ホスピス型住宅のReHOPE | ホスピス・介護の基礎知識 | 病気を知る | がん末期(末期癌)と診断されたら?症状や必要なケア、退院後の選択肢について解説
投稿日: 更新日:

この記事の監修者

成瀨 寿子(なるせ ひさこ)
プロフィール
1993年 恩賜財団大阪府済生会中津看護専門学校卒業後、恩賜財団大阪府済生会吹田病 院にて病棟、外来等複数の診療科を経験し、2008年化学療法センター開設に携わる 。2013年がん化学療法看護認定看護師取得し、がん治療期の患者支援を中心にがん患者 の診断から治療、終末までに関り支援を行う。2022年病院退職を機に以前より在宅支援 を活動拠点とした看護を行いたいとシーユーシー・ホスピスに途中入社。その後は、訪問 看護師として在宅で看取るということ、最期のその日まで入居者・ご家族をサポートする ことに日夜奮闘しながら現在管理者として入居者、ご家族を支えるスタッフ支援を行っている。
がん末期(末期癌)と告げられた直後は、何から考えればよいか戸惑う方が少なくありません。症状も変わっていくなかで、どのようなケアが必要になるのか、悩んでしまうでしょう。
本記事では、がん末期にみられる症状の段階的な変化と、痛みや不安を和らげるケアの種類を詳しく解説します。また、自宅・ホスピス型住宅・緩和ケア病棟の特徴や選び方、移行のタイミングも具体的に解説するので、ぜひ参考にしてみてください。
主治医の先生から診断を受けたら、主治医やケアマネジャー、家族とともに今後のケアの方法について選択していきます。
がん末期と診断されたときの選択肢には、主に以下のようなものがあります。
積極的な治療の継続
緩和ケアそのものはがん治療を受けながらでも継続して受けられます。がん末期と診断された後の選択肢はひとつではないため、専門家やご家族とよく話し合いを行いましょう。
なお、ホスピスケアや緩和ケアを受けられる場所については、後述する「ホスピスケアや緩和ケアが受けられる場所」をご確認ください。
がん末期と診断されても余命を迎えるまでの期間や症状には個人差があります。一般的には数ヶ月単位で症状が変化し、余命を迎えるまでの数週間から数日にかけてさらに細かく症状の変化が見られます。
急な変化がない訳ではありませんが、どのような症状が出る可能性があるのかを事前に把握しておくことで慌てずに済むでしょう。
がん末期について明確な定義はなく、医師によって診断が異なる場合もありますが、一般的に治療が困難で根治が見込めない状態とされています。
また、がん末期ではなく終末期と診断される場合もあります。終末期について詳しく知りたい方は、別記事「終末期とは?症状の特徴やケア内容、家族ができることについて解説」を参考にしてみてください。
がん末期と診断され、余命が数ヶ月程度と見込まれる期間に現れやすい症状や具体的な状態を、以下の表にまとめました。
| 症状 | 具体的な状態 |
| 疲労感やだるさ | ・疲れやすくなったり体力の低下を感じたりすることがある
・日常生活の範囲内の歩行や動作などでも疲れやすくなる |
| 食欲の減退 | ・食欲の減退や体重の減少がみられることがある
・水分をあまり摂らなくなる |
| 免疫力の低下 | ・風邪などの感染症にかかりやすくなる
・発熱など感染症による症状が頻繁にみられるようになる |
余命が少しずつ近づいてくると週単位でさらに症状の変化がみられるようになります。主に見られる症状や具体的な状態について、以下の表にまとめました。
| 症状 | 具体的な状態 |
| むくみ | ・足やお腹のあたりを中心に、むくみが現れる
・むくみによって身体を動かしづらくなったり、不快感を感じたりする |
| 患部の痛み | ・がんの進行具合によって、患部の痛みが強くなることがある
・状態によっては別の箇所に痛みが現れる場合もある |
| 呼吸のしづらさ | 呼吸困難の症状が現れる |
| 活動の変化 | ・座っていられなくなる
・だるさが強くなり、目に見えて辛そうになる |
| 食欲の変化 | ・食欲がさらに落ち、食事を楽しめなくなる
・固形物より流動食などを求めるようになる |
最期までの数日間は日々症状や状態が変化します。主に見られる症状や具体的な状態について、以下の表にまとめました。
| 症状 | 具体的な状態 |
| 呼吸が変化 | ・呼吸が不規則になり、無呼吸になる時間が発生する
・チェーンストークス呼吸*という状態になる場合もある |
| 意識がさらに変化 | ・ほとんどの時間を寝て過ごすようになる
・起きている間は反応が鈍る ・傾眠傾向がみられるようになる |
| 摂食・摂水が困難に | ・飲み込む力が弱まり、食事や水分補給が難しくなる |
| 体温の変化 | ・手や足など末端が冷えるようになる
・発熱症状がみられるようになる |
| 尿量の変化 | ・水分の摂取量の低下に伴い尿量が減る
・尿がでなくなる |
| その他の変化 | ・脈拍が弱くなる
・冷や汗が出る |
*チェーンストークス呼吸とは、呼吸が不規則になり、増大と減少を繰り返す状態のことです。「無呼吸→浅い呼吸→深い呼吸→浅い呼吸→無呼吸」のサイクルで、呼吸が行われるようになります。
がん末期と診断された方は、ホスピスケアやターミナルケア、緩和ケアと呼ばれるケアを受けられます。これらのケアは主に以下のように分けられます。
なお、ホスピスやターミナルケア、緩和ケアについて詳しく知りたい方は、それぞれ別記事「ホスピスとは?施設の特徴や病院との違い・対象者や費用について解説」、「ターミナルケア(終末期医療)とは?人生の最期を穏やかに過ごすためのケア」「緩和ケアとは?ホスピスケアとの違いやケアの受け方についてわかりやすく解説」をご覧ください。
がん末期の方が受ける主な身体的ケアと精神的ケアについて、以下の表にまとめました。
| ケアの種類 | ケアの内容 |
| 身体的ケア | ・たんや唾液の吸引
・痛みのコントロール ・呼吸困難時の酸素吸入 ・食事や入浴、排泄などの介助 ・点滴・胃ろう・腸ろうの管理 ・苦痛症状を緩和するマッサージ など |
| 精神的ケア | ・看護師や介護士、臨床心理士との日常的なコミュニケーション
・家族や友人との面会機会の増加 ・施設内での娯楽イベントへの参加 |
身体的ケアは主に医療ケアと介護が中心となります。医師・看護師・介護福祉士などが中心となって行いますが、介護や精神的ケアはご家族も参加することができます。
スピリチュアルケアとは、がん末期の方の人生における価値や信念に関わるケアのことです。スピリチュアルケアとして行われる内容には、主に以下があげられます。
スピリチュアルケアの目的は、患者さま自身が「大切に想ってもらえている」と感じられることであり、霊的・宗教的な意味合いだけを指すものではありません。ご本人の気持ちを和らげるために、日々のコミュニケーションや信頼関係の構築が重要視されます。
社会的ケアは、患者さまやそのご家族が抱える経済的な悩みを解消するために行われるサポートです。主なケアの内容には、以下があげられます。
これらのケアを受けるには、ソーシャルワーカーなど専門家のサポートが必要不可欠です。そして、医師の診療や介護サービスには、医療保険や介護保険などが適用できます。ホスピス型住宅や緩和ケア病棟に入る場合も同様に保険が活用できるため、事前に把握しておくと安心です。
なお、ホスピスで使える社会保険について詳しく知りたい方は、別記事「ホスピスの利用に介護保険や医療保険は使える?利用条件や注意点について解説」をご覧ください。
医療ケアや介護などのホスピスケア、緩和ケアを受けられる場所は、主に以下のとおりです。
ホスピスケアや緩和ケアは、自宅にいながらでも受けられます。自宅で受けられる主なサービスとしてあげられるのは、以下のとおりです。
これらのサービスを活用することで、住み慣れた自宅で過ごしながら医師や看護師、介護士からのサポートやケアを受けられます。
ご本人やそのご家族がより多くの時間を共有できることも、自宅でホスピスケアを受けるメリットと言えます。
ただし、自宅でホスピスケアを行うには、専用のベッドや入浴設備など、自宅で介護を行える環境整備やご家族による介護参加も必要になります。そのため、経済的な負担だけでなく介護負担が大きくなる可能性があることも考慮しなければなりません。
なお、自宅で受けられるホスピスケア・緩和ケアについて詳しく知りたい方は、別記事「自宅で緩和ケアを受けられる「在宅緩和ケア」とは?メリットや費用、家族のサポートについて解説」をあわせてご覧ください。
ホスピス型住宅とは、主にがん末期や神経難病を患っている方を対象に、ホスピスケアを提供している介護施設のことです。ホスピス型住宅として運営されている施設があれば、有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅(サ高住)などでホスピスケアを提供しているケースもあります。
また、サービス内容は施設によって異なるため、必要なサービスが提供されているか、安心して過ごせる場所かなどを見極めましょう。ホスピス型住宅で提供されている主なサービスは、以下のとおりです。
ホスピス型住宅では、看護師が常駐していることにより、24時間いつでも専門的なケアを自宅のような環境で受けられることがメリットといえます。施設によっては入居条件が厳しかったりケアの専門性に限界があったりするため、事前の見学は不可欠です。
緩和ケア病棟とは、緩和ケアに特化した病院や病院の一部に設置されている緩和ケアを専門とした病棟を指します。入院期間が制限されていることが特徴で、平均的な滞在期間は2週間〜1ヶ月です。
緩和ケア病棟で提供されている主なケアには、以下があげられます。
緩和ケア病棟は、滞在期間こそ制限されていますが、専門的なケアを充実した環境で受けられるのが大きなメリットです。また、個室が用意されているケースが多いのも、特徴といえます。
なお、緩和ケア病棟について詳しく知りたい方は、別記事「緩和ケア病棟とは?入院費用や期間、ホスピスとの違いなどについて解説」をご覧ください。
がん末期の方がホスピスケアを受ける場所を決めるには、いくつかのポイントがあります。以下の表にチェックするべき内容をまとめたので、ぜひ確認してみてください。
| ポイント | 詳細 | おすすめの場所 |
| 受けられるケア | がん末期の方が満足できるケアを受けられるかどうか | ・ホスピス型住宅
・緩和ケア病棟 |
| 医療体制 | 看護師が常駐しているか
医師や医療機関との連携体制があるまたは医師が常駐しているか |
・緩和ケア病棟
・ホスピス型住宅 |
| 設備の充実度 | 介護が必要でもストレスなく過ごしやすい環境かどうか | ・ホスピス型住宅 |
| 費用 | 経済的な負担を感じることなく利用できるかどうか
(社会保険でカバーできる範囲や自己負担割合など) |
・自宅 |
| 家族の時間 | 家族の面会が柔軟にできるか(宿泊が可能かどうかもチェック) | ・自宅
・ホスピス型住宅 |
| 入院(入居)期間 | 満足いく期間滞在できるか | ・自宅
・ホスピス型住宅 |
| 生活の自由度 | 時間を自分の希望どおりに使えるか(外出の可否も重要なポイント) | ・自宅
・ホスピス型住宅 |
上記のポイントのなかで優先順位をつけておくと、よりケアを受ける場所を選びやすくなります。なお、ホスピスと緩和ケア病棟の違いを知っておきたい方は、別記事「ホスピスと緩和ケア病棟の違いとは?それぞれの特徴を解説」をご覧ください。
ホスピスケアに移行するタイミングは明確に定められてはいません。一般的には以下のようなタイミングが目安とされています。
ホスピスへの入院・入所は、ご本人とご家族にとって非常に重要な決断です。入るタイミングは、患者さまの状態や希望を考慮しながら、医療チームとよく相談して決めましょう。
また、ホスピスは入院・入居する際に条件があります。詳細は「ホスピスの入院・入居条件」の記事で詳しく解説していますのでご覧ください。
ホスピス型住宅や緩和ケア病棟の探し方には、大きく分けて以下5つの方法があります。
かかりつけの医療機関の医師や相談窓口で、ご本人やご家族の状況に合ったホスピスを紹介してもらえます。ただし、自宅の近くにホスピスを受けられる施設があるとは限らないため、早めにかかりつけの医療機関とホスピスの連携を確認しておくのも重要です。
Googleなどのインターネット検索を活用して近隣のホスピスを探すのもおすすめです。
インターネットを利用すれば、近隣のホスピス型住宅や緩和ケア病棟をまとめて検索できるだけでなく、各施設のウェブサイトや紹介サイトで、施設の特色や提供しているケアの内容まで詳しく確認できます。
これらの情報を基にかかりつけ医やケアマネジャーなどに相談すると、施設探しがよりスムーズに進む可能性もあるため、ぜひ活用しましょう。
がん診療連携拠点病院には、がん相談支援センターが設置されています。がん相談支援センターは、受診歴がなくても相談が可能です。
専門スタッフがご家庭の状況に合わせたホスピスを提案してくれるため、相性のよい施設を選べるでしょう。がん相談支援センターの場所は、各都道府県のホームページで確認できます。
日本ホスピス・緩和ケア協会では、厚生労働省から承認された病院やクリニックの情報を公開しています。インターネットから手軽に調べられるため、まずは自分で探してみたいという方はぜひ利用してみてください。
がん相談ホットラインとは、日本対がん協会が運営する、電話相談ができる窓口です。いずれもホスピスの場所だけでなく、ご本人やご家族の希望にそった病院や施設を紹介してくれます。誰でも無料で相談できるため、積極的に活用しましょう。
ホスピス型住宅は、がん末期の患者さまが安心かつ快適に過ごせる場所としておすすめです。
24時間体制で医療や介護の専門家によるケアが受けられるホスピス型住宅は、同じく医療ケアが充実している緩和ケア病棟とは異なり入居期間の制限もありません。
自宅でのケアと比較して、ご家族の介護負担の軽減が期待できる一方で面会の自由度が高い施設が多いため、大切な時間を穏やかに過ごせるでしょう。
ただし、施設によっては費用が高額になる可能性があり、全ての施設で面会時間が自由なわけではありません。そのため、ご家族との十分な話し合いはもちろん、希望にあった施設を選ぶことも重要です。
がん末期と診断されたら、ご本人の希望とご家族の意向を十分に話し合い、どのように最期までの時間を過ごすのかを決めることが大切です。
ホスピスや病院などの情報は、施設のウェブサイトや紹介サイトを確認して、どのようなケアを受けられるのか、どのような過ごし方になるのかなどの情報を集めておくことをお勧めします。
ReHOPEでの過ごし方は「ホスピス型住宅の生活は?入居後の暮らしを写真でご紹介」をご確認ください。
がん末期の患者さまにホスピス型住宅がおすすめなのは、医療や介護の専門家によるサポートを24時間いつでも受けられ、痛みや不安を和らげられるためです。家族の介護負担が軽減され、自分らしい穏やかな時間を過ごせます。詳しくは、記事内「がん末期(末期癌)の患者さまにはホスピス型住宅がおすすめ」をご参照ください。
ホスピスに入るタイミングには、明確な基準はありません。治療が困難でがんの苦痛を和らげる必要がある時期が、一般的なタイミングの目安になります。詳しくは記事内の「がん末期(末期癌)の患者さまがホスピスケアに移行するタイミング」をご参照ください。
がん末期の患者さまに必要なケアには、「身体的・精神的ケア」「スピリチュアルケア」「社会的ケア」があげられます。がんによる苦痛だけではなく全人的なケアが必要です。詳しくは、記事内「がん末期(末期癌)の方が必要なケア」をご参照ください。