりません。高齢者は加齢により喉の渇きを感じにくいうえ、トイレが近くなるといった不安から水分を制限しがちになる傾向があります。身体の水分バランスが崩れると意識障害につながるため、ご注意ください。

出典:厚生労働省|健康づくりのための睡眠ガイド2023

認知症や病気の影響

認知症や病気の影響も、傾眠傾向につながる原因になり得ます。傾眠傾向になりやすいとされる主な病気は、以下のとおりです。

  • 認知症
  • がん末期
  • 慢性硬膜下血腫
  • パーキンソン病
  • 心不全や肺炎
  • 風邪
  • 低血圧症
  • 糖尿病
  • 甲状腺機能低下症 など

認知症は、脳の病気やアルツハイマーなどの脳の器質的変化により、記憶力・理解力、判断力が低下する病気です。認知症が進行すると「昼夜逆転」や「無気力」といった症状により、傾眠傾向となりやすくなります。

また、慢性硬膜下血腫やパーキンソン病などの脳の病気、心臓や肺の病気、糖尿病や甲状腺機能低下症などの代謝異常による病気、血圧低下による低血圧症にも注意が必要です。これらの病気が原因で脳への酸素供給が悪くなることより、傾眠傾向を引き起こす原因になります。

このように気になる症状がある場合は、早めにかかりつけ医や医療機関に相談してください。

薬の副作用の影響

抗うつ剤や抗精神病薬などの向精神薬や鎮静剤といった薬は、眠気を引き起こしやすく、傾眠傾向の原因となる可能性があります。

高齢になると体内で薬の代謝をする機能が低下するため、薬の成分が身体に長く残り、作用が強く現れやすくなります。

服用している薬や本人の状態によっては傾眠傾向になりやすくなってしまうことも考えられるため、違和感を感じたら、迷わずに医師や薬剤師に薬の内容の確認や相談をすることが大切です。

傾眠傾向がみられる際の注意点

傾眠傾向がみられる状態では、以下のようなトラブルや危険が起こり得ます。

  • 誤嚥(ごえん)
  • 食欲の低下
  • 脱水症状の進行
  • 転落 など

食事中に傾眠傾向が現れた場合には、誤嚥に注意しなければなりません。繰り返し誤嚥が起こると誤嚥性肺炎につながる恐れがあるため、傾眠傾向がみられる場合は食事に集中できる環境を整えましょう。

また、傾眠傾向によって日中に眠くなりやすくなることから、食欲が落ち食事や水分を取らなくなるケースも想定されます。結果として栄養不足に陥り、筋力や免疫力が低下するなど、さらなる危険につながってしまうかもしれません。

傾眠傾向になったときの対応方法

ご家族の傾眠傾向が気になる場合、まずは原因を見極めることが重要です。原因に応じた対応をとることで、状態が悪化することを防げます。

そのため、気になる症状がある場合は、早めに医師や専門家に相談し、診察や治療を受けてください。また、自宅での対応によって症状が改善する場合もあります。以下では、自宅でできるケアと医師に相談する際のポイントを解説するので、チェックしてみてください。

自宅でできる基本的なケア

傾眠傾向は、周りのサポートで少しずつ改善する可能性があります。以下に自宅でできる支援内容をまとめました。ご家族に負担がかからない範囲で、取り入れてみてください。

対応 具体的な内容
コミュニケーションを増やす
  • リラックスした雰囲気で声をかける
  • 相手の好きな話題や、問いかけなど
環境を整える
  • 昼間はレースカーテンを使い適度な明るさにする
  • 室温や湿度を快適に保つ
  • 手すりの設置や段差をなくすなど、動きやすい部屋を作る
水分補給
  • こまめに水分を摂る習慣をつける
  • 飲みやすい温度や、持ちやすいコップを用意する
食生活を見直す
  • 誤嚥を防ぐためにできるだけ食べやすい食事に切り替える
  • 固形物だけではなく、おかゆやスープなど液状の食事も検討する
生活リズムを見直す
  • 朝きちんと起きて太陽を浴びる
  • 日中は寝転がらないようにする
軽い運動
  • 軽い散歩を取り入れる
  • 室内でラジオ体操や簡単なストレッチを行う
短い時間の昼寝を取る
  • 30分以内の昼寝を昼食後に時間を設ける
  • 昼寝で生活リズムにメリハリをつける
睡眠環境を見直す
  • 夜にきちんと眠れる環境を整える
  • マットレスや枕、シーツなどを合ったものへ切り替えてみる
血圧や体温を定期的に測る
  • 血圧や体温の状態を普段の状態を把握する
  • 記録した値を医師に伝えることで、異常の早期発見が可能となる

傾眠傾向がある方でも、適度の刺激があれば普段通りに生活を送れる可能性があります。本人の眠りたいという希望に寄り添いすぎず、積極的に刺激を与えるサポートを心がけましょう。

なお、がん末期や進行性の病気など状態によっては、本人の意思を尊重し快適に過ごせるように対応することが求められます。傾眠傾向の原因によって対応方法は変わるので、サポートに迷ったらかかりつけ医や専門家に相談してください。

かかりつけ医への相談・医療サポートを受ける

傾眠傾向がみられる場合、病気が原因の可能性もあります。重大な病気を抱えている場合もあるため、早めに医療機関に相談しましょう。かかりつけ医に相談する際は、傾眠傾向が出るタイミングや状況を詳しく伝えることが大切です。

「昼食後に眠くなる」「薬を飲んだ後にウトウトする」など、具体的な状態を記録しておくと診断の助けになり、異常の早期発見に役立ちます。また、傾眠傾向は服用する薬の量や種類が原因の場合もあるため、服用中の薬の情報も伝えてみるとよいでしょう。

傾眠傾向があればホスピスに入居するべき?

傾眠傾向だけではホスピスへの入居の要件には該当しません。ただし、がんや進行性の神経難病などの病気が原因で傾眠傾向がみられる場合は、穏やかにウトウトしているわけではなく、全身倦怠感により身体が休まらないといった苦痛を伴っている可能性があります。

このような状況では、ホスピスへの入院・入居が一つの良い選択肢になるかもしれません。

ホスピスとは、身体の痛みや精神的な苦痛を和らげ、患者さまがその人らしく過ごせるようにサポートする施設のことです。

ホスピスには、病院が運営する緩和ケア病棟と、介護施設に該当するホスピス型住宅の主に2種類があります。どちらも身体的・精神的ケアを行う点や、医師や看護師が24時間体制で対応できるという点では、大きな差はありません。

ただし、滞在期間や設備、生活の自由度などに違いがあります。患者さまご本人やご家族の希望、状態にあわせて適切な施設を選びましょう。

なお、ホスピスの詳しい説明は別記事「ホスピスとは?病院とホスピス型住宅の違い、ケア内容、費用を徹底解説」で、入院・入居条件については「ホスピスの入院・入居条件とは?対象となる疾患や特徴を解説」説明していますので、こちらもあわせてご覧ください。

ホスピス入居のメリット・デメリット

ここからは、傾眠傾向の方がホスピスに入居するメリットとデメリットを紹介します。

ホスピスに入居するメリット

傾眠傾向の方がホスピスに入居するメリットは、主に以下の3つです。

  1. 専門的なケアを受けられる
  2. 医師や看護師、介護スタッフがすぐに駆けつけられる
  3. 環境が整っている

専門的なケアを受けられる

ホスピスでは、身体的・精神的な痛みや苦痛を和らげるケアが中心になります。傾眠傾向の原因となる痛みや不快感が和らぐことによって、ご本人に残された時間を穏やかに過ごせるようになります。

医師や看護師、介護スタッフがすぐに駆けつけられる

ホスピスでは、医師や看護師、介護スタッフなどの専門家が連携して、24時間いつでもすぐに対応してもらえます。また、患者さまご本人だけではなく、ご家族へのサポートを行うことも特徴です。

傾眠傾向の方は、体調の急変や栄養不足、転倒といったリスクがあります。自宅と違い、専門家による適切な対応をすぐに受けられるため、安心して過ごせるでしょう。

環境が整っている

傾眠傾向が強い方が自宅で過ごす場合、手すりの設置や介護ベッドのレンタル、食べやすい食事の配慮など、環境を整える必要があります。ホスピスでは、自立した生活が送れない人でも快適に過ごせる環境が整っているため、安全で快適に生活できるでしょう。

ホスピスに入居するデメリット

一方で、傾眠傾向の方がホスピスに入居するデメリットは、以下のとおりです。

  1. 費用が高額になる場合がある
  2. 家族が常にそばにいられない可能性がある
  3. 環境の変化によるストレス

費用が高額になる場合がある

ホスピスを利用するには、初期費用や毎月の利用料などの費用がかかります。医療保険や介護保険など公的な保険が利用できる場合もありますが、差額ベッド代や食事代など自費が求められるケースもあり、施設によって高額になることもあるでしょう。

なお、緩和ケア病棟とホスピス型住宅の費用については別記事「ホスピスとは?病院とホスピス型住宅の違い、ケア内容、費用を徹底解説」で紹介していますので、気になる方はご覧ください。

家族が常にそばにいられない可能性がある

ホスピスに入居すると、施設によっては面会時間の制限や付き添いが難しい場合があるため、自宅での生活に比べて家族との時間が短くなる可能性があります。とくに傾眠傾向が進んでいると、家族と触れ合える時間がさらに制限されるかもしれません。

ホスピスによっては面会時間に制限がない施設もありますので、入院・入居する際は、事前に面会の条件や時間の確認をしておきましょう。

また、ReHOPEでは面会時間の制限がないだけでなく、ペットとの面会も可能なため、より自宅に近い環境で過ごせます。

環境の変化によるストレス

ホスピスによっては、相部屋や持ち込みの制限など、過ごし方に制限がある場合があります。身体や精神的な苦痛があるなかで、環境に慣れるまでのストレスも感じることがあるでしょう。

ただし、ホスピス型住宅であるReHOPE(リホープ)のように、自宅と同じような環境で過ごせるように配慮した施設もあります。ホスピス型住宅の実際の1日の過ごし方を「ホスピス型住宅の生活は?入居後の暮らしを写真でご紹介」で紹介していますので、ぜひご覧ください。

ホスピスに入るタイミング

ホスピスに入るタイミングには、公的な条件や決まりはありません。基本的には患者さまご本人とご家族の希望が優先されます。ただし、病院や施設によっては細かな条件を定めている場合がありますので、医師や専門家と相談しながら進めていきましょう。

とくに緩和ケア病棟では、入院日数に制限がある場合が多く、平均的な滞在期間は2週間〜1ヶ月となっています。ホスピス型住宅の場合は、要介護度や病気の種類、進行度によって受け入れ態勢が異なる場合があるため、事前に公式ホームページを確認するなどして、入居対象となるかどうか確かめておきましょう。

なお、ホスピスを利用するタイミングについて詳しく知りたい方は、別記事「がん末期の方の退院後の選択肢のひとつ「ホスピス」利用タイミングやケア内容を解説」をあわせてご確認ください。

まとめ

傾眠傾向とは、高齢者や病気の方にみられる、軽度の意識障害です。加齢や認知症、病気、薬の副作用、生活習慣などが主な原因とされています。日中の活動量を増やし、夜にきちんと睡眠を取れるような生活環境を整えることで、改善する場合もあるでしょう。

しかし、がん末期や進行性の病気などを原因とした傾眠傾向は、最期の時間が近づいている可能性もあります。この場合、ホスピスへの入院・入居を検討するのも、一つの選択肢です。

「傾眠傾向では?」と迷ったら、早めに医師や専門家に相談しましょう。

よくある質問

傾眠傾向になるとどうなるのか?

傾眠傾向とは、一見うたた寝のように見える意識障害の一種です。軽い刺激で起きますが、しばらくして再び眠りに落ちてしまいます。傾眠傾向が続くと脱水症や栄養不足を引き起こすリスクがあるため注意が必要です。詳しくは記事内「傾眠傾向とは?」をご覧ください。

家族に傾眠傾向がみられたら?

家族に傾眠傾向がみられたら、まずは早めに医療機関に相談しましょう。そのうえで、生活習慣の見直しやコミュニケーションを増やすなどの家族にできる対応もあるため、無理のない範囲で実施してみましょう。詳しくは記事内「傾眠傾向になったときの対応方法」をご覧ください。

高齢者が傾眠傾向になるのはなぜ?

高齢者は、加齢による脳機能の低下によって、傾眠傾向が生じる場合があります。また、脱水症状や低血圧なども高齢化によって陥りやすいリスクであり、傾眠傾向につながる原因です。詳しくは記事内「傾眠傾向の原因」をご覧ください。

ホスピス型住宅ReHOPEは全国でご入居者さまを募集中です

ReHOPEは、がん末期や難病の方々を対象にしたホスピス型住宅です。医療・介護の専門スタッフが、24時間365日体制で安心できるケアを提供し、ご入居者さまが自分らしい生活を送れるようサポートしています。

施設内はご入居者さまのご自宅。プライバシーが守られた空間で、日常生活の支援から医療的なケアまで、きめ細やかなサポートを受けられるのがReHOPEの特徴です。

「焼き魚を食べたい」「桜を見たい」といった日々の願いから、あきらめていた挑戦まで、一人ひとりの「やりたい」によりそいます。そして、知恵を振り絞り、安全を守りながら、ご本人やご家族とともに実現していきます。

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